Stella

大学院で西洋古典学を専攻していました。西洋古典はキリスト教とならぶヨーロッパ文化の基礎…

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大学院で西洋古典学を専攻していました。西洋古典はキリスト教とならぶヨーロッパ文化の基礎であるという視点を常に意識して研究していました。現在は病気療養中。趣味は音楽鑑賞とピアノ演奏で、好きなものはチョコレートと香水です。noteでは西洋古典やクラシック音楽を中心に発信していきます。

記事一覧

セイレン〜魅惑の歌声〜

 ギリシア神話のセイレンは、上半身が女性の、下半身が鳥の姿をした怪物で、美しい声を持つといわれている。  ホメロスの『オデュッセイア』第12歌では、魔女キルケが出…

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1日前

悪魔の贈り物と乙女の喜び〜グノー『ファウスト』より『宝石の歌』〜

 フランスの作曲家シャルル・グノーは、J.S.バッハの『平均律クラヴィーア曲集第1巻』の「前奏曲第1番」を伴奏に、ラテン語の祈祷文『アヴェ・マリア』を歌詞に使った声楽…

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9日前

アトランティス〜海に沈んだ島の伝説〜

 アトランティス伝説は、オカルティストたちに注目されたり、ナチスに利用されたりしたせいで怪しげなイメージがつきまとうが、アトランティスという国の実在はともかく、…

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2週間前
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海の旅人

 熱い空気、照りつける太陽、心地よい風、青い海、色鮮やかな花々、たわわに実るおいしそうな果物。これはわたしたちが持つ南国のイメージだ。南国の楽園という言葉がある…

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3週間前
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聖なる命の水と異教の神〜『エステ荘の噴水』と『水の戯れ』〜

 フランツ・リストのピアノ曲『エステ荘の噴水』は、リストの晩年の作品で『巡礼の年第3年』の第4曲である。これは『巡礼の年第1年:スイス』や『巡礼の年第2年:イタリア…

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1か月前
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時空を超える夢

 昔の人は夢を何か不思議な力を持つものだと考えていた。聖書や古代ギリシア・ローマ文学では、夢は予言や神の意志を伝えるものであったし、バビロニアや古代ギリシア、中…

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1か月前
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カロンの地上見物〜ルキアノス『カロン』〜 

 ローマ帝政期の作家ルキアノスの『カロン』は、死者を運ぶ冥界の川の渡し守カロンが主人公だ。この、カロンと伝令の神ヘルメスの対話からなる短い対話篇では、普段は冥界…

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1か月前
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ルキアノスの冒険物語

 ルキアノスは紀元後2世紀の作家で、シリアのユーフラテス河畔の町、サモサタで生まれ、エッセイ、演説、手紙、対話篇、物語といったさまざまなスタイルの風刺的な散文作…

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1か月前
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旅の文学

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1か月前
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「カッサンドルへのオード」

 美しいピンク色のバラの名前にもなっているピエール・ド・ロンサールは、フランスルネサンス期最大の詩人で、フランス近代抒情詩の父と讃えられている。

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1か月前
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はかない人生

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1か月前
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カトゥッルスの恋愛詩

 ガイウス・ウァレリウス・カトゥッルスは紀元前1世紀の詩人で、ヴェローナの裕福な家庭に生まれた。彼は若いときにローマへ出て、キケロが揶揄をこめてhoi neoteroi 「…

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1か月前
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古代の『神曲』〜プラトン『国家』より「エルのミュートス」〜

 プラトンの対話篇にしばしば現れるミュートス(物語)は、かつてはプラトン研究においてあまり重要視されなかったものであるが、近年の研究により、プラトンの哲学におい…

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2か月前
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哲学者にふさわしい物語

 古代ギリシアの哲学者プラトンの著作には、しばしばミュートスと呼ばれる物語が現れる。キケロの「スキピオの夢」のモデルになった『国家』の末尾に置かれた「エルのミュ…

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2か月前
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マクロビウスによる夢の分類

 古代末期の新プラトン主義者マクロビウスは、おそらくアフリカの生まれであると考えられているが、彼の生涯についてはあまり分かっていない。

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2か月前
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天体の音楽

 ピュタゴラス派の人々は、宇宙の火の周りを天体が回っていると信じていた。そして、天体は動くときに音を発するが、各天体は違った速度で動くためそれぞれ違った音を発し…

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2か月前
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セイレン〜魅惑の歌声〜

セイレン〜魅惑の歌声〜

 ギリシア神話のセイレンは、上半身が女性の、下半身が鳥の姿をした怪物で、美しい声を持つといわれている。

 ホメロスの『オデュッセイア』第12歌では、魔女キルケが出発するオデュッセウスに、美しい声で人の心を惑わし死に至らしめるセイレンについて忠告する。

 そして、蜜蝋をこねたもので部下たちの耳をふさぎ、オデュッセウス自身は、もしセイレンの歌を聞きたいのであれば、部下に命じて自身の手足を縛らせてそ

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悪魔の贈り物と乙女の喜び〜グノー『ファウスト』より『宝石の歌』〜

悪魔の贈り物と乙女の喜び〜グノー『ファウスト』より『宝石の歌』〜

 フランスの作曲家シャルル・グノーは、J.S.バッハの『平均律クラヴィーア曲集第1巻』の「前奏曲第1番」を伴奏に、ラテン語の祈祷文『アヴェ・マリア』を歌詞に使った声楽曲『アヴェ・マリア』で知られる。

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アトランティス〜海に沈んだ島の伝説〜

アトランティス〜海に沈んだ島の伝説〜

 アトランティス伝説は、オカルティストたちに注目されたり、ナチスに利用されたりしたせいで怪しげなイメージがつきまとうが、アトランティスという国の実在はともかく、本来はこれらとはまったく関係のない話だ。

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海の旅人

海の旅人

 熱い空気、照りつける太陽、心地よい風、青い海、色鮮やかな花々、たわわに実るおいしそうな果物。これはわたしたちが持つ南国のイメージだ。南国の楽園という言葉があるように、わたしたちはしばしば南国を理想の土地と考える。

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聖なる命の水と異教の神〜『エステ荘の噴水』と『水の戯れ』〜

聖なる命の水と異教の神〜『エステ荘の噴水』と『水の戯れ』〜

 フランツ・リストのピアノ曲『エステ荘の噴水』は、リストの晩年の作品で『巡礼の年第3年』の第4曲である。これは『巡礼の年第1年:スイス』や『巡礼の年第2年:イタリア』と比べて演奏される機会の少ない『巡礼の年第3年』のなかでは例外的によく演奏され、耳にすることの多い曲だ。

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時空を超える夢

時空を超える夢

 昔の人は夢を何か不思議な力を持つものだと考えていた。聖書や古代ギリシア・ローマ文学では、夢は予言や神の意志を伝えるものであったし、バビロニアや古代ギリシア、中国など各地で夢解釈や夢占いが行われていた。

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カロンの地上見物〜ルキアノス『カロン』〜 

カロンの地上見物〜ルキアノス『カロン』〜 

 ローマ帝政期の作家ルキアノスの『カロン』は、死者を運ぶ冥界の川の渡し守カロンが主人公だ。この、カロンと伝令の神ヘルメスの対話からなる短い対話篇では、普段は冥界に住むカロンの地上見物が語られる。

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ルキアノスの冒険物語

ルキアノスの冒険物語

 ルキアノスは紀元後2世紀の作家で、シリアのユーフラテス河畔の町、サモサタで生まれ、エッセイ、演説、手紙、対話篇、物語といったさまざまなスタイルの風刺的な散文作品を書いている。

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「カッサンドルへのオード」

「カッサンドルへのオード」

 美しいピンク色のバラの名前にもなっているピエール・ド・ロンサールは、フランスルネサンス期最大の詩人で、フランス近代抒情詩の父と讃えられている。

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カトゥッルスの恋愛詩

カトゥッルスの恋愛詩

 ガイウス・ウァレリウス・カトゥッルスは紀元前1世紀の詩人で、ヴェローナの裕福な家庭に生まれた。彼は若いときにローマへ出て、キケロが揶揄をこめてhoi neoteroi 「若者たち」やnovi poetae 「新詩人たち」と呼んだ詩人たちのグループに参加した。

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古代の『神曲』〜プラトン『国家』より「エルのミュートス」〜

古代の『神曲』〜プラトン『国家』より「エルのミュートス」〜

 プラトンの対話篇にしばしば現れるミュートス(物語)は、かつてはプラトン研究においてあまり重要視されなかったものであるが、近年の研究により、プラトンの哲学において重要な役割を果たしているとみなされるようになった。

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哲学者にふさわしい物語

哲学者にふさわしい物語

 古代ギリシアの哲学者プラトンの著作には、しばしばミュートスと呼ばれる物語が現れる。キケロの「スキピオの夢」のモデルになった『国家』の末尾に置かれた「エルのミュートス」もその一つだ。

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マクロビウスによる夢の分類

マクロビウスによる夢の分類

 古代末期の新プラトン主義者マクロビウスは、おそらくアフリカの生まれであると考えられているが、彼の生涯についてはあまり分かっていない。

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天体の音楽

天体の音楽

 ピュタゴラス派の人々は、宇宙の火の周りを天体が回っていると信じていた。そして、天体は動くときに音を発するが、各天体は違った速度で動くためそれぞれ違った音を発し、それらが調和して人間の耳には聞こえない音楽をつくりだしていると考えた。

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