「決められる人」と「決められない人」の差とは? 意思決定に必要な自分のモノサシ
「あの人の意思決定には迷いがないな」
仕事をしているとズバズバ物事を決めていく、いわゆる腕利きな人がいます。複雑な要素が複数絡み合うようなケースでも、いともたやすく決めます。そして、その判断に周囲も「なるほど」と納得してしまいます。
一方で決められない人もいます。色々口から言葉は出て来るのですが、要領を得ず「で、あなたはどうしたいの?」と問い直すことも。
この決められる人と、決められない人の差はいったい何なのでしょうか。
人生をなるべく悩まずに生きていくための工夫について考えます。
「決められる」と何が良いのか?
あなたは物事を「すぐに決められる方」、「なかなか決められない方」どちらのタイプでしょうか。
これはドキッとする質問ですね。私も「決められる方だ!」と即答したいところですが、周りを見渡すと自分より優れた決断力を持っている人はたくさんいます。
レストランや居酒屋などの飲食店に行っても、注文をスパッと決める人と優順普段な人がいますね。レストランのケースは些細なことなので、生活にそこまで影響しませんが、いざ「仕事の決断」となると、生活に大きく影響を与えます。
というのも、仕事の多くが「決められないことを決めるための準備」だからです。デスクワークや資料作りはその大半が「意思決定するための素材」ではないでしょうか。素早く正しい決断ができるようになれば、決断するために準備していたアレコレがすべていらなくなり、仕事の時間が大幅に短縮され、生産性は大きく向上します。早く決めるとは、つまり決断に至るプロセスを一気に圧縮するということです。
そして、決断力を身に着けるメリットは日々の仕事をスムーズにするだけではありません。決断力を磨けば、自分の価値観や意思決定のモノサシをよりはっきり認識できるようになります。このモノサシを手に入れられると、自分の価値観に合った人やモノを選択していけるということ。より充実した人生を送ることにもつながります。
日々の生産性を上げ、人生の生産性を上げる。そのためにも「決める力」は誰にとっても重要なスキルと言えます。
「決める人」になるための4つの工夫
決められない人、決められる人の違いをいくつか見てみましょう。
1.仕方のないことで悩まない
決められない人の傾向として、決めた先のことを考えて不安になってしまうというものがあります。
決められる人 :考えても仕方のないことは考えない
決められない人:仕方のないことを考えてしまう
決められない人の思考パターンに多いのが「〇〇が▢▢になったらどうしよう」という不安です。あれこれと悩んだ揚げ句に、その不安から、結局次の一歩が出ないというケースです。好きな人がいても、「告白してフラれたらどうしよう?」などと考え「告白する」という一歩が出ません。この「▢▢になったらどうしよう」というネガティブな感情は仕事でもよく見られます。
なぜこのように考えてしまうのか。その原因は「考えても仕方のないことを考えてしまっている」のが原因です。決められる人は、考えても仕方の無い事は考えず、すぐに行動できてしまいます。
先日、下記の記事を書きました。
この記事の中で「自分の内的なものであるか、そうではないか」そして「可変的か、そうではないか」の2軸で考えた時、人間の行動は4つの象限のどれかに当てはまる、というお話をしました。
つまり、自分ではどうしようもない領域のことがある、不変なこともある、ということを理解しておくことです。これらのことは「自分ではどうしようもないこと」=「考えても仕方の無い事」だったりします。
さらに決められる人の視点は前向きです。「うまくいかなかったらどうしよう」と考えるのではなく、「どうすれば、うまくいくか?」ということに集中します。「自分の内的なもの」でかつ「可変なもの」をどんどん行動に移し、状況を変えていきます。
2.マルチよりもシングル
決められない人の傾向に、「捨てられない」というものがあります。断捨離できない人の典型かと思います。
決められる人 :1つに集中する、他を捨てる
決められない人:あれこれ気になる、欲張る
「決める」ということは選択です。Aに決めるということはA以外は選ばない、という意味でもあります。どんどん意思決定できる人は、目の前のことに集中し、選ぶ=捨てる、という感覚を持っています。
たくさんの選択肢を持っておくことは、「選ぶ権利がある」ということであり、豊かさを感じがちですが、あまりに多い選択肢に埋もれてしまうと、判断しにくくなったり、判断を複雑にしがちです。
また、自分に能力があると思っている人は、能力があるからいろいろな仕事ができると思いがちですが、結果1つに絞りきれなかったりします。例えば、子供の頃に運動神経のいい人が、野球やバスケ、サッカーにテニスといろんなスポーツで人並み以上にできたとして、そのままあらゆるスポーツでプロになれる、なんてことはありません。「あれもこれも」では秀でることはできません。
逆に言えば、細い糸を何本も持っているのではなく、早く捨てて1本を太くすることが大切です。決める力がある人は、早く決めるのと同時に、「早く捨てている」のです。選んで、残ったものを太くする感覚が大切です。マルチよりもシングルの感覚を持ちましょう。
3.損得勘定よりも自分の直観
決められない人の傾向3つ目は「他人の目を意識しがち」です。色んな計算が先に立ってしまい、なかなか決めきれないという傾向にあります。
決められる人 :自分の軸で判断し、直感を大切にする
決められない人:人の目を気にして、損得で行動する
決められない理由の一つが、欲や執着、虚栄心など、他人と比較して自分はどうありたいのかといったことや、損得を考えてしまうというのがあります。また過去のデータにこだわったり、人の評判を気にしたりする傾向も強いです。
そして欲や執着が強いほど、一度決めた決断の先に思う結果にならなかった場合に「ああすれば良かった」と後悔も強くなります。
他人の目を気にして行動するということは、自分のコントロール外に決定のボタンを置くということです。なぜなら他人は自分でコントロールできないからです。そうではなく、自分軸で考えること、時には直観を頼り決めるのも良いです。他人にボタンを預けるのではなく、自分で決めて行動することでその先の後悔も減らすことができます。
素早く決められる人はあれこれ考えこまず、まず決めてすぐに行動します。そして一旦決めたことを信じて努力できる人です。そして状況が変われば、また決めて行動する。その判断の軸は常に自分の中にあります。
4.決めた後も引きずらずに変化を受け入れる
決められない人の傾向として、決めた後もその決断に引きずられる傾向があります。ネガティブなことを考えても、その決断の成功確率は上がったりしません。
決められる人 :「人間万事塞翁が馬」変化を受け入れる
決められない人:決めた先の行く末に縛られる
失敗を恐れて決断ができない人がいますが、その決断が失敗につながるかどうかは誰にもわかりません。もっと言うと、たとえその決断直後失敗したとしても、そこから学び、新たな行動をすることで、より大きな成果につながる可能性もあります。
「人間万事塞翁が馬」という中国の故事については先日の記事でもご紹介しました。
つまり、人生というのは、何がどうなるかは予測できないものであり、変化するものです。決断した後に起こる出来事に一喜一憂せず、長い目で見て良い方向に向かっていくことが大切です。
先のことを完全に予測することは不可能ですから、実は「ベストな決断」というものはありません。その時点で「最もベターな決断」があるだけです。ベターなので、さらに良くなることもあるでしょう。1度決めたことは「絶対」ではなく、変わっていく。こうした感覚を持っておくことで、失敗を恐れずに「決める」ことができるようになります。
「決められる人」になるためのマインドセット
以上、決めるための4つの視点を見て来ましたが、最後に決められる人が持っているマインドセットについて触れます。
仕事で常に意思決定にさらされる人として、スタートアップの起業家を想像してみましょう。大企業という大きな組織ではなく、小さな組織の中で自分の描いたビジョンに向けて日々クイックな意思決定を求められます。しかも全て自分で決めて行かなければなりません。そんな起業家の中で有能な人に共通しているマインドセットがあります。それは「目的が明確」であることです。
「世の中を〇〇にしたい」、「世の中から▢▢で困っている人をなくしたい」など、自分が働く目的が明確です。その目的を実現するために、目の前の選択肢から何を選べばよいのかと考えます。行動原理がとてもシンプルです。だから迷わない。即断即決できます。
これは起業家だけの話ではありません。例えばダイエットも同じですね。何となく痩せたいという人は目の前のケーキを食べるか食べないか迷ってしまいます。でも、「あと二か月後までには水着が着られる体になって彼氏をつくる!」と目的が明確な場合、ケーキを食べるという選択肢は一瞬で捨てられます。目的の明確さが行動原理のシンプルさにつながります。
自分が何のためにそれをするのか?何かを決断するうえで、目的が明確になっていれば、その目的に合っているかどうかでその決断の正しさを判断することができます。いわば白黒つけるモノサシです。逆に、目的が不明確ということはモノサシを持っていない状態。モノサシが無い場合はモノサシを創るところから始めるのがよいです。そのためにも「何のために?」と自分に問うことが大切です。
まとめ
決めるための工夫として4つのポイントをご紹介しました。改めて整理すると以下がポイントとなります。
1.仕方のないことで悩まない
2.マルチよりもシングル
3.損得勘定よりも自分の直観
4.決めた後も引きずらずに変化を受け入れる
こうした行動ベースの要点を意識することで、決めていける人に近づけます。そして、最も大切なのはこうした行動をする前提となるマインドセット、つまり「目的」です。目的が明確になれば、判断軸がシャープになり、行動原理がシンプルになります。「決められる人は目的がはっきりしている人」と言い換えられるのかもしれません。
そして、本当に大切なのは「決める」以上に、その先の「行動」です。「決める」と「やる」はセットです。「決めた」でも「やらない」は決めたとは言えません。決める→やる→決める→やる・・・、この繰り返しで自分の判断のセンスは磨かれ、決断のスピードは加速していきます。
決断の先に自分の行動があるとすれば、その時の決断の主語は「I(私)」であるべきです。「私はこうする」「私はこれを選ぶ」など、やはり主語が自分であるからこそ、その先に自分の行動が紐づいていきます。
自分の人生のステアリングは誰でもなく自分が握り続ける。
決められる人になって、仕事もプライベートも胸を張って自分の人生を歩んでいきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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