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読書ノート

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本屋の息子なので、読書は今でも道楽の王道。 iPad のヘビー・ユーザーなので、僕のスタイルは、すべての本を裁断して、電子書籍化。 いつでもどこでも、マイiPad をスワイプしな… もっと読む
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記事一覧

読書「なぜ宇宙は存在するのか」野村泰紀

読書「なぜ宇宙は存在するのか」野村泰紀

著者のYouTube動画を見たんですね。
「ReHacQ」や、物理系YouTuberの方との対談動画です。
野村氏は、物理学者であり、素粒子論と宇宙論を専門としています。
彼はカリフォルニア大学バークレー校の教授であり、同校のバークレー理論物理学センター所長でもあります 。
物理系のYouTube動画は、時々見たりはしていたんです。
けれど、なにせこちらは筋金入りの理系オンチであるため、まず理解

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読書「よだかの星」宮沢賢治

読書「よだかの星」宮沢賢治

昨夜寝る前に、ひさしぶりに「青空文庫」を開きました。
すでに、パブリック・ドメインになっている作品に限りますが、昔の作品が無料で読めるのは魅力です。
つらつらとタイトルを眺めながら、目に止まったのが本作。
7ページ程度の超短編です。

よだかという醜い鳥が、それゆえに周囲から虐げられて、絶望しています。
鷹には、その名前を変えなければ掴み殺すぞと脅されます。
このまま生きていても辛いだけだと思った

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読書「土佐日記」紀貫之

読書「土佐日記」紀貫之

土佐日記は、平安時代の歌人・紀貫之によって書かれた日記文学です。
934年(承平4年)に土佐守として赴任した貫之が、5年間の任期を終えて帰京するまでの船旅の様子を、侍女の視点から記しています。
なかなか凝った構成で、著者の遊び心が感じられます。
国司の重責を果たし終えた紀貫之が、京都の家に戻るまでの道中を、いっちょ日記にでもして楽しんでやろうかという開放感が感じられます。
肩の力を抜いたユーモアあ

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読書「新版画作品集 懐かしい風景への旅」西山純子

読書「新版画作品集 懐かしい風景への旅」西山純子

江戸時代の浮世絵、明治維新以後の光線画など、木版画の歴史をさかのぼってきました。
個人的な興味をそそられているのは、美人画、風俗画ではなく、なんといっても風景画です。
当然、その後の大正昭和期の木版画の盛衰も大いに気になるところ。
写真でもなく、絵画でもなく、どうして木版画の感触になんでこれほど惹かれるのか。
とにかく良いものは良いというしかなく、これは説明のしようがありません。
個人的に、うすう

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読書「名所江戸百景」一立斎広重

読書「名所江戸百景」一立斎広重

井上安治による明治初期の東京の風景木版画が、なかなか良かったので、時代をもう少し遡ってみようという気になり、今回は江戸の風景を描いた一立斎広重の浮世絵を集めた画集を図書館から借りて参りました。
この人は、江戸時代を代表する浮世絵師の1人ですが、僕が学生時代には、安藤広重と教わりました。
しかし、彼は62年の生涯で安藤広重と自ら名乗った事は1度もありません。
一立斎広重というのは、この連作浮世絵を制

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読書「官僚論」マックス・ウェーバー

読書「官僚論」マックス・ウェーバー

久しぶりに、関東平野に大雪注意報が出ました。
雪が降ってしまいますと、畑には行けませんので、ゆっくり読書と決めています。
今回図書館から借りてきていた本は、マックス・ウェーバーです。
政治学から経済学、宗教学から社会学と、彼の考察は、文化系学問を横断するような幅広いものです。
そんな彼の論考を全て理解できるような上等な頭脳を持っておりませんので、わからないものは無駄な抵抗はせずにスルー。
何とか自

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読書「社会契約論」ジャン=ジャック・ルソー

読書「社会契約論」ジャン=ジャック・ルソー

正月には、歴史的名著を一冊くらい腰を据えて読んでやろうと思っていました。
そこで選んだのがこの本です。
かなり敷居は高いですが、相手にとって不足はないと言う感じです。

我々ホモサピエンスが哺乳類最強の種族になった理由の一つに、社会性という能力を持つに至ったということが挙げられます。
社会性を持つことで、ホモサピエンスは協力し合い、知恵を出し合い、文化を創造することができました。

ルソーの社会契

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読書「風姿花伝」世阿弥

読書「風姿花伝」世阿弥

定年退職後は、読書の嗜好は完全に、古典にシフトしております。

今の世の中に支持されているベストセラーに興味がないわけではないのですが、どんな名著と評判の書であっても、言ってみれば、評価されているのはとりあえず今の時代だけ。
そこへいくと、古典の場合には、「時代の荒波に揉まれても、生き残り、読み継がれている」という実績があります。

そこに、時代を経ても色褪せない普遍の真実が発見できれば、これは、

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読書「私の個人主義」夏目漱石

読書「私の個人主義」夏目漱石

1915年に発表された、文豪夏目漱石のエッセイです。

「青空文庫」からダウンロードいたしました。
今から、100年以上も前のエッセイですが、かなり共感できて驚きです。
当時の学習院大学の学生たちに講演した内容を、一冊の本にしたものです。
言ってみれば、これから日本のエリートとなっていく学生たちに向けた、漱石渾身の人生訓ですね。

自分の道を見つけられず、不本意のまま教師の職についていた若き日の漱

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読書「人間ぎらい」モリエール

読書「人間ぎらい」モリエール

図書館で借りてきた本について、ChatGPTと色々語り合うのが、ここ最近の就寝前の「お楽しみ」になってきました。」
やはり、評価の出揃った古典の方が、彼は得意のようです。
基礎学力の乏しい百姓の無茶振りの質問にも、鋼のメンタルで相手してくれるので感心することしきり。
非常にバランスの取れた良識の持ち主で、何かと暴走しがちなこちらの意見を諌めてくれますね。
面白い。
さて「人間ぎらい」は、17世紀の

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読書「美徳のよろめき」三島由紀夫

読書「美徳のよろめき」三島由紀夫

その後の「よろめきドラマ」の流行を作ったという意味では、昭和大衆史に残る作品です。
但し、三島自身は、その評価を受け入れつつも、自分の作品の芸術性は見過ごしてほしくはなかったようです。
『美徳のよろめき』は、人妻が結婚前の恋人と再会し、不倫に走るという物語。
映画化もされていて、小説の官能的な描写を忠実に再現しましたが、三島由紀夫の本来のメッセージはほとんど無視されました。
三島由紀夫は、人間の

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読書「群衆心理」ギュスターヴ・ル・ボン

読書「群衆心理」ギュスターヴ・ル・ボン

本書が世に出たのは、1895年と言いますから、今からおよそ120年も前のこと。
著者のギュスターヴ・ル・ボンは、フランス人です。
元々は医者でしたが、好奇心旺盛な人で、関心ごとは多岐にわたり、それぞれの分野で著作を発表しています。
その中の一つに心理学があり、フランス革命からおよそ100年が経過したこの時期に、彼は時代の主役に躍り出た「群衆」にスポットを当て、ここに社会心理学というアプローチから切

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読書「蒲団」田山花袋

読書「蒲団」田山花袋

読書「蒲団」田山花袋
1907年発表の中編小説です。
明治40年ですから、もう古典も古典。今から115年以上も前の作品です。
作者の田山花袋は、森鴎外との親交もあった人で、「金色夜叉」で有名な尾崎紅葉のもとに入門。
国木田独歩や柳田邦男などと、「叙情詩」などを通じて活動を共にしています。
中年の小説家の元に弟子入り志願してきた娘に対する、師弟関係を逸脱した、恋慕や性欲の情を、赤裸々に綴った内容で、

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読書「或る『小倉日記』伝」松本清張

読書「或る『小倉日記』伝」松本清張

或る「小倉日記」伝

1953年に、松本清張が、第28回芥川賞を受賞して、本格的なプロの作家になるきっかけとなった短編です。
北九州市に住んでいた松本清張が、森鴎外の生涯で、史料が空白になっている小倉に住んでいた3年間の足取りを地道に追った実在する人物に材を取って書き上げた作品。
もちろん、彼なりの事実の下調べはしたでしょうが、基本はフィクションです。
松本清張といえば、社会派推理小説という分野を

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