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『赤土と太陽』『脈々』『畏敬』『歪』『砂上の月 君の声』

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全てが実体験によって綴られるノンフィクション作品。愚直に走り続ける事で人生の何が変わるというのか?
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短編集『憧憬』

短編集『憧憬』



『アルバニア土産』01

2019年7月 アルバニア・ティラーナ

チェコのプラハを目指す東欧自転車旅の起点をアルバニアのティラーナに設定していた。その前に立ち寄った隣国のギリシャでアルバニアからチェコまでにある国々について質問するとみんな口を揃えて『アルバニアには気を付けろ!』と忠告してきた。

『アルバニアは貧しいから犯罪が多い。』『道が整備されていないので自転車で走るのは大変だと思う。』

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短編集『月明かりと常夜灯』

短編集『月明かりと常夜灯』

《本作を読む前に》

歯を磨きましたか?
目覚まし時計はセットしましたか?

深呼吸をして下さい。
なるべく深くゆっくりと。

次におぼろげな光を探しましょう。
本作を読むにあたり眩い光はそぐわないかも。





準備は整いましたか?

多少の長短はありますが1エピソードは【3分/1400文字】を基本としています。それくらいなら読めると思いませんか?

しかし全て読み切ると3万文字になるの

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『砂上の月 君の声』後編

『砂上の月 君の声』後編

◆目次

「サマルカンドの再会」
「BOCHKA」
「ナボイの不動産王」
「砂漠で感じた魂」
「チェコを目指せ」
「死んだ友達が始めたInstagram」

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『砂上の月 君の声』前編

『砂上の月 君の声』前編

◆目次

「巡礼と砂漠」
「滞在登録」
「新幹線の運転士」
「駒形どぜう」
「遭遇と覚醒」
「Ulugbek Asrorov君」
「心の旅」
「サマルカンドの再会」

【巡礼と砂漠】

旅の背中を追う人生の途中『星の旅人たち』という映画に巡り遭った。あらすじを読むと800kmに及ぶサンティアゴ巡礼の旅を描いた作品らしく、日本で言うとお伊勢参りが映画化された様なものか。

昔から宗教を理由に旅をする

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『歪』

『歪』

◆目次

「梅核気」
「有給の旅」
「南京虫の理不尽」
「罰金」
「ピンポン玉」
「南島」
「牛の神」
「ワイククの朝」
「野鳩と大聖堂」
「歪」

【梅核気】

ピンポン玉を飲み込んだ事があるだろうか?勿論私もないのだが2017年のアラスカ自転車旅から帰国した頃からその感覚に悩み始めるようになった。

人間の食道はそれほど広くないのでピンポン玉は簡単に胃袋まで落ちてくれず喉を通過している間あまり

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『畏敬』後編

『畏敬』後編

◆目次

「寝食を共に」
「彼が旅をする理由」
「廃バスとイスラエル人」
「猛(タケシ)と秘密の仕事」
「チング・ボイド」
「ポーラーバー」
「畏敬」

【寝食を共に】

私は覚悟を決めてテントを張る場所を考え始めた。そのためには周囲の地形を知るべきで半径300m程のエリアを見て周ったが新たな焚き火跡とサミュエルアダムスの空き瓶が見付かっただけだ。私はその辺りをキャンプ地に決めた。

後ろは湖に面

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『畏敬』 前編

『畏敬』 前編

自然の脅威を知らぬ者はそれを尊ばない。この上なく敬いこの上なく怯えた経験がない。

私もそう。自分がいる世界に自然があると勘違いしていた。

だが寝食を共にすればそこに恐怖が芽生える。

身一つで対峙した際、正気ではいられないのが自然で、その乱れた感情こそが畏敬の念へと繋がっていく。

◆目次

「大道芸人」
「環島」
「ポーラーバー」
「ベアプルーフコンテナ」
「北の原野へ」
「彼らこそ猛獣」

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『脈々』

『脈々』

◆目次

「春夏秋冬」
「小さな地球」
「五感の開放」
「延長線上にない」
「3年ぶりのアメリカ自転車旅」
「動き出した時間」
「歩いてカナダへ」
「カリーナとの出会い」
「机上の計画 路上の地獄」
「同じ旅はない」
「“菅井さん”と結婚」
「自信を不安に変えて」





今日も母親から着信があった。「ここしばらく電話に出ていないしそろそろ出ないと怪しまれるかな...」そう思って電話に

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『赤土と太陽』最終章

『赤土と太陽』最終章

◆最終章目次

「ボロボロのジャケット」
「試練の227km」
「バーストウから...」
「小刻みに震えていた」
「連行」
「旅の終わり」
「旅とその後の人生を振り返って」
「帰国」

「あとがき」
「Special Thanks」

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『赤土と太陽』第五章

『赤土と太陽』第五章

病気になった訳じゃない。


脚が折れた訳でもない。


走りたい。病気になったって脚が折れたって最後まで走り切りたい。


でももう走らせてもらえない......


テキサスの荒野の真ん中で私に絶望を与える事に一体どんな意味があるんだ?

誰か答えて下さい。誰か......





◆第五章目次

「荒野の希望」
「一日一日を必死でこなす」
「Interstate40」

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『赤土と太陽』第四章

『赤土と太陽』第四章

小学生の時、バットやグローブ、ボールなど野球に必要な道具は全て買い与えられていたが一緒に野球をする仲間がいなかった。兄は弟とあまり遊びたがらないし友達は球友や白鷺という野球チームに所属しており私とはレベルが合わず、近所のブロック塀に向かって黙々と投げ込むだけが私の中の野球だった。

ブロック一個分にしっかりと速球を投げ込む練習をしていたが誰とも野球ができない私はたまにはボールを打ってみたくなる。田

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『赤土と太陽』第三章

『赤土と太陽』第三章

◆第三章目次

「迷走と困惑」
「赤いピックアップトラック」
「ダーラムの変人達」
「シャーロットの変人達」
「まだその願いは叶わない」
「この国の一員になりたい」
「タイムゾーンの旅」
「アメリカ人と音楽」
「テクノロジーを持たぬ無力な日本人」
「諦めるか?やり遂げるか?」
「とうもろこしと精神のバランス」
「雨モ降リ風モ吹ク」

※ 「ロシア」「ウクライナ」に関係する内容の可能性がある記事

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『赤土と太陽』第二章

『赤土と太陽』第二章

◆第二章目次

「青森の病院」
「旅の様式」
「サシオサエ」
「老人の啓示」
「南洋の別れ」
「ラヂオと地図」
「ギャンブル依存症」
「アメリカ自転車旅」
「決意の時」





【青森の病院】

2010年7月

私は初めて27インチのロードバイクを購入した。今までは20インチの小径車で旅をしていたがロードバイクであればスピードも速い訳で旅の範囲も広がると思ったからだ。それまで国道

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『赤土と太陽』第一章

『赤土と太陽』第一章

ハリウッドブールバード沿いの古い小さなカフェ。テラスでコーヒーを飲みながらタバコを吸っていると感情が見えない涙がつたった。私はそれをぬぐうでもなくロサンゼルスの人々の営みを眺めていた。

西海岸らしく晴れ渡った空とは対照的な自分の心の最深部にあるものを懸命に分析していると何本かのタバコが燃えかすになった。ここは私が想い続けてきた街。何かが変わると信じ続けてきた街。その街の片隅で自問自答を繰り返す。

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