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フランス語(等の)方へ

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主にフランス語・フランス語学に関連する記事を放り込んでいます。
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#勉強

deuxièmeとsecond【フランス語の方へ:1】

小手先の記事もちょっと書いてみよう、という試みです。


フランス語には、「2つ目の」と訳しうる形容詞がふたつあります。deuxièmeとsecondです。前者は基数詞deuxに序数詞化標識-ièmeをつけたものです。後者はラテン語secundusに由来します(なおsecundus自体は、sequi「付き従う(suivre)」という意のラテン語の動詞と、根のところでは繋がっているようです。Oxf

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【541】固有名詞やアナグラムの「翻訳」は無理だが豊か

【541】固有名詞やアナグラムの「翻訳」は無理だが豊か

『ハリー・ポッター』シリーズ、読まれたことのある方も多いかと思います。私もメインの7巻は全て読みました。小学生の頃は日本語で、その後は度々英語で、更に後にはフランス語やドイツ語や、変わり種ではラテン語や古典ギリシャ語で色々読んだものです。

日本語から英語に行くときには言語的レヴェルを除けばさほど苦労しなかったのですが、仏語やイタリア語に飛ぶといろいろと問題が生じます。


日本語と英語だけで読

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【531】フランス語中級者のためのモンテーニュとたまねぎ

【531】フランス語中級者のためのモンテーニュとたまねぎ

ミシェル・ド・モンテーニュの名を聞いたことがある人は少なくないと思います。世界史の教科書にすら出てくるビッグネームですし、彼の『随想録(Essais)』は、実際に読むと骨が折れるとは言っても、枕元において少しずつ読むと豊かになるタイプのテクストです。  

(なお、フランス語初修の段階でモンテーニュを読もうと思うと爆死します。フランスの学生すら現代フランス語訳を要するテクストですし、そのハードルを

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【295】単発の理論や知識ではなく、全体性を見せてください

【295】単発の理論や知識ではなく、全体性を見せてください

Twitterで私のアンテナに引っかかるのは友人伝いで見られる学習系のアカウントです(というより、殆ど見ないからそうしたアカウントしか目に入らないという成り行きです)。

驚くべきことでもないのかもしれませんが、やはり半角280字という制限の中では、役立つことになっている単語やその意味を示しておしまい、ということになりがちです。それはそれできわめて意義のあることですし、それ以上を求める必要もないの

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【286】ドラクエIIIのシーシュポス:マイルドな不条理から伝説へ

【286】ドラクエIIIのシーシュポス:マイルドな不条理から伝説へ

ドラゴンクエストIIIのスーパーファミコン版以降のヴァージョンには、キャラごとに割り当てられる「性格」というパラメータがあります。「性格」は能力の伸び方に大きな影響をあたえる重要なパラメータです。

後で「本」を読ませたり特定の品物を装備させたりすることで、その性格を変えることができるとはいえ、特に勇者であるところの主人公については、ゲーム本編に入る前の最初の性格診断で性格が決められます。その診断

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【273】フランスのペンギンに学ぶ、辞書や専門領域の内的循環を脱する方策

【273】フランスのペンギンに学ぶ、辞書や専門領域の内的循環を脱する方策

皆さんはペンギンがお好きですか。私は好きです。日がな一日眺めていても飽きません。

ペンギンは英語でpenguinですが、フランス語だとmanchot(カタカナに無理に直すなら「マンショ」)です。なんだかへんな音ですよね。

今回はここから。

※この記事は、フランス在住、西洋思想史専攻の大学院生が毎日書く、地味で堅実な、それゆえ波及効果の高い、あらゆる知的分野の実践に活かせる内容をまとめたものの

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【272】芋虫、猫、シリウス、酷暑:言語が描く星座を読む

【272】芋虫、猫、シリウス、酷暑:言語が描く星座を読む

太古の人類が星々の配置に動物や神々の姿を読み取ってきたように、原初的な「読む」作業というものは、意味のないところに意味を見出すことであり、世界に意味を与えることであり、書かれていないものを読むことでした。

そうした読みの痕跡を、タイトルに示した言葉の周辺において見てみたいと思います。


いくつかのはじめ方があるのですが、差し当たり多くの人が理解しやすい英語の例から入ってみましょう。

皆さん

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【239】「火の取り分」を決めることで、燃やしてはならぬものが見えてくる

【239】「火の取り分」を決めることで、燃やしてはならぬものが見えてくる

簡単には消し止められない火事があると、私たちは消防車が水を撒くことに期待するものだ、と言えるかもしれません。

とはいえそれは、もちろん歴史上ごく最近にできた期待であって、かつては必ずしもそうではありませんでした。

そんなことをとっかかりにして。

※この記事は、フランス在住、西洋思想史専攻の大学院生が毎日書く、地味で堅実な、それゆえ波及効果の高い、あらゆる知的分野の実践に活かせる内容をまとめた

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【238】型を無視する愚を説くフランスの作曲家の言葉

(今日は下のほうにフランス語演習がありますが、飛ばしていただいても問題ありません。)

「型破り」とか、「型無し」とか色々な言葉がありますが、私が「型」を重視しがちな人間であることを脇に置くとしても、どうやら「型」より実質が大切だという(それ自体は極めてまっとうな)考えが行き過ぎると、型など学ばなくても良い、というは発想に陥ることがあるようです。

とはいえもちろん、型は大事なのです。それがいずれ

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