マガジンのカバー画像

書評

15
過去にした書評のまとめです。
運営しているクリエイター

2020年10月の記事一覧

性風俗のいびつな現場 坂爪真吾

性風俗のいびつな現場 坂爪真吾

 コロナ禍で様々な業種が営業自粛を余儀なくされている昨今、性風俗産業に補助金を給付すべきか否か、という問題が立ち上がっている。
 地上波では取り上げられにくい話題ではあるが、ネットではかなりの盛り上がりを見せている。
 この問題を誤解している人も多いので、述べておくと、風俗店舗の経営する事業者に補助金は支払われない一方で、風俗嬢には補助金の支払いの対象となっている。ゆえに一番救済されるべき困難にあ

もっとみる
『「てんぷら近藤」主人のやさしく教える天ぷらのきほん』 近藤文夫

『「てんぷら近藤」主人のやさしく教える天ぷらのきほん』 近藤文夫

 昨年の秋頃、滋賀に観光に行ったとき大津プリンスホテルに宿泊した。琵琶湖の畔に建てられた地上38階建の建物から眺める景色や系列のホテルには幾度か宿泊していたこと。そして、朝飯付きて1人8千円。僕の目には魅力的に映ったわけだ。

 しかし、この大津プリンスホテルが不便な立地にあることは泊まってから気づいた。琵琶湖を眺めるロケーションは最高なのだが、周囲に食べるところがほとんど少ない。
 そのため、宿

もっとみる
『サカナとヤクザ ~暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う~』鈴木智彦

『サカナとヤクザ ~暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う~』鈴木智彦

 1.前文
 徳島県県道120号線、徳島県徳島市万代町から小松島市大林町へ延びる道路であるが、元々は、国道55号であった。1996年の徳島南バイパスの全線開通に伴い、国道から県道に変更された。
 新国道55号線では、ひどい渋滞が頻発することや、徳島市から南東へ延びる道がない等の使い勝手の悪さもあり、現在でも県道120号線は生活道路として親しまれている。

 そんな地方都市によくある道路であるが、南

もっとみる
『遅いインターネット』 宇野常寛

『遅いインターネット』 宇野常寛

 

 過去、宇野常寛は、サブカルチャーを通じて社会を語ってきた。彼の代表作『ゼロ年代の想像力』や『リトル・ピープルの時代』はもちろん、全ての作品がそうである。
 しかし、今回は違う。編集の箕輪厚介がサブカルチャーで社会を語ることを禁止したのだ。

 さて、宇野はどのようにして新しい言葉で語るのか。著者を追い続けている僕にとっては非常に興味深い一冊である。

 
 宇野常寛が語る、「セカイ」ではな

もっとみる
『炎の牛肉教室』 山本謙治

『炎の牛肉教室』 山本謙治



 
 僕の熟成肉への強い憧れは3年前に見た『カンブリア宮殿(テレ東)』のせいなのだと思う。

 もっと具体的に言えば、2017年3月16日放送の『熟成技術で絶品肉を作り出す肉おじさん!田舎の畜産農家を救う牛肉革命』

https://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/smp/backnumber/2017/0316/

 この回のせいだ。

 そこに出演していたのは、株式会

もっとみる
『都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代』速水健朗

『都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代』速水健朗



 1.要約『本書はショッピングモールを通して、最終的には都市のことを考えたいと思っています』Kindle版39頁

 地方都市の画一化、商店街VSショッピングモール、アメリカの外圧による大規模小売店舗法の制定。ショッピングモールが語られる時、大抵の場合、以上の論点が挙げられる。
 このような手垢のついた議論は、お茶を濁したものか、時代に逆行する実現不可能な結論しか生み出さない。同じ話を延々と繰

もっとみる
『ラーメンと愛国』 速水健朗

『ラーメンと愛国』 速水健朗



 もう10年近く前に読んだ本だ。読んだ時の感想は覚えているのだが、面白い仕掛けの本だなあ、という感想だった。

 昔読んだ本のレビューを意味もなく眺めることが最近の日課なので、いつものごとく、本書の感想やらレビューを検索した。
 読書メーターやらAmazonレビューやらを見て、愕然とした。
 この本の真意が全く理解されていなかったのだ。読書メーターには約250件近くレビューがある一方で、この本

もっとみる