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シネマ・エッセイ 〜暮らしに映画のエッセンスを

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人生の旅路という表現が意味するように、時に人生は旅に例えられる。映画は、さまざまな人生の縮図。旅をするように楽しむ。日常の、または非日常の暮らしにもっと映画のエッセンスが注がれた…
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#ミニシアター

ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ

ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ

なんてことだろうか
これらの作品を鑑賞してからすでに3ヶ月が経とうとしている

アリ・アスター監督やヨルゴス・ランティモス監督が
多大なる影響を受けたという
ピーター・グリーナウェイ監督の作品たち

毎回 映画鑑賞後に絵やイラストを添えて台詞や感想を認めているが
これら4作品の映画ノートは もはや図画工作のよう
中でも『プロスペローの本』については
作中にある本のお題から「鏡」を選んだ
‘鏡’に写

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映画『悪は存在しない』

映画『悪は存在しない』

ゴールデンウィークに 地元のFMラジオにゲスト出演した
英語通訳をしながら 映画エッセイを書いている
そんな肩書きで媒体でご紹介に預かるのは とてもとても光栄なこと
放送では こんな堅苦しくはなく むしろ砕けすぎていたのではないかと思う

番組内で紹介した映画『悪は存在しない』
ゲスト出演の翌日に 下関のシネマポストへ

「水は低い方へ流れる」

自然なことを 自然なこととして受容することの清々し

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映画『テルマ&ルイーズ』

映画『テルマ&ルイーズ』

「彼女たちの、自由が走り出す。」

この映画の惹句である
女性が主人公のロードムービーの代表作であろう

一方 易経を通してこの映画を観てみると
まったく異なる色彩を帯びる

易経には水山蹇という卦がある
四難卦のうちの一つ

危険な雪山を想像してみよう
大吹雪の中 その山に詳しい案内人もつけずに
入山したらどうなることだろうか

テルマもルイーズも
どの段階でも振り返ることはできた
後戻りをする

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映画『哀れなるものたち』

映画『哀れなるものたち』

つい先日こんな広告を目にした

LIFE WITH ART

アート週間を伝えるものだったと思う

私は常々思い考え記していることだが

人生は旅 そして人生は映画だと認知している

また映画はまさに総合芸術である

つまり 私の頭の中ではこんな関係になっている

人生=旅=映画=芸術

よって LIFE WITH ARTという表現にはいささかの矛盾を感じざるを得ない

こんな小難しいことと向き合

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映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』

映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』

今年上半期映画ファンの中で話題となっている
『ファースト・カウ』

ドーナツ、牛、わんちゃんなどの様々な構成要素

時と空間を超えた友情が
そのすべての要素をつなぎ留めていたということを
『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』を鑑賞後 
再確認した

日常が崩れ去った後に訪れる「自由」

二人の主人公は互いに不治の病におかされ 死の存在と対峙していく
その過程で 生涯の同志のような間柄になっていく

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映画『NOSTALGHIA ノスタルジア 4K修復版』

映画『NOSTALGHIA ノスタルジア 4K修復版』

それにしても
このポスターの惹句にはただただ圧巻

‘もはや、すでに。‘

タルコフスキーに初めて触れたのは昨年のこと
4月に亡くなった坂本龍一さんの追悼を込めて
坂本さんのドキュメンタリー映画2作品
そしてタルコフスキー監督作品の特別上映が
行きつけの映画館にて開催された

『惑星ソラリス』『鏡』『ストーカー』を鑑賞
ソ連当時モスクワにて これらの作品を観ていたというロシア人の女性と出会い
鑑賞

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映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』

映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』

世界中24時間 どこかでタクシーは走り続けている

LA ‘あたしが生きる道じゃないわ‘

NY ‘金は必要だが重要ではない‘

パリ ‘映画を感じるのよ 説明してもムダね‘

ローマ ‘これからの人生は一方通行‘

ヘルシンキ‥‥‥ 愛は時として酷であることを受け取った

日々の暮らしにはこんなにも 自然原理の哲学があふれていることを確認した

ジャームッシュ監督は そのことを自ら受容し、表現し

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映画『映画の朝ごはん』

映画『映画の朝ごはん』

その時にぴったりのことを行う

このことを易経では「中(ちゅう)する」という

まさにポパイの朝ごはんは

そのことを実現している

映画にちなんだおにぎり弁当をいただき鑑賞したことで実感したこと

映画を絵画に例えるならば

映画館はその額縁

その映像芸術からどれだけの可能性を引き出せるかは

映画館の手腕にかかるのではないだろうか

その意味で

今回キャンセル待ちが出るほどの反響があったこ

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映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』

映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』

近ごろの日本では「一粒万倍日」を縁起のよい日としてとらえて
開運のためにと 開運行動に勤しむ人も多い

種籾ひと粒から何倍ものお米が収穫できるというところから由来しているらしい

この映画に登場する牧師は
幼くして亡くした息子の命の代わりに
今までに1000人の脱北者の命を救ってきた

福音にある「一粒の麦」のようだと語る牧師

私には 一粒万倍日と似て非なることに思える

一人の命に代わりがいな

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映画『こわれゆく女』『フェイシズ』『ラブ・ストリームス』

映画『こわれゆく女』『フェイシズ』『ラブ・ストリームス』

『こわれゆく女』

体験したことがなければ
とても表現できるものではないはず

しかし、類稀なる群を抜いた演技力と演出力で
見事に世に放った

なぜここまで言い切れるか
それは、私自身があの子どもたちと同じ境遇にあったから

間違いなく、天才の監督と俳優がいた

『フェイシズ』

ヴェンダースは外側の変化から
内側を観る

カサヴェテスは内側の変化から
外側を観る

私は、このように受け容れた

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映画『葬送のカーネーション』

映画『葬送のカーネーション』

車内のラジオから流れる哲学話

“人生に求めることは?“
“死ぬということ“

「天命を終えることを楽しめない者は、時の変化をわかっていない」
易経にはこのように記されている

この映画の英題は“Cloves & Carnation“

クローブは痛みを鎮静させる作用があると言われる
人を失った時、その傷ついた心も癒してくれるのだろうか

映画『都会のアリス』『まわり道』『さすらい』

映画『都会のアリス』『まわり道』『さすらい』

ヴィム・ヴェンダース監督最新作『PERFECT DAYS』を観て以来

この監督の映画思想が気になった

『都会のアリス』
『まわり道』
『さすらい』
ヴェンダース監督ロードムービー三部作

人生🟰旅🟰映画🟰芸術

こんな哲学方程式が
どの作品からも、ちらつく

“変化は必然だよ
また会おう ローベルト“
(『さすらい』より)

半世紀ほど前のヴェンダース監督は言葉に頼っていた

しかし最新

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映画『カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし』

映画『カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし』

イコちゃん(角野栄子さん)の言葉は

まるで神様から授けられているかのよう

すべては一つである

そのことを

内側から外側へ 

外側から内側へ

イキイキと あそびながら 

表現し作り上げている

「いたずら書きの人生」とは、
イコちゃん、言い得て絶妙です。

映画『市子』

映画『市子』

「限界だった」

易経という東洋思想哲学の最高峰とも言われる書がある
この書には、時の変化の法則が非常に簡潔に書かれている
あまりにも端的に書かれ過ぎているために、解読が難しいと言われている

この易経の中には四難卦(しなんか)という困難の時を伝える卦がある
困難を極める卦「困」の時をどのように生き抜いていくかを説く沢水困
「困」は、見てもわかるように、木の周りに囲いがされている
木は上へ上へと枝

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