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ものぐさトミー

「おはようございます。ウサギのティースプーンのお時間です」小さなラジオブースの中で、ウサギはいつものように元気な声で番組を始めた。その日はリスナーからの質問に答えるコーナーが用意されていた。

「次の質問は、ラジオネーム『図書館大好きなカメさん』からです。『もし、こういうものがあったら欲しい、というものがあったら教えてください』という質問をいただきました」ウサギはリスナーに向けて話し始めた。

「欲しいもの? いっぱいありますね。一番は何だろう?」真剣に考え込みそうになった彼女は慌てて言った。「その前に、今日の一曲目はこの歌でーす」

「私は、初めて見るものにはとても興味が湧きます。でも逆に言うと、同じことの繰り返しはちょっと苦手です。だから毎日しなければならないことを、自動でやってくれるものがあれば便利だと思いますね」と笑いながら話を続けた。

「みなさんは『ものぐさトミー』っていう絵本を知っていますか? トミーは毎日、ベッドが傾いて起こしてもらいます」

「それだけではありません。自動着替え装置に着替えさせてもらい、電気食事機にご飯を食べさせてもらいます。この本を読むたびに、いいなーって思います」と彼女は屈託なく話を続けた。

彼女の心からの言葉に番組は盛り上がり、さまざまなリスナーの意見や欲しいものが、いろいろと紹介された。

「楽しい質問をありがとうございました。欲しいものは人それぞれですね。それでは皆さん、次回もお楽しみに!」と、ウサギは番組を締めくくった。

放送を終えたウサギは、静まり返ったスタジオで一人佇んでいた。

「いま考えてみると、私、けっこう恥ずかしいことを言った気がするの。まぁ、その通りなんだけれど。それにしても…、カメくんの欲しいものが気になるわね。早く聞きに行かなくっちゃ」

スタジオを後にしたウサギは、そんなことを考えながら、彼の待つ図書館へ軽やかに足を向けた。

※ものぐさトミー
  ペーン・デュボア 文・絵/松岡享子・やく
  /岩波書店

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