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【超短編小説】「春のあけぼの」

 花の匂い。メルヘンな空。はじめましての仲間たち。春って、わくわくする。
なんていう人とは仲良くできない。

 春は、憂鬱。なにが、なんて考えるのにも、胸がつっかえて、吐き気がする。春なんて、春なんて。ほら、なんにもでてこない。

 春はあけぼの。なんていった人とはとうてい気が合わないだろうけれど、まあでも、春はあけぼの、とするなら、あけぼのだったら、こんな気持ちになっていても、誰にも咎められないからいいよね、と思う。だんだん意識がはっきりしてくるにつれて、だあるくなるから、まだ夜明け前の、暗い、あけぼのが、春にはちょうどいい。

 今もね、こんなことを考えながら、細い息をして、なんどもなんども眠り直してるの。
  春の、あけぼの。


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