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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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#教育

『現代思想04 2024vol.52-5 特集・<子ども>を考える』(青土社)

『現代思想04 2024vol.52-5 特集・<子ども>を考える』(青土社)

曲がりなりにも教育を生業としている以上、「子ども」が特集されたら、読まねばなるまい。「現代思想」は、多くの論者の声を集め、内容的にも水準が高い。そして同じことを何人もが述べるのではなく、多角的な視点を紹介してくれる。「こどもの日」ということで、こどもへ眼差しを向けてみよう。
 
確かに多角的だった。全般的な対談に続いては、「家族」「法律」「制度」「学び」「未来」といった概略に沿った形で、論述が進ん

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『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

キリスト者として、何かしら重荷を負うというものがあるという。どうしてだか分からないが、そのことのために心血を注ぐしかない、という思いで生きるのだ。生きることが、考えることが、すべてそれのために営まれている、という気持ちになる。
 
著者にとり、「教育」がその重荷であるのだろう。しかも、「キリスト教教育」である。キリスト教を信じさせる教育だという意味ではない。教育する側が、キリスト教精神を以て教えて

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『困惑を超えるもの 大沼隆遺稿説教集』(大沼隆・教文館)

『困惑を超えるもの 大沼隆遺稿説教集』(大沼隆・教文館)

日本基督教団仙台川平教会主任担任牧師、宮城学院宗教総主事などを務め、東北の地で50年にわたり伝道に奉仕した牧師が残した説教集。膨大なノートの束から掬い上げられた、生涯をかけて福音をあかしし続けた著者による心打つ魂の言葉。
 
本の帯にそう説明されており、これが本書の概略を簡潔明瞭に伝えている。その帯に、より大きな文字で書かれてある文句はこうである。「信仰とは、困惑があってもそれを超えて生きてゆくこ

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『教えることの復権』(大村はま・苅谷剛彦・苅谷夏子・ちくま新書399)

『教えることの復権』(大村はま・苅谷剛彦・苅谷夏子・ちくま新書399)

生涯国語教師、と読んでよいだろうか。そして、国語教育に対して、最も大きな仕事をした、と私は思っている。時に型破りとも呼ばれ、あるいは最高の技術と信奉され、他人の評価はいろいろに変わるけれども、2005年に亡くなってから後、果たしてその国語教育はどのようにいま活かされているのだろうか。
 
本書の共著者といえる苅谷夫妻は、共に国語教育に関わっている。特に、苅谷夏子氏は、大村はまのかつての直接の教え子

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『評伝 大村はま』(苅谷夏子・小学館)

『評伝 大村はま』(苅谷夏子・小学館)

教育産業に属するからには、教育の理想や公教育の難点などに、口出しするような立場ではないと自覚している。おまけに国語は、以前担当していなかった。それでも、「大村はま」という人の国語教育についての本には、触れないではおれなかった。わずかなものしか読んだことはないが、その信念というものには、圧倒されるものを感じていた。
 
もしかするとキリスト者ではないか。そう感じつつも、ご本人があまりそうした発言をし

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100分de名著 ハイデガー『存在と時間』

100分de名著 ハイデガー『存在と時間』

番組開始当時から興味深く視聴している。Eテレの「100分de名著」。司会者が伊集院光氏にかわり、より庶民的になったが、この人の直感とでもいうのか、その本の世界に対する感覚は非常に優れているものと見ている。具体的に自分の問題に引きつけて理解することは大切な一つの道である。
 
2022年4月からのハイデガーも、楽しみである。いよいよ『存在と時間』が取り上げられた。カントの著作も2つこれまで取り上げら

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『ろうと手話』(吉開章・筑摩選書)

『ろうと手話』(吉開章・筑摩選書)

てっきり、手話通訳者かそれに準ずるような人が書いたものかと思っていた。しかし肩書きなどからすると「やさしい日本語」の推進をメインにしている人のようだ。つまり、外国語を母語とする人が日本語の環境で生活する必要になったときに、必要なことは、できるだけ分かりやすい日本語で生活情報が得られるような仕組みである。福岡の柳川でその事業を行っているという。西日本新聞に時折「やさしい日本語」によるニュースの運動が

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『現代思想2021 vol.49-4 教育の分岐点』(青土社)

『現代思想2021 vol.49-4 教育の分岐点』(青土社)

共通テストや35人学級というふうに大きく変化を見た昨今の教育界。さらに、2020年春からの新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校という、前代未聞の事態を経験して、教育の現場はどうなっているのか。一種の雑誌であるから、全体としてまとまりがあるわけではないが、多岐にわたる声が集められる。特別な主張を手を変え品を変え出してくるのではないが、編集の方針というものはあるだろうから、一定の方向性を保ちつつ

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