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作品

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詩、短歌、掌編小説をまとめてのせています
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記事一覧

シャボン玉

シャボン玉

息を吹きそこに願いが込められる。

空中に漂う水玉模様。

虹色に輝き希望にあふれた世界だ。

それが天高くのぼり壊れる。

「あ・・」

悲しい顔をする子供たちにおじいさんが言う。

「大丈夫だよ。壊れることで君たちの吹き込んだ世界が現実に溶け込んでいくだけさ。君の願いも、もちろんそこのお嬢ちゃんのもね。その空気が大人になって苦しい時に君を救う。」

 子供たちはぽかんとしている。

「あっはは

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ぼくは頑張れない病(小説)

ぼくは頑張れない病(小説)

努力したいけど頑張れない。

そんなことを言ってもみんな甘えだと言って許してくれない。

そこで僕は思いついたのさ、「頑張れない病」があればだれも文句は言えないと。

だって病気だもん仕方ないよね。

だから自分でウイルスをつくることにした。

それが人体に害がないように構成するのはとても苦労した。

そして5年たってようやく完成した。

こうして僕は頑張らなくてもいい免罪符を手に入れたわけだ。

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白雪姫を羨む女

白雪姫を羨む女

眠っているほうが幸せ。

それだけが幸せだから眠り続ける。

私の眠りを覚ますものは何もない。

白馬の王子様でもない。だって彼氏いねえし。

なんでもその王子様の召使が白雪姫の入った棺桶を落としてしまった時の衝撃で毒りんごが喉から出てきたのが原作らしいけど。

なんともロマンティックのかけらもない滑稽な話だ。

そこにあるのはただ永遠の逃避のみ。

そんなあなたにあこがれていた。

私は生きるこ

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タイトル当て①

 
夏にしか現れない君。

「恋愛映画かアクション映画、どっちがいいかな」

「カレーかシチューで悩んでいるんだけどどっちがいいかな」

何を聞いても君は首を横に振る。

「私のせいで君の夢への情熱を冷ましちゃうから」

そう言って冬になるころには僕の前から消えてしまった君。

なんだよ夏には私と君のコンビは最強だね、だなんて言ってくれていたのに。

冬になって外の気温にも負けないほど僕は情熱を燃

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コーヒーが暴くは

 
最近どうにも子供の姿が増えたように感じる。それもあの路地裏に喫茶店ができたころからだ。怪しい、、。

---チリンチリン---

店には店主らしき人物は見当たらない。カウンターには子供が一人いるだけだ。

「なあ坊や。この店の息子かい?ここの店主を呼んできてほしいんだけど。」

「俺がその店主だ。なんか用か?」

子供のわりにかわいく見えない子だ。

「まあなんだ。とりあえずコーヒーでも飲んど

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梅酒

 
突然目の前にドリンクのメニューが並ぶ。マスターが差し出してくれらしい。
・キール
・スクリュードライバー
・テキーラサンライズ
・サイドカー
・ピニャコラーダ

私はしばらく悩み、他の客の様子をうかがった。店にはメリーウィドウを飲む女性一人が端の席に、もう一人フードをかぶった人が私と女性の間に。
するとマスターが
「あちらの女性からです。」
とブルームーンを受け取った。
考えあぐねていたので気

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かわき

水面のかがやく海が見える

けれど浸かれない

池すらない

水たまりがあるかも怪しい

溺れたい

ずっと乾いている

底の見えない海が見える

けれど確かめたくない

穴すら掘らない

掘る手があるかも怪しい

溺れたい

ずっと乾いている

クレヨンロケット

ある幼稚園のお遊戯の時間
「みなさん、この画用紙に好きなものを書いてください!」
先生は一人一人に画用紙を配る。

「僕は地球を飛び出して宇宙を旅するんだ」
そうたかし君は言ってクレヨンを持って描き出す。
「あらあら、たかし君。画用紙の中からはみ出さないでね。」

はみ出した分を先生は慣れた手つきでパパッと消していく。

言った側からたかしの描くロケットは勢いよく画用紙をはみ出す。
気づいた先生が

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パピコの定理

二つで一つ
いくら候補があろうと
こいつのセットはあいつしかいない
二つで初めて成り立つの
一つだけじゃだめ

一つを二つに
いくら候補があろうと
こいつのセットはあいつしかいない
二つで初めて成り立つの
一つだけじゃだめ

一つは一つ
いくら候補があろうと
こいつのセットはこいつでしかない
一つは一つで成り立つの
一つだけでいいの

あいすくれーむ

燃えるようにあついから溶けていく

手に収まらず落ちていく

全て地面に落ちていく

手に残らないくせにベタつく

忘れさせまいと執拗にまとわりつく

ここにはいないくせに

残るのは空っぽの器だけ

捨てるのは惜しいから味わってしまう

あい

地面が飛びついてきた

夕暮れ太陽が溶け出した

どくどくどく

潮が一気に満ちていく

堤防を破りそこら中にあふれる

花畑が取り囲み

心地よい風が懐かしいにおいを運ぶ

しだいに潮は引き

3つの虹がかかる