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月星真夜(つきぼしまよ)
2024年11月29日 06:45
その日、ウサギは紅茶専門店のテラス席で、アールグレイを片手に絵本のページを楽しげにめくっていた。陽射しが優しく肩を撫でる心地よい午後だった。ところが、ウサギの顔から次第に笑顔が消えていった。店内には楽しげな笑い声が響いているのに、彼女だけが、まるで別の世界に迷い込んだような、不思議な表情を浮かべていた。その絵本は、「りんごの秘密」をそっとウサギにだけ囁いていた。「りんごは大きなサクランボ
2024年11月28日 07:01
その夜、ウサギは真夜中にふと目を覚ました。部屋の中はしんと静まり返っていて、暗闇の中に一人きりだと感じると、孤独感が胸にじわりと滲んでくる。「夜の帳がまだ降りているのね」ぎゅっと目を閉じ、私は眠れると自己暗示をかけてみる。それでも、もう眠りは訪れてはくれなかった。ウサギは冴えた目を擦りながら、ふらふらと小さな本棚へと歩み寄った。そして引き寄せられるように一冊の本を手に取った。「ぐるん
2024年11月23日 06:17
その朝、ウサギは目を覚ますと、夢の余韻を感じながら静かにカーテンを引いた。今にも泣き出しそうな空を見て、彼女はもう一度ベッドに戻ると、温かい毛布にくるまった。その時、部屋の隅に置かれた小さな本棚が、なぜか自分を呼んでいるように感じた。気づけば足がそちらに向き、青い背表紙の絵本に手を伸ばしていた。「こんなお天気の日は、物語の世界に旅しなさいってことね」ウサギは部屋着をふわりと羽織り、窓辺の椅
2024年11月18日 07:04
その夜、ウサギは眠る前に小さな本棚を覗き込んで、一冊の絵本を手に取った。「夢の中でお姫様になりたいなら、この本が必要ね」そう呟くと、ふわりとベッドに体を投げ出し、最初のページをそっと開いた。「いいなあ。近所にお城みたいな幼稚園があるなんて!」ウサギは絵を眺めながら無邪気に笑った。「私もアンみたいにピンクのフリフリのドレスを着て、青いハートの宝石を胸に飾ってみたいなぁ」小さな女の子、アンは
2024年11月14日 06:38
その夜、ウサギは慌ただしく家に帰ると、まっすぐ小さな本棚へと向かい、迷うことなく一冊の本を引き抜いた。「もう、物語の続きを知りたくてたまらないの…」まるで一瞬たりとも無駄にしたくないかのように、その場に腰をおろし、栞が挟まれたページをそっと開いた。物語の中ではちょうど今、小さなモモが灰色の男たちに追われ、カメのカシオペイアと逃避行の真っ最中。「逃げて…!」とウサギは小さく叫び、気づけばすっか
2024年11月9日 06:15
その朝、目を覚ましたウサギは、ふと耳を澄ませた。外から聞こえてくる車の音が、水たまりを跳ねる音と溶け合っている。彼女にはすぐにわかった。今朝は、しとしとと雨が降っているのだと。ウサギは小さく背伸びをしながら、そっとカーテンを開けた。空からまっすぐに降り注ぐ雨粒をじっと見つめていると、小さな吐息が窓を曇らせた。「雨が降ると、思い出す本があるのよね」ウサギは小さな本棚に目を向けた。「こんな
2024年11月3日 06:28
秋の夕暮れ、ウサギは窓辺に腰掛け、降り続く雨音に耳を澄ませていた。ティーカップに熱いお湯を注ぎながら、ふと誰かに呼ばれた気がして、小さな本棚に目を向けた。そして一冊の絵本を手に取ると、その表紙をじっと見つめた。「この淡い色彩の絵が、優しい物語にぴったりなのよね…」と、つぶやきながら、紅茶の香りに誘われて、そっとひとくち口に含む。静かな時間が流れる中、ウサギはゆっくりとページをめくり始めた。
2024年10月27日 06:50
その夜、ウサギはベランダから月を見上げていた。膝を立て、胸の前で指を絡めたまま、瞳は薄く潤んでいる。その姿は、まるで懺悔する告解者のように見えた。「お月様、ごめんなさい…。今月はまだ何日も残っているのに、食欲に負けて、お金を全部使い果たしてしまいました。こんな私を、どうか許してください…」どうしても、自分の無計画さを責めずにはいられなかった。途中で何度も「気をつけよう」と誓ったはずなのに、
2024年10月22日 06:36
「今日も一日、よく頑張ったわね」ウサギは小さなあくびをした。時計の針は午後十時を指し、彼女の目も少しずつ重くなっている。ベッドに向かう前に、小さな本棚の前で立ち止まると、何気なく一冊の本を手に取った。そして、その本を胸に抱きしめながら、ベッドにふわりと飛び込んだ。「優しい一日の終わりには、絵本がぴったりなのよね」とウサギは微笑みながら、手の中の本を見つめた。ふと、もうすぐハロウィンだというこ
2024年10月17日 06:11
枯れ葉がひらひらと舞う、静かな秋の昼下がり。ウサギは紅茶専門店のテラス席に腰を下ろし、アールグレイのカップを両手でそっと包み込んだ。空に向かって広がるパラソルは、夏の鋭い陽射しが過ぎ去り、ほっと息をついているかのようにみえた。少し寂しげでありながら、どこか心地よい秋の空気が、ウサギをそっと包み込んでいた。紅茶をひと口含むと、そっとカップを置き、一冊の本を取り出した。細い指先でページをめくる
2024年10月13日 06:22
その日、カメは図書館の閲覧席で、いつも通り穏やかに本のページをめくっていた。ふと、視線を上げると、ウサギが肩を落とし、足取り重く歩いてくるのが見えた。「今日はいろいろあったの。もう、異世界にでも飛び込みたい気分よ」彼女は小さくため息をつき、隣の席にドサッと座り込んだ。カメはページをめくる手を止め、一冊の本を取り出した。それをそっとウサギの前に滑らせながら、「異世界に行くのもいいかもね」と、
2024年10月10日 06:15
穏やかな秋の午後、ウサギはお気に入りのティーカップとバターサンドをそっと窓辺のテーブルに並べた。アールグレイを注ぐと、優しい香りがふわりと部屋中に広がった。彼女は部屋の隅の小さな本棚に歩み寄り、そっと一冊の絵本を引き出した。それは、大切な人からもらったもので、忘れようとしても忘れられない、特別な本だった。窓辺に戻り、過去の思い出をそっと胸の奥にしまいながら、そっと最初のページをめくると、仲
2024年10月7日 06:21
その日、ウサギはいつものように図書館の閲覧席でカメの背中を見つけた。本を読んでいるはずなのに、どこか様子が変だ。よく見てみると、彼はくすくすと肩を震わせていた。ウサギは、何がそんなに面白いのだろうと、カメの背中越しにそっと本を覗き込んだ。すると、本のページには、まるまると太った「うさぎ」が描かれていた。カメは何かを感じ取ったのか、ふいに振り返った。ウサギと目が合うと、彼は驚いたように本をぱ
2024年10月3日 06:58
秋の澄んだ空気の中、ウサギとカメは広い草原に座り、ぼんやりと空を見上げていた。どこまでも広がる青い空には、白くふんわりとした雲が、遠く高く、静かに浮かんでいた。ウサギは、読み終えたばかりの本を胸に抱き、思いにふけっていた。物語の中の「ぼく」が、旅の途中でモグラたちと出会い、少しずつ成長していく姿が、彼女の心に小さな灯りをともしていた。「私、ハッとしたの。『成功するってどういうことかな?』っ