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ペットロボットとお化け屋敷でととのう?

皆さんは好きな動物がいますか?僕は実家でずっと飼っていたこともあって猫が好きです。勉強の合間の休憩で一人で休んでいるのと猫と触れ合うのを比較すると明らかに後者の方がよくリフレッシュできてすぐにまた次に頑張れることを感じていました。個人の感想ですが。

このテキストは「THE TECHNOLOGY NOTE」の「ととのう」特集の記事です。サウナには僕はあまり行かないので昨今話題の「ととのう」という体験をしたことがありませんが、サウナに限らず外的な手段によって生理的心理的な変化を意図して発生させること、何かしらリラクゼーションにそれが接続されること、を広義の「ととのう」であると本来の正確な意味とは異なりますが本稿では捉えてみます。

ペットロボットでととのう

残念ながら今の生活では猫を飼うことはできていないんですが、可愛いといえば最近オフィスに来たGROOVE X社のLOVOTというペットロボットもとても可愛いです。丸い顔と大きな目、丸っこい体。言葉は話しませんが鳴きます。

LOVOTは特定のモチーフを持たないとのことですが、猫好きの僕にとってはあくまで個人的にですが猫の可愛さに通じるものもあります。そもそも僕はなぜこんなにも自分が他の動物に比べて猫を可愛いと感じるのかはよく分かりませんが、猫は約1万年前に人類と暮らし始めそこから現代に至るまで形や特徴が大きく変わることがなかったと言います。猫の骨格や体型は現代の猫と古代の猫の間で非常に類似してるそうです。1万年前の古代人と僕の猫の好みが一緒かもしれないと思うと面白いですね。

このように何かを可愛いと感じるということは私たちの生物学的な本能に深く根ざした現象であり、進化心理学的視点から見ても興味深い事例です。進化心理学は、人間の心の働きや行動が進化の過程でどのように形成されたかを研究する学問です。この感覚は、主に対象の保護を促す役割を果たしており、結果として種の保存と繁栄に寄与していると言われています。

進化心理学的視点から見ると、可愛いと感じる対象は、主に幼い個体や無防備な生き物に対して現れます。この感覚が発達した背後には、子孫を守り育てるための本能が働いていると考えられます。例えば、人間の赤ちゃんや幼い動物の顔つきや形は、大人に比べて無防備で助けを必要とする印象を与えることが多く、これによって親や周囲の大人が保護や世話をする意欲を引き出します。

また、可愛さはコミュニケーションにおいても重要な役割を果たしています。可愛いと感じる対象との親和性が高まることで、人間はその対象に対して愛情や友好的な態度を示しやすくなります。これは、社会的な結びつきや協力関係を築く上で非常に重要な役割を果たしています。

さらに、可愛いと感じる対象は、ストレスの緩和やリラックス効果をもたらすこともあります。研究によれば、動物の赤ちゃんや可愛い対象を見ることで、鑑賞者の心拍数が低下したり、幸福感や安らぎを感じることが示されています。このように、可愛さは人間にとって生物学的な意義を持ち、進化心理学的視点からも重要な役割を果たしていると言えます。

一般論として、可愛いと感じる要素の多くは幼児特徴(ネオテニー)と密接に関係しています。要は大きな目、丸い顔、小さな鼻、などです。LOVOTを見て可愛いと感じる僕の脳もそのような一般的な特徴を備えているということですね。

そのようなペットロボットは、人間との親密なコミュニケーションを通じてオキシトシンの分泌を促すと言います。オキシトシンは、「愛情ホルモン」とも呼ばれ、親密な関係を築く際に重要な役割を果たします。ペットロボットとの交流により、このホルモンが分泌されることで、安らぎや愛着を感じることができます。

お化け屋敷でととのう

そんな可愛いペットロボットと個人的な経験において共通点を見いだすことができるのがお化け屋敷です。

ペットロボットは、現実のペットと同様に、人々に安らぎや愛情を与えることで心の癒しをもたらします。一方、お化け屋敷はスリルや恐怖を楽しむ体験により、人々に興奮や達成感を与えます。

お化け屋敷は、恐怖体験を通じてアドレナリンとドーパミンの活性化を促します。アドレナリンは「緊張や興奮状態を引き起こすホルモン」として知られ、お化け屋敷での恐怖体験がこれを引き起こします。またドーパミンは恐怖を克服した後の達成感や喜びを感じる際に分泌されます。

以前お仕事で関わらせていただいた「MBS梅田お化け屋敷」ではNTT西日本の持つ脈波からの感情推定を行う技術によってお化け屋敷の恐怖体験の数値化に取り組んだこともあります。入場者グループの中で誰が一番怖がっているかを「ビビり度診断」として可視化しました。

お化け屋敷好きの知人によると、お化け屋敷で大きな声で叫ぶのはスッキリする体験だそうです。普段の生活ではなかなかできる機会はありませんし、大きな声で叫んだり驚いたりすることが許されている、強く感情を発露する場所としての機能もあるようです。

お化け屋敷のような怖い場所で感じる恐怖や緊張は、人間が過去の危険な状況に対処するために進化した感情です。古代の人々が野生の動物や敵対的な他の人間から身を守るためには、緊張や恐怖を感じることが有益であり、生存に繋がる行動を促していたのです。そのため、現代の人々も、お化け屋敷のように恐怖を感じる場所に対して緊張や警戒心を持っているのですね。

私自身は実は怖いものは苦手です。お化け屋敷の内部は暗くて狭く、いつどこで驚かされるかわからない状態で緊張します。ですが、出口から出た時の開放感たるや、という感じですね。サウナが好きな人に「ととのう」について説明してもらった時に緊張と緩和というキーワードが出てきました。体温の変化によるストレスであるサウナの体験とお化け屋敷とは異なるものですが、緊張と緩和がもたらすリラクゼーション効果という意味ではお化け屋敷との共通点もあるのかもしれません。

また、お化け屋敷での恐怖体験がもたらす開放感やリラクゼーション効果は、ストレス緩和の役割も果たしています。恐怖や緊張はストレス反応の一部であり、適切な状況下で解消されることが、精神的な安定や健康に良い影響を与えるとされています。お化け屋敷での恐怖体験は、危険がない場で感じる恐怖や緊張を解消させることで、ストレスを緩和し、心身のバランスを回復する効果があると考えられます。このように、お化け屋敷での恐怖体験は、心理的なストレスを緩和する役割を果たしていると言えるでしょう。

総じて、お化け屋敷での恐怖体験は、ストレス緩和、社会性の向上、自己効力感の高揚など、さまざまな心理的効果をもたらすと言えます。お化け屋敷は、単なるエンターテイメント施設を超えて、人間の心理的ニーズを満たす場所として機能していると言えるでしょう。

未来を想像してみる

可愛いペットロボットとお化け屋敷は、人間の感情や生物学的な本能に働きかける点で共通しています。ペットロボットは、可愛さや親密なコミュニケーションを通じて心の癒しや安らぎをもたらし、オキシトシンの分泌を促します。一方、お化け屋敷は、恐怖体験やスリルを通じて興奮や達成感を与え、アドレナリンやドーパミンの活性化を促します。

LOVOTのように抱っこできるロボットと一緒に入るお化け屋敷があったら面白いかもしれません。作りたいですね…。

身体のデータの取得はウェアラブルデバイスなどでだいぶ浸透してきたので、さらにそこからの、体験の個別化が生成系AIなどの技術発展によって進むと考えられます。その時にエンターテイメントも生体データによってその瞬間のユーザーに最適化された形に変化するものも出てきたりするのかもしれません。

音楽ストリーミングのSpotifyなんかだと「フォーカス」とか「リラックス」のように、ありたい心理状態で区切られたプレイリストがあります。僕は音楽にあまり詳しくないのでそういうプレイリストをありがたく活用しています。しかし映像には今の所Netflixなどでもそういうものは見かけない印象です。

昨今だと顔画像から感情推定を行う技術も進みつつあります。映像を見ている状態というのは画面に顔が向かっている可能性が高いと思われるので、インカメラで顔を捉えられそうですよね。ユーザーの許可は必要ですが映像の鑑賞時の感情データの蓄積から分類されたり、新しいコンテンツ作りに活かされたりすると面白いなと感じました。

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