九条 モモ

赤が好きな詩人。 そんなにいつまでも ひろがってゆくイマージュがある。 ー 「愛」谷…

九条 モモ

赤が好きな詩人。 そんなにいつまでも ひろがってゆくイマージュがある。 ー 「愛」谷川俊太郎

記事一覧

ディア・ファミリー【鑑賞記録8】

なにかを成すとは、どういうことだろう。

九条 モモ
13日前

秘密

それはメロン味の飴が溶けていくようで まるでメロン味の飴が溶けていくようで あなたとわたしの「距離」も溶けていったから この氷が溶けていく速さも 昨日降った静かな…

九条 モモ
1か月前
1

潜在意識

花束、茶髪に散って、枯れた空、青天に パズルし薔薇に、空気壊れ ケーキでキスして、共に甘やかに ほつれ糸の緑、祝祭に映える 一方で、 曇天の黄昏から舞い降りた鳩 薄…

九条 モモ
1か月前

きらり

What a spectacular. 四ツ葉にブラックホール 裂けて、咲いたダリアの花 が、ガガガガガッと割れて、 モーゼの海 に、そそり立つ三島が燃やした金閣寺 さんごじゅうごで …

九条 モモ
2か月前

最後の恋

東京タワーを見上げていた。 酸いも甘いも何度も噛んで、 あなたと出逢った。 「あなたは、初恋の人に似ていただけ」 突き放すわたしを、 「恋は、落ちたそのときが、い…

九条 モモ
2か月前

理由

「雪が好きだ」とあなたが言って、 名前を呼ばれたような気持ちになった。 「どうしたの?  あんまり唐突に言うから、  わたしの名前を呼んだのかと思った」 と笑ったら…

九条 モモ
4か月前

哀れなるものたち【鑑賞記録7】

ベラ・バクスター「poor things. lol 」 エンドロールの最後に、 彼女は、そうジョークを言って、笑った。

九条 モモ
4か月前
3

ウォンカとチョコレート工場のはじまり【鑑賞記録6】

夢を見ることは、時に、 人生を残酷に映すこともあるだろう。 それでも、君は、夢を見る。 なぜだろう。 夢は、最後のその時も、 きっと、夢見る君のそばにいる。 さあ…

九条 モモ
6か月前
4

気持ち

背伸びして、あなたのロングコートの 1番上のボタンをとめる 唇を躱すより あなたを傷つける方法を知りたくて 合いそうになる目をそらす あなたを送り出した後 リビング…

九条 モモ
7か月前

冗談

「海だなぁと思って」 港町のテラスで、 君は当たり前のことを言ってみせる 晴れた日には、いつもわざと、 クラウディー・アップルを頼んでみせる 優しく海が薫る店内に…

九条 モモ
8か月前

窓ガラス【エッセイ1】

包摂性とは、外れることを、語れるようになること、だと思う。その先に、お互いを外れていると思わないようになること、それが多様性なのではないだろうか。 外れているこ…

九条 モモ
8か月前
3

かなしみ

悲しかった恋が、 東京タワーの優しい灯りに消えてゆく 「あと何度、  愛してると、  伝えればいいだろう」 と哀しむわたしに、 「変えられるものが、  運命だとは、…

九条 モモ
8か月前
1

喫茶店で交換したコーヒーカップ 23年、持ってたの もうあの頃のように 誰かを傷つけることはできなくなったし 100円にこだわっていた君を もう、「君」と呼べる年でもない…

九条 モモ
8か月前
1

渋谷交差点

池の水面が風にゆれて 薄暮に手招かれ 10月7日の名もなき渋谷の 小さなこの公園だけに 恋人達の秋がやって来る 子どもとすれ違えば わたしの心のどこかが痛み 最初から…

九条 モモ
9か月前
1

こんにちは、母さん【鑑賞記録5】

「君と僕は、違う」 と、立場や世代に社会的に捉われて、 自分と相手との間に線を引く主人公に、 「人は悩んで、恋をするものよ」 と、教える朗らかな母さんは、 どこまで…

九条 モモ
9か月前

この宇宙の秘密

ー Universe, Universe ー それは、この宇宙の秘密。 この宇宙で、 1つの星が死ぬとき、 星は、一篇の詩を歌う。 ー Universe, Universe ー それは、この宇宙が運命…

九条 モモ
10か月前
1
秘密

秘密

それはメロン味の飴が溶けていくようで
まるでメロン味の飴が溶けていくようで

あなたとわたしの「距離」も溶けていったから

この氷が溶けていく速さも
昨日降った静かな雨も
これから
「ふたりだけの公理」を築いていくことも

それはメロン味の飴が溶けていくように

あなたとわたしの「距離」を溶かしていく

薔薇の花束を贈った翌日のお返しには、一輪のハイビスカスを
あなたが折り紙を折ってくれた日は、必

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潜在意識

花束、茶髪に散って、枯れた空、青天に
パズルし薔薇に、空気壊れ
ケーキでキスして、共に甘やかに
ほつれ糸の緑、祝祭に映える

一方で、

曇天の黄昏から舞い降りた鳩
薄紫の綿毛をつけたタンポポは
窓格子に張付き
それはまるで、ホコリ

あなたを禁止された
駐車場で
徐行する
高圧ガスと書かれたトラックの
運転手に
あなたをさらわれる
わたし
思いがした

昨晩
自販機の上を走るパイプ管が
人知れず

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きらり

What a spectacular.

四ツ葉にブラックホール
裂けて、咲いたダリアの花
が、ガガガガガッと割れて、
モーゼの海
に、そそり立つ三島が燃やした金閣寺

さんごじゅうごで
モナリザとにらめっこしましょ
笑ったら、ダメよ

あっち向いて、来い

奇異な旅人よ、サルーテ!

紅いシャクナゲ揺れ
硝子窓に、サイレン赤く鳴り
蒼いヒマワリ咲き
硝子窓に、体液青く飛ぶ

月の火山が爆発した日

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最後の恋

最後の恋

東京タワーを見上げていた。

酸いも甘いも何度も噛んで、
あなたと出逢った。

「あなたは、初恋の人に似ていただけ」
突き放すわたしを、
「恋は、落ちたそのときが、いつも初恋」
と、あなたは追いかけてきた。

病院の待合室で、テレビが教えてくれた、
ありふれた恋の理論。

「こんな理論さえ当てはまらないわたしたちに、」
「明るい未来が待っているとは、思えない?」
と、あなたは笑ってくれた。

「未

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理由

理由

「雪が好きだ」とあなたが言って、
名前を呼ばれたような気持ちになった。

「どうしたの?
 あんまり唐突に言うから、
 わたしの名前を呼んだのかと思った」
と笑ったら、
背中越しのあなたの気配が一歩近づいた。

なのに、「ん?」としか返事をしなかったから、少しむっとして振り返ると、
あなたは、オルゴール店内の背の高いクリスマスツリーを見上げていた。

「夏のほうが好きだったんだ」と言ったあなたは、

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哀れなるものたち【鑑賞記録7】

哀れなるものたち【鑑賞記録7】

ベラ・バクスター「poor things. lol 」

エンドロールの最後に、

彼女は、そうジョークを言って、笑った。

ウォンカとチョコレート工場のはじまり【鑑賞記録6】

ウォンカとチョコレート工場のはじまり【鑑賞記録6】

夢を見ることは、時に、
人生を残酷に映すこともあるだろう。

それでも、君は、夢を見る。

なぜだろう。

夢は、最後のその時も、
きっと、夢見る君のそばにいる。

さあ、醒めない夢を見よう。

夢は、君の人生を、
チョコレートのように甘くする。

気持ち

背伸びして、あなたのロングコートの
1番上のボタンをとめる

唇を躱すより
あなたを傷つける方法を知りたくて
合いそうになる目をそらす

あなたを送り出した後
リビングに戻ると
カーテンが風に揺れていることが
いつも、気になる

あなたはこの部屋にいない、と
風に教えられているような気持ちに
なるんだろう

あなたがくれる沢山の幸せや愛よりも
たった一言が許せない、わたし

クリスマスの光に彩られ

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冗談

「海だなぁと思って」

港町のテラスで、
君は当たり前のことを言ってみせる

晴れた日には、いつもわざと、
クラウディー・アップルを頼んでみせる

優しく海が薫る店内に夕陽が差込み始める頃、
グラスにジュースを少し残し、
君が言い始める冗談に、
わたしは渾身の防衛戦

「アップル・ジュースが、
 夕陽より紅くなればね」

なんて、言ってみせた

「雪は、冬の花だよね」

と当たり前のことを言ってし

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窓ガラス【エッセイ1】

包摂性とは、外れることを、語れるようになること、だと思う。その先に、お互いを外れていると思わないようになること、それが多様性なのではないだろうか。

外れていることと、窓ガラスを割ることは、違う。しかし、この国では、外れていることと、窓ガラスを割ることが、まだまだ同義で語られてしまい、取り締まりと気づかずに取り締まりに近いことが行われている。

外れていることを、個性と、なぜ捉えられないのか。まだ

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かなしみ

悲しかった恋が、
東京タワーの優しい灯りに消えてゆく

「あと何度、
 愛してると、
 伝えればいいだろう」

と哀しむわたしに、

「変えられるものが、
 運命だとは、思わない」

と哀れを溶かしてくれたあなた

「忘れていいんだ」

と言うあなたに、

「忘れていいのかな」

しか、わたしは返事することできなかったのに、

あなたは、

「嘘でいいんだよ、好き、なんて」

とは決して言わなかっ

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喫茶店で交換したコーヒーカップ
23年、持ってたの
もうあの頃のように
誰かを傷つけることはできなくなったし
100円にこだわっていた君を
もう、「君」と呼べる年でもない

20年前に気づくべきだった
電車での会話が相性のすべてだってこと
「君」は、走り去る電車の中から
手を振ることしかしてくれなかったのに
そんなが「君」が、ただ、好きだった

増えていくお土産の写真
3日に1回になったSNS

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渋谷交差点

池の水面が風にゆれて
薄暮に手招かれ
10月7日の名もなき渋谷の
小さなこの公園だけに
恋人達の秋がやって来る

子どもとすれ違えば
わたしの心のどこかが痛み
最初から踵が磨り減った
深紅のハイヒールを
渋谷のデパートに探しに行く

老夫人とすれ違っても
わたしの心のどこかは痛み
最初から踵が磨り減った
深紅のハイヒールを
渋谷の同じデパートに探しに行く

手慣れたフォンコール
お手のもののアンコ

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こんにちは、母さん【鑑賞記録5】

こんにちは、母さん【鑑賞記録5】

「君と僕は、違う」
と、立場や世代に社会的に捉われて、
自分と相手との間に線を引く主人公に、

「人は悩んで、恋をするものよ」
と、教える朗らかな母さんは、
どこまでも粋に生きている。

母さんに導かれて、
主人公が辿り着く答えに、
わたしたちも気づかされる。

「人は、そんなに変わらない」と。

この宇宙の秘密

ー Universe, Universe ー

それは、この宇宙の秘密。

この宇宙で、
1つの星が死ぬとき、
星は、一篇の詩を歌う。

ー Universe, Universe ー

それは、この宇宙が運命(さだ)めた秘密。

この宇宙は、数多の詩を編む、
大きな大きな、1冊の詩集。

ほら、今日もまた、星が死ぬ。
そして、最後に、星は歌う。

あの星は、生きた。
一篇の詩を歌うため。

この

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