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【雲の中の富士山を登った時の話・1日目⑳】番外編:地獄のような現場

こんにちは! 雲の中の富士山を登った月見里です!

今までの記事は、こちらのマガジンにまとめてありますので、ぜひご覧ください!


前回で綺麗に1日目が終わったのですが、私の物語だけでなく、山小屋のほかの人についても軽く触れようと思います。

聞きたくなくても、寝床の隣は布一枚で上半身部分が隔てられているだけなので、聞こえてしまったのです。

耳栓は必須です。私もしっかりと寝る段階では耳栓をしてぐっすりと寝ました。



ケース①:親子喧嘩


他人がけんかしている様子を見るのを気まずく感じてしまうのは、私だけでしょうか。

同じくそう感じてしまう方には、個室のある宿をお勧めしたいと思いました。

というのも、私の寝床の左隣は、家族三人の父・母・息子という構成で並んでいたのですが、彼らが喧嘩をし始めたのです。

タイミングとしては、まず、彼らがようやく宿にたどり着いた頃です。

「寒いよお」

4,50代の母親が絞り上げるような声で言いました。カーテンに隔てられていても、寒さで身を縮ませ、体長が悪そうなのがわかりました。外は暗くなってきて寒さは増していますし、急に室内に入ると風がなくなり、湿った服がそのじっとりした感触が増すので気持ちはわかります。

「あ!」中学生か高校生くらいの息子が素っ頓狂な声を上げました。

どうしたのだろうと、親子三人と、その話が隣で聞こえる私は静かになりました。

「ザックの中がびしょ濡れで……替えの服も下着も、全部ずぶぬれだ……」

私は、他人事ながら頭を抱えました。なんってこった。前回も書きましたが、私もザックはびしょ濡れでしたが、幸い服類は圧縮密閉袋に入れていたおかげで、濡れずに済んだので、今も乾いた服で寝られています。



しかし、これらがずぶぬれだと、一晩中、暖房のない部屋で一夜を過ごす羽目になります。

しばらく、母・父がその言葉を信じられないのか、口数は静かに、しかし焦りを感じさせる動作の布すれの音やバッグをあさる音が聞こえました。

そして、それらが止むと、ため息が聞こえました。

「私、明日、朝すぐ降りるね」母親が、消えそうな声で言いました。

「え!?」父・息子が声を上げました。

「それは、本気で言っているのか?」父親が静かに言いました。ここまで来たのに信じられない、といった、確かめるような、怒りのこもった声でした。

「私、もう寒くて震えて、登る時も怖くて。だって、登っているときも、低体温症で死ぬかと思ったのよ? 岩場も、いつ落っこちてもおかしくなくて怖かったし。頭も痛いし、体も疲れてるし、冷たくなってるし。もう、私はあきらめるね」



そのあとも、消え入りそうな声で息子が説得しました。

「ここまで登ってきたのに、ここであきらめるのはもったいないよ。ここからもうすぐで頂上だよ」

しかし、母親は応じませんでした。

一色触発の空気が流れました。いつ父・母・息子の誰がヒステリックに叫びだしてもおかしくない雰囲気です。私の胃がきゅっと痛くなりました。

「僕は登るよ」息子が言いました。

そういえば、母も登らざるをえまい、かというようでした。

しかし、母は言いました。

「私は、一人でも降りる」

その言葉は父・息子ともに予想外だったようで、押し黙ってしまいました。

薄いカーテン隔てて隣にいた私も、押し黙りました。





ケース②:学生集団


ケース①が暗すぎたので、今度は明るい人たちを紹介します。

おそらく大学生と思われる学生集団四、五人組が、結構この状況を楽しんでいました。

前回、夕食の時少し紹介した、学生集団です。

彼らはまず、夕食の時に、

「宿のご飯だけじゃ足りないから、追加でなんか頼もう!」

と言って、500円でカップ麵を買いました。

しかし、お湯は別途100円だったようで、彼らは

「持ってきたクッカーでお湯沸かそう!」

と言って、外に出ていきました。

クッカーは多分こういう小型バーナーみたいなものです↓


しかしその数分後、大きな笑い声が何度か聞こえた後、再び戻ってきて、宿のスタッフから100円でお湯をもらっていました。

おそらく失敗したのでしょう。

そしてカップ麵をすすりながら、明日何時に宿を出るか、今日の登山が悪天候で散々だったとか、談笑していました。

そして、カップ麺のスープが身に染みるようで、

「お前飲みすぎだって! 次俺な!」

「ふざけんな! さっきお前飲んだろ!」

と、仲良く回し飲みをしていました。

彼らは、寝床でも、ひたすら自分たちの知っている国を言って回していくゲームをしたりと、楽しそうでした。

富士山登山は、友人といったほうがいいなと、私は一人、思いました(もちろん一人は一人でいいこともありますが)。




ケース③:ダンディ・マン


私の左隣はケース①の喧嘩親子でしたが、右隣はダンディな中年男性でした。

私も彼も二段ベッドの上なので、梯子を上るとき否が応でも隣の寝床が丸見えになってしまうのですが、その人は、見るからに登山、キャンプ慣れしているようでした。

例えば、寝床に断熱・保温効果のあるシルバーシートを敷いていました。こうすることで、薄い敷布団の下の堅く冷たい木からくる寒気を防止できますし、布団との暖かい空気を保温できます。

さらに枕元には、RPGに出てきそうな、おしゃれなランプで照らされ、小さめの瓶のバーボンが置いてありました。おしゃれです。

極めつけは、周りの人が喧嘩したり寒さで不平不満を言っている中、彼は本を読む余裕を見せつけていたのです。

彼をダンディと呼ばずに、なんと呼ぼうかという感じでした。




 今回は以上となります。

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