マガジンのカバー画像

THE TECHNOLOGY NOTE

49
THE TECHNOLOGY REPORTは、テクノロジーの風向きへの感覚を言語化・体系化していくことで、手段先行に陥ったり、進むべき方向を見失わないようにするためのコンパスを作…
運営しているクリエイター

2023年4月の記事一覧

「ととのう」ためのテクノロジー

「ととのう」ためのテクノロジー

THE TECHNOLOGY NOTE更新4回目、今回のテーマは「ととのう」です。サウナブームを牽引した「ととのう」という言葉に端を発し、テクノロジーを利用してメンタルウェルネスや、認知機能、身体能力の向上を目指すためのテクノロジーなどについて、様々な議論が行われました。

サウナで「ととのう」プロセスの分析から、「快な体験」というのは、その逆の「ストレス」をコントロールすることによってデザインで

もっとみる
"しあわせ"の技術

"しあわせ"の技術

 サウナブームで耳にするようになった"ととのう"という言葉には、整列や整体などの乱れを直してあるべき状態にもどす「整う」と、調和や調理などの必要なものがそろって釣り合いがとれた状態になる「調う」の2つの漢字をあてることができます。

 1997年に発表されたグレッグ・イーガンの『しあわせの理由』という短編には、脳腫瘍の手術の後遺症で「しあわせ」の閾値を自分でコントロールせざるを得なくなってしまった

もっとみる
サイバネティックスとしてのサウナ

サイバネティックスとしてのサウナ

技術の進化と制御の欲望
人間は技術を利用して様々なものを制御してきました。例えばSpaceXのファルコン9ロケットが打ち上がったあと、ブースター部分が、まるで打ち上げ映像の逆再生のように戻ってくる様子を見てびっくりした人は多いと思います。

これは、ロケット部分が常に自分の姿勢をセンシングしながら、翼とガス噴射を利用して常に理想のポジションに少しづつ補正していくという、「フィードバック制御」という

もっとみる
ビールが一番うまい瞬間をつくるテック

ビールが一番うまい瞬間をつくるテック

今回のテーマはトランステック≒「ととのいテック」ということで、心身のウェルネスに作用するテクノロジーについて書いていくわけだが、今現在筆者は日本におり、なかなか国内で、海外のバリバリの瞑想デバイスなどを簡単に体験することはできないし、さあ何を書こうか、ということで悩んだ。

今回事前にこのテーマについてディスカッションする中で、「ととのう瞬間」というのはどういう瞬間なのかがトピックの1つとなった。

もっとみる
ペットロボットとお化け屋敷でととのう?

ペットロボットとお化け屋敷でととのう?

皆さんは好きな動物がいますか?僕は実家でずっと飼っていたこともあって猫が好きです。勉強の合間の休憩で一人で休んでいるのと猫と触れ合うのを比較すると明らかに後者の方がよくリフレッシュできてすぐにまた次に頑張れることを感じていました。個人の感想ですが。

このテキストは「THE TECHNOLOGY NOTE」の「ととのう」特集の記事です。サウナには僕はあまり行かないので昨今話題の「ととのう」という体

もっとみる
メタバースって何なんだろう会議

メタバースって何なんだろう会議

THE TECHNOLOGY NOTE更新3回目、今回のテーマは「メタバース」でした。仕事でも関わることが少なくない領域にも関わらず、いざ「メタバース」について議論しようとすると、ふわふわとしてしまうのは何故なのか?その理由について様々な議論が交わされ、以下の6つの記事が執筆されました。

「メタバース」という概念自体が様々な可能性を内包していることから、様々な定義がパラレルに存在してしまう「マル

もっとみる
メタバストピアを希求する

メタバストピアを希求する

メタバースについては、定義がいろいろあるのでまず辞書を引いてみます。

辞書にある通り、語源となっているハヤカワ文庫『スノウ・クラッシュ』の巻末の謝辞で作者のスティーブンスンは下記のように書いています。

"気に食わなかったから"。

原作が1992年なので、1987年に出版された『Human Interface Guidelines : The Apple Desktop InterfaceGU

もっとみる
メタバースの現在位置

メタバースの現在位置

「メタバース」という言葉のややこしいところは、人によって微妙に定義に揺らぎがあるという点です。おそらくその原因は、「メタバース」は「技術」ではなく「概念」であること、さらにこの概念自体が特定の現象やサービスに付けられた名前ではなく、既存のSF小説からのサンプリングであるというところにあると思います。

この機会に「メタバース」という言葉が、今のような使われ方をするようになったのはいつごろからなのか

もっとみる
いつかメタバースをそう呼ばなくなるとき

いつかメタバースをそう呼ばなくなるとき

みなさん。メタバースやってますか?

今回のテーマはメタバース。そう提案された時にこれは難しいテーマだなと感じました。もちろん単語の意味は知っているつもりです。以前のTHE TECHNOLOGY REPORT本誌の方でもメタバースについて書きましたしね。でも自分は正直メタバースそんなにやってないしな、という思いがあるのは事実です。ただこの難しさはそれだけではないように思うんですよね。

考えてみた

もっとみる
レペゼン宇宙

レペゼン宇宙

先日、ラッパーのOZworldが「GTA (Grand Theft Auto)」と自身の関わりについて語っているインタビュー記事を拝見した。

GTA とはアメリカのストリート文化を取り入れたオープンワールド型ゲームの先駆け的存在だが、件の記事でOZworldは、GTAが自身の第二の故郷であると語っている。
ゲームを「故郷」と表すのはいささか誇張しすぎた表現だろうか。それとも本当にゲームが「故郷」

もっとみる
発見! 街のメタバース

発見! 街のメタバース

ありがたいことに、ご時世もあって様々なお客様からメタバースプロジェクトへのお誘いを頂く。

しかし、毎度、自分たちで「メタバース」という言葉を使うとき、かなり迷ってしまう。何しろ、この「メタバース」という言葉の定義が相当にあやふやなのだ。

よくある問いとして、ウルティマ・オンラインの頃からあるMMORPG(同時接続型のオンラインロールプレイングゲーム)なんかと何が違うの? みたいな話がある。実際

もっとみる
「賑わい」をいかにして作るか

「賑わい」をいかにして作るか

メタバースへの逆風ChatGPTのリリースから来ているAIブームの一方、メタバースと呼ばれていた分野では再編が相次いで報じられている。

ここ数年、コロナ禍の中でメタバースという言葉がまるで次に来る未来の代名詞のように使われていたし、実際にメタバースというキーワードを散りばめたプレスリリースや起業、新規のプロジェクトや製品のリリースを数多く見た。
しかし、今はそれがそのままChatGPTに置き換え

もっとみる