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オンラインライブレポート

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まだまだ生まれたての”オンラインで行われる催し“の感想たち。
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対象喪失と思い出の瞬き/ダウ90000『また点滅に戻るだけ』

対象喪失と思い出の瞬き/ダウ90000『また点滅に戻るだけ』

ダウ90000の第5回演劇公演『また点滅に戻るだけ』を配信で観た。とてつもない面白さである。ネタとしてダウを消費したり、穿った目線で見ている方々こそ見てもらいたい。まさに現時点での正当なる集大成と言うべき作品で、伏線や構成などはさておき"シンプルに面白すぎる"という凄さがある。

所沢のゲームセンターを舞台で数年ぶりに偶然集まった旧友たちが思い出話を咲かせる陰に、あるプリクラの流出事件の話が通奏す

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男性ブランコ『やってみたいことがあるのだけれど』とスピッツ『ひみつスタジオ』

男性ブランコ『やってみたいことがあるのだけれど』とスピッツ『ひみつスタジオ』

男性ブランコのコントライブ『やってみたいことがあるのだけれど』を配信で観た。繊細な詩情に満ちたコントを元より得意としてきた男性ブランコだが、本作ではほぼ全コントが10分近くの尺があり、賞レースで消耗させる気のない作品性がある。トニー・フランクによるアコギの生演奏を劇伴にするなどその作りは演劇的。この方向性を磨くことに腹を決めたように見える。

そして最も唸ったのがそのコントの見せ方。現代漫才の中で

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ロロ『BGM』とスカート × 街裏ぴんく『VALETUDO QUATRO』

ロロ『BGM』とスカート × 街裏ぴんく『VALETUDO QUATRO』

ステージというのは、可能性が溢れ続ける空間だ。こんなことも見せれるのか、こんな宇宙も広げることができるのか、と思うことが多々ある。それを強く実感するような作品を2本、ここ最近続けて配信で観たので感想を。

まずはロロの『BGM』。三浦直之率いる人気劇団が2017年に発表した作品の再演である。この作品が描き出すのは時間の堆積層だ。東京から仙台までをドライブする2人の青年が、10年前と同じ道のりを辿り

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小林賢太郎『回廊』/繰り返せど繰り返す繰り返し

小林賢太郎『回廊』/繰り返せど繰り返す繰り返し

2020年にステージパフォーマーとして引退して以降、作・演出としても劇場での新作公演を行ってこなかった小林賢太郎。今年に入り、オンライン上に架空の劇場「シアターコントロニカ」をオープンし、配信コントはいくつか発表してきたが、この度待望の劇場コント公演が配信されることになった。

神奈川芸術劇場KAAT大スタジオで収録された有観客ライブを編集して仕上げられた今回の配信公演。出演者に小林はいないが、久

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笑ってしまうこと、笑わないでいること〜Aマッソ「滑稽」/劇団かもめんたる「奇事故」

笑ってしまうこと、笑わないでいること〜Aマッソ「滑稽」/劇団かもめんたる「奇事故」

空前のお笑いブームの真っ只中において頻繁にお笑いライブやバラエティ番組で"笑い"に接するとそもそも"笑い"とは何か、とふと考えることも増えた。そういう思考にさせるお笑いが沢山増えたことも影響しているだろう。この3月、たまたま同じタイミングで配信されていた2本の作品もまた何で笑い、何を笑っているのか、ということをこちらに問うてくる"笑い"だった。

Aマッソ『滑稽』Aマッソがテレビ東京の大森時生プロ

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最近観た配信のお笑い(マヂカルラブリーno寄席/ダイヤモンドno寄席)

最近観た配信のお笑い(マヂカルラブリーno寄席/ダイヤモンドno寄席)

1.1 マヂカルラブリー no 寄席 (アーカイブ1/9まで)

3年連続開催、お正月の風物詩となりつつある無観客配信ライブ。2021年の初回で客席から他芸人がヤジを飛ばす形式で爆ハネした結果、昨年は全員が張り切りすぎてやや失敗。今回はかなり良い盛り上がりを観れて素晴らしくぶっ壊れたものを浴びることができた。めちゃくちゃ面白いのだけど、これを年明けに観ると何が面白いのかの1年の基準が狂っちゃうのが

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最近観た配信のお笑い(男性ブランコ/ダウ90000 × Aマッソ/M-1グランプリ決勝体験ライブ)

最近観た配信のお笑い(男性ブランコ/ダウ90000 × Aマッソ/M-1グランプリ決勝体験ライブ)

男性ブランコのオンラインコントライブ「トワイライト水族館」(アーカイブ1/6まで)

閉園後の池袋サンシャイン水族館で繰り広げるコントライブ。M-1決勝を控えたファイターとは思えない、しとやかなムードのコントばかりでとても驚く。水族館の物音や静寂すらも取り込んだ、美しい間の掛け合いで少し不思議な物語を軸にEテレの23:55あたりで流れてそうなゆるくて微笑ましいVTRコントも混ぜ込まれてとても落ち着

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2022年11月に観たライブ(the chef cooks me × imai/アカシック[配信])

2022年11月に観たライブ(the chef cooks me × imai/アカシック[配信])

11.2 the chef cooks me Tour “Feeling” 2022@名古屋CLUB UPSET(ゲスト:imai)

ゲストにimaiを迎えたこの組み合わせは4年前の福岡grafで観て以来。偶然だけどもまさか名古屋でも同じ座組に出くわせるとは。まず登場したのはimai。やはり最高である。仕事の終わりの疲れに効くフルテンションのダンスミュージック。バキバキなシンセさばきで脳天に刺さ

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オンラインで演劇を観た⑨(ダウ90000「いちおう捨てるけどとっておく」/ケラリーノ・サンドロヴィッチ「世界は笑う」)

オンラインで演劇を観た⑨(ダウ90000「いちおう捨てるけどとっておく」/ケラリーノ・サンドロヴィッチ「世界は笑う」)

ダウ90000 第4回演劇公演『いちおう捨てるけどとっておく』

「ABCお笑いグランプリ」決勝進出やフジテレビでの冠ドラマ、更に「エルピス」のスピンオフと怒涛のごとく躍進し続ける若手劇団の演劇公演。大学受験の学習塾を舞台とした物語。最初はいつも通り、どういう話なのか掴めない小気味いい会話の応酬(ルビサファ、ってやってた人しか言わない略称って感じで身体性があってイイ)でにこにこ笑っていたし、今まで

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[配信]10.02 ふぇのたすカムバックスペシャルライブ「2022ねん、あき」

[配信]10.02 ふぇのたすカムバックスペシャルライブ「2022ねん、あき」

ふぇのたすが復活するというニュースが出た時はとてもたまげた。2012~2015年までの短い活動期間ながらインパクトの強い楽曲を多く残し、ビジュアル面やその"ポップさ"と"可愛さ"の意識的な打ち出し方は、当時盛り上がりを見せ始めたアイドルシーンとは一線を画す魅力が溢れていた。解散後もヤマモトショウはソングライターやプロデューサーとして”かわいい"を様々なシーンに宿し、みこは2021年まで「SHE I

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今週配信で観たライブ(後藤正文×中村佑介/おとぎ話/藤井風)

今週配信で観たライブ(後藤正文×中村佑介/おとぎ話/藤井風)

8.15 中村佑介20周年展 中村佑介×ASIAN KUNG-FU GENERATION 後藤正文 Live&トークショー(アーカイブ8.21まで)

大阪あべのハルカスで開催中のイラストレーター「中村佑介20周年展」。そのイベントの一環として2002年のデビュー以来ほぼ全ての作品で20年に渡ってジャケットに中村のイラストを使用しているアジカンのVo&Gt後藤正文とのトークショーが開催された。トー

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2022年7月に観たライブ(柴田聡子/MIZ/lyrical school[配信])

2022年7月に観たライブ(柴田聡子/MIZ/lyrical school[配信])

7.1 柴田聡子 Tour 2022 "ぼちぼち銀河"@池下CLUB UPSET

下半期のライブ始め。IMAIKE GO NOWぶりの柴田聡子でバンドセット in FIREを観るのは初めてだ。そしてその最高のグルーヴに酔いしれた。固定メンバーで鍛えあげていくアンサンブルの強靭さに惚れ惚れする。特にバンマスでもある岡田拓郎(5月は森道のROTH BART BARON、6月はネバヤンのワンマンのサポ

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7月の配信お笑いコンテンツを観た(ダウ90000/トゲアリトゲナシトゲトゲ ON STAGE/野澤輸出のお笑い大喜利/コメディ十種競技B)

7月の配信お笑いコンテンツを観た(ダウ90000/トゲアリトゲナシトゲトゲ ON STAGE/野澤輸出のお笑い大喜利/コメディ十種競技B)

ダウ90000単独ライブ「10000」(アーカイブ7/23まで)

ダウ90000がネタのみを披露するコント単独ライブ。今やお笑い/演劇フリークの間で知らぬ存在はいなくなったが、こういう質量のあるコントライブにこそ真価が見えるように思う。カルチャー好きの感性をくすぐるワードチョイスや何ともモヤつく人間関係のあれこれという得意技のみならず、出演メンバーを絞ってその強みにフォーカスをあてるネタや大喜利

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ニコ生でライブ配信を観た(Base Ball Bear/私立恵比寿中学)

ニコ生でライブ配信を観た(Base Ball Bear/私立恵比寿中学)

YATSUI FESTIVALを観るために久々にニコ生プレミアムになったら、月額会員の期間にベボベとエビ中のライブ配信があったんでとても幸運だった。もうあんまり配信ライブを買わなくなってきた今日この頃、結果的にライブ映像配信の古参であるニコ生に戻ってきた感じがあるのがとても興味深い。

Base Ball Bear「日比谷ノンフィクションⅨ」(アーカイブ7.25まで)

ベボベ恒例のライブシリーズ

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