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マクロビウスによる夢の分類

 古代末期の新プラトン主義者マクロビウスは、おそらくアフリカの生まれであると考えられているが、彼の生涯についてはあまり分かっていない。

 彼の主な著作は『サトゥルナリア』と『「スキピオの夢」注解』である。

 前者は全7巻からなる対話篇で、サトゥルナリア祭の宴での会話という形で、ウェルギリウス批評を中心にさまざまな話題を扱っている。

 後者はキケロの『国家について』の末尾に置かれた物語「スキピオの夢」の新プラトン主義哲学に基づく注釈である。主にポルフュリオスの『「ティマイオス」注解』に依拠しているとされ、古代の科学や新プラトン主義的思想を西洋中世に伝えることに貢献した。

 『「スキピオの夢」注解』には、夢の分類についての記述が見られる。古代世界においては、マクロビウスのほかにもアルテミドロスやカルキディウスらが夢の分類を行ったが、マクロビウスによる夢の分類は古代における夢の分類のなかでも代表的なものである。

 マクロビウスは夢を、ギリシア語でoneirosまたはラテン語でsomniumと呼ばれる謎めいた夢、horamaまたはvisioと呼ばれる予言的な夢、chrematismosまたはoraclumと呼ばれる神託の夢、enypnionまたはinsomniumと呼ばれる悪夢、phantasmaまたはvisumと呼ばれる幻影の五種類に分類した。

 このうち悪夢と幻影は予言的な意味をもたず、解釈に値しないとされる。

 謎めいた夢は、本当の意味が隠されていて、解釈を必要とする。予言の夢はそれが現実になる夢である。神託の夢は、神々しい偉大な人物、神官や神が、未来に何が起こり何が起こらないのか、何をすべきで何をすべきでないのかをはっきりと告げるものである。

 なお、マクロビウスによるとキケロの「スキピオの夢」において主人公スキピオが見た夢は、謎めいた夢、予言の夢、神託の夢に該当するという。

 スキピオに示された真理は、その深淵な意味を隠す言葉で表現されていて、熟練した解釈なしには理解することができず、また、スキピオは夢の中で、彼の死後の住まいや未来を目にし、さらに、彼の目の前に現れて彼の未来を示したのは、尊敬を集める敬虔な神官であったアエミリウス・パウルスとスキピオ・アフリカヌスであったからだというのがその理由だ。

 

 

 

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