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わゴムは どのくらい のびるかしら?

きのうの夜、図書館でその本を読んでいたカメくんが私に言ったの、「輪ゴムってどれくらい伸びると思う?」って。そう聞かれた時、私は何も考えずに答えてしまった。「そうね、20センチくらいじゃないかしら?」と。

その時よ、自分がつまらない大人になってしまったのではないかと思ったのは。だから、その本を受け取り一人で図書館を後にした。少し混乱していた私は、直ぐにはその本を読めなかったわ。

朝が来て、読み始めた私は直ぐに思ったの。輪ゴムをベッドの枠に引っ掛けて部屋の外に出るなんて普通は考えないわと。とはいえ、そう考えること自体が、もうつまらない大人の証拠なのかもしれない。絵本の世界はもっと自由で、もっと広いのだから。

絵本の中のぼうやは、今度は輪ゴムを自転車のサドルに引っ掛けて走り出すの。信じられる?  もちろん絵本の中のことだと、分かっているのだけれど。

ぼうやはバスに乗り、汽車に乗って輪ゴムを伸ばしたの。ここまで来ると、私もだんだんと慣れてきた。そうよね、輪ゴムはここまで伸びるんだと納得し始めた。でも飛行機に乗るなんて、ちょっとやり過ぎじゃない? そこまでは想像が追いつかない。

それでも私は譲歩したの。飛行機に乗って、そのあと船に乗って、外国まで輪ゴムが伸びることを、何とか受け入れたのよ。

それなのに、次はロケットだっていうのよ!宇宙は真空で空気なんてない。でも、ぼうやは窓から顔を出し、手に持った輪ゴムを引っ張ってる。いくらなんでもやり過ぎじゃ…。

ここまで読んで、ふと気づいたの。こんなにも興奮して絵本を語れる自分が、つまらない大人なんかじゃないってことに。そう考えると、なんだか安心したわ。

「輪ゴムさん、どこまでも伸びてくれてありがとう」朝の柔らかい光の中でウサギはそう呟くと、そっと本を閉じた。

※わゴムは どのくらい のびるかしら?
マイク・サーラー・ぶん/ジェリー・ジョイナー・え/ほるぷ出版

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