マガジンのカバー画像

心にしみた作品たち

16
心を揺さぶられた作品を集めています。
運営しているクリエイター

#エッセイ

岩城宏之という指揮者は、はたして正当に評価されているのだろうか。

岩城宏之という指揮者は、はたして正当に評価されているのだろうか。

いまは亡き指揮者の岩城宏之に取材をしたことがある。

彼が亡くなる前年の十二月。場所は赤坂の全日空ホテルだった。

その年の大晦日、彼はベートーヴェンの九つの交響曲を一夜にして全部振るという一大イベントを行った。当時そんなことをする指揮者は世界中に誰もおらず、彼にとって二回目の挑戦になったこのときもメディアは何となく物珍しそうな好奇な目を向けていた。

でも僕はどうしても話が聞きたかった。なぜなら

もっとみる
あの時よりおいしいハンバーガーをまだ食べたことがない

あの時よりおいしいハンバーガーをまだ食べたことがない

ハリウッドのどこかという以外、店の場所も名前も覚えていない。それに、たとえ同じ店で同じハンバーガーを食べたとしてもあの時よりおいしいと感じることは決してないだろう。

なぜなら、そのハンバーガーをごちそうしてくれたWangさんとはもう二度と一緒にハンバーガーを食べることはできないから。

期待と不安が入り混じった旅の初日に、それを応援してくれる人と一緒に食べるハンバーガーは、それだけで、忘れること

もっとみる
最愛の母に「死んでもいいよ」と言った日

最愛の母に「死んでもいいよ」と言った日

「ママ、死にたいなら死んでもいいよ」

大好きな母に、私が放った言葉です。
高校2年生の時でした。

ひどい娘だと思いますよね。
私もそう思います。
でも、母を救う唯一の言葉でした。
それしか見つからなかった。

話は少しさかのぼりまして。

私が中学2年生の時、父が突然死しました。
働きすぎによる、心筋梗塞でした。

父は建築系ベンチャー企業の経営者で、めちゃくちゃカッコいい存在でした。めちゃく

もっとみる
月を買った、或いは私の願望を買った。

月を買った、或いは私の願望を買った。

ずっと欲しかった、月の間接照明を買った。

2020年の#買ってよかったもの にも書きましたが。これ本当に素敵なんです。点灯すると月面がリアルに浮き上がって、本当に月を手に入れたみたい。
ブックライトには少々暗いけれど、白色の月にも、黄色の月にも変えられる。(私は暖色の黄色蛍光の気分が多いです。)

年内に引越す予定の為、断捨離をしながら部屋を整理している最中なのに、気付いたらポチっていた。
この

もっとみる
あら、筋がいいわね。

あら、筋がいいわね。

下駄の鼻緒が切れた。

僕は下駄とか着物とかを身に着ける生活をしているので、日常のなかで、下駄の鼻緒が切れた。という現象が起こる。

下駄の鼻緒が切れると、下駄を捨てるか、下駄の鼻緒のすげ替えという選択肢がある。

すげ替えるという選択をする。

僕の住んでいる街の、昔の街道沿いの履物屋をがらがらがらがらがらと開ける。

すいませんーーーすーーーーーいませんーーーーすーーーーいませーーーん こんに

もっとみる