仄映ゆら

ほのえ ゆら です。 短編小説とか、短歌を書いたり詠んだり。猫と鳥が好き。

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ほのえ ゆら です。 短編小説とか、短歌を書いたり詠んだり。猫と鳥が好き。

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記事一覧

とまとあたま

 トマトを噛んだ。わたしの頭は破裂した。  痛いなんてことはないのよ。大丈夫。大丈夫。むしろ爽快。  だって、これで、終わりだもの。これ以上、つらいことなんて、な…

仄映ゆら
2か月前
3

【短編小説】「床の間の女」

 彼女は私を見ていないが、私を愛している。  私は彼女が視えていても、愛に触れられない。  燃える茶室の中で、私は彼女に身をまかせ、常夏の夜咄に耽った。  雨のし…

仄映ゆら
2か月前
5

【超短編小説】「表と裏」

 なになになに、知ってますよ、わかってる、出てこないで。  と、裏の自分に言ってる、夜。  今日、国語の授業でなんで手を挙げちゃったんだろう。とか、ルミちゃんと…

仄映ゆら
2か月前
7

【超短編小説】「春のあけぼの」

 花の匂い。メルヘンな空。はじめましての仲間たち。春って、わくわくする。 なんていう人とは仲良くできない。  春は、憂鬱。なにが、なんて考えるのにも、胸がつっか…

仄映ゆら
2か月前
5

【短歌】玉結び

玉結びもろくにできないぶきっちょも 愛嬌あれば許してもらえる 庭のしだれ梅のつぼみが、何回も何回も玉結び失敗したみたいな糸に見えて。 梅みたいに可愛けりゃなぁ…と…

仄映ゆら
2か月前
5

【超短編小説】「ひとりぼっちのナイトショー」

 バスルームから見えるパチンコ屋はキレイ。磨りガラス越しに見える、黄色、青、白のライトは、水中から見る花火みたいにボンヤリと、眩しい。  あ……赤も交じった。さ…

仄映ゆら
2か月前
2

【超短編小説】「へえへえわかってます」

 当たり前、ってなに。世間的に、常識的に、ってなに。その枠から外れている人を爪弾きにするくせに、それに従っている人もまた、平凡でつまらないと、非難する、その世間…

仄映ゆら
2か月前
4

【超短編小説】「夜はまだ酔いながら」

 お酒を呑んだ帰り道。ざらついていた心が、今はのほほんと潤って、ブランコ漕いでる。 けれど、家が近づいてくると、一歩、また一歩、歩くたびアルコールが、肌の表面か…

仄映ゆら
2か月前
3

【超短編小説】「ジャスミンの抱擁」

 互いの口から洩れ出る、ジャスミンティーの優美な香り。旅先のホテルで感じた、あなたの温もり。友だちのままでいるための抱擁は、ふわりと軽い、眠気をさそう。  あの…

仄映ゆら
2か月前
5

【短歌】春の夕

気分が優れないでいると、母が公園に誘ってくれました。

仄映ゆら
2か月前
5

【超短編小説】「嬉しい、悲しい」

 さっきまで、ずんと悲しかったのに、なんだか今は、ぽかぽか心が温かい。なぜかしら? 考えてみても、わからない。心って、単純。  覚えていられないほど、ささやかな…

仄映ゆら
2か月前
4

【短歌】タルトタタン

12月、京都岡崎にタルトタタンを食べに行ったときの歌。 タルトタタン、って言葉の響きが好き。口に出してみると、なんだか、懐かしい気持ちになる。押し入れの隅から宝…

仄映ゆら
2か月前
4

【超短編小説】「今日はゴミの日」

 ふわふわと寝ぼけ眼で外に出る。冬の朝はまだ暗い。庭の片隅に、一匹の黒猫が座っていた。縮こまってて寒そう。猫を驚かさないように、そっと近寄って、手を伸ばす。「ひ…

仄映ゆら
2か月前
5
とまとあたま

とまとあたま

 トマトを噛んだ。わたしの頭は破裂した。
 痛いなんてことはないのよ。大丈夫。大丈夫。むしろ爽快。
 だって、これで、終わりだもの。これ以上、つらいことなんて、ないんだもの。

【短編小説】「床の間の女」

【短編小説】「床の間の女」

 彼女は私を見ていないが、私を愛している。
 私は彼女が視えていても、愛に触れられない。
 燃える茶室の中で、私は彼女に身をまかせ、常夏の夜咄に耽った。

 雨のしとどに降る庭に、小走りで駆け込む。お天道様が汗ばんでいるような居心地の悪い空気である。青々と苔むした地面。飛び石の傍で、しきりに揺れるシダや熊笹の露を弾きながら、漸く玄関にたどり着く。
「すみません、遅くなりました」
 網戸を開け、声を

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【超短編小説】「表と裏」

【超短編小説】「表と裏」

 なになになに、知ってますよ、わかってる、出てこないで。
 と、裏の自分に言ってる、夜。

 今日、国語の授業でなんで手を挙げちゃったんだろう。とか、ルミちゃんと別れたとき、「バイバイ」のトーン低かったかな。とかいう考えが、キノコの倍速成長のように、むくむくと、湧き上がってくる。

 そういう、裏の自分を、どれだけ罵倒しても、絶対、倒れないのが不思議だ。

 そんな強いメンタルあるなら表に出てこい

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【超短編小説】「春のあけぼの」

【超短編小説】「春のあけぼの」

 花の匂い。メルヘンな空。はじめましての仲間たち。春って、わくわくする。
なんていう人とは仲良くできない。

 春は、憂鬱。なにが、なんて考えるのにも、胸がつっかえて、吐き気がする。春なんて、春なんて。ほら、なんにもでてこない。

 春はあけぼの。なんていった人とはとうてい気が合わないだろうけれど、まあでも、春はあけぼの、とするなら、あけぼのだったら、こんな気持ちになっていても、誰にも咎められな

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【短歌】玉結び

【短歌】玉結び

玉結びもろくにできないぶきっちょも
愛嬌あれば許してもらえる

庭のしだれ梅のつぼみが、何回も何回も玉結び失敗したみたいな糸に見えて。
梅みたいに可愛けりゃなぁ…と。

【超短編小説】「ひとりぼっちのナイトショー」

【超短編小説】「ひとりぼっちのナイトショー」

 バスルームから見えるパチンコ屋はキレイ。磨りガラス越しに見える、黄色、青、白のライトは、水中から見る花火みたいにボンヤリと、眩しい。
 あ……赤も交じった。さあて。

 片手にシャワーヘッドをもって、泡の数だけリズムを刻む。ワンツースリー。

 私は歌う。午前0時。ひとりぼっちのナイトショー。

【超短編小説】「へえへえわかってます」

【超短編小説】「へえへえわかってます」

 当たり前、ってなに。世間的に、常識的に、ってなに。その枠から外れている人を爪弾きにするくせに、それに従っている人もまた、平凡でつまらないと、非難する、その世間って、なに。
 わかってますよ。こんなこと、考えない人が、素敵な人間様だってことくらい。私だって、わかってます。
 わかってるからこそまた、悩むんです。

【超短編小説】「夜はまだ酔いながら」

【超短編小説】「夜はまだ酔いながら」

 お酒を呑んだ帰り道。ざらついていた心が、今はのほほんと潤って、ブランコ漕いでる。
けれど、家が近づいてくると、一歩、また一歩、歩くたびアルコールが、肌の表面から泡になって、空気の中へ抜けていく。重いカタマリになって、背中にのしかかる。
ああいやだ、覚めてしまう。
まだ、夜なのに……。

【超短編小説】「ジャスミンの抱擁」

【超短編小説】「ジャスミンの抱擁」

 互いの口から洩れ出る、ジャスミンティーの優美な香り。旅先のホテルで感じた、あなたの温もり。友だちのままでいるための抱擁は、ふわりと軽い、眠気をさそう。
 あの時、終わりにするはずだった。はずなのに、今また、ジャスミンティーを飲みながら、あなたのことを想ってる。

【超短編小説】「嬉しい、悲しい」

【超短編小説】「嬉しい、悲しい」

 さっきまで、ずんと悲しかったのに、なんだか今は、ぽかぽか心が温かい。なぜかしら? 考えてみても、わからない。心って、単純。
 覚えていられないほど、ささやかなことで、落ち込んだり、嬉しくなったり、するんだから。繊細なのか、ぼんやりしてるのか、わからない。

【短歌】タルトタタン

【短歌】タルトタタン

12月、京都岡崎にタルトタタンを食べに行ったときの歌。

タルトタタン、って言葉の響きが好き。口に出してみると、なんだか、懐かしい気持ちになる。押し入れの隅から宝箱の缶を見つけると、昔好きだった絵本とか玩具が詰まってて、胸がキュッと温かくなる、感じ。

食べてもそう。煮詰まった林檎の甘みを噛み締めるたびに、じわじわ懐かしさが込み上げてくる。

淡い冬の光がなおさら、そんな気持ちにさせたのかもしれな

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【超短編小説】「今日はゴミの日」

【超短編小説】「今日はゴミの日」

 ふわふわと寝ぼけ眼で外に出る。冬の朝はまだ暗い。庭の片隅に、一匹の黒猫が座っていた。縮こまってて寒そう。猫を驚かさないように、そっと近寄って、手を伸ばす。「ひやっ」と、それはつるりと冷たくて、プンと、生ごみの匂いがした。

黒いゴミ袋と猫はよく間違える……。話しかけてアッと気づいた瞬間の虚しさよ。