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2023年8月の記事一覧

満月の夜 《詩》

満月の夜 《詩》

「満月の夜」

満月の夜に降る雨は

何もかもを濡らすまで降り続ける

傘もささずに歩き続けた

降り頻る雨は僕の血の水面に
幾つもの波紋を作り降り注ぐ

もう何も欲しがらないから

もう何も奪わないでくれ

見えない満月にそう囁いた

黒く塗りつぶせ 《詩》

黒く塗りつぶせ 《詩》

「黒く塗りつぶせ」

もっと近くに来てくれないか

何処か遠くに行ってくれないか

愛なんて要らない 
心の奥は冷たいままでいい

君が愛してくれなければ
僕の存在なんて無いと同じ

ポケットに隠した愛と

愛するが故の代償と 

全てを終わらせる さよならと

奪いに来てよ 何もかも
全てを壊してあげるよ 君の為に

綺麗な景色が見たいんだ 

優しい歌が聴きたいんだ

もう何も見たくない
聴き

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古い手紙 《詩》

古い手紙 《詩》

「古い手紙」

僕は探しものをしていた 

とても大切なものだった

だけど 
それは何処にも無くて

今では
何を探していたのかも思い出せない

古い手紙の様なものだった 
そう思う

辺りはすっかり秋の匂いがしていた

夕焼けだけがとても綺麗だった

僕は土曜日の夜にしか会えない
女の事をぼんやりと考えていた

小さな約束 《詩》

小さな約束 《詩》

「小さな約束」

蝶の鱗粉が舞う 

時折吹く海からの風が
丘の斜面を駆け上がり
小さな花を揺らした

沢山の香り 

沢山の哀しみと夢 

沢山の微笑みと涙 

沢山の温もり

沢山の約束が消えて行った

振り返ると大きな木が
あの日と同じ様に立っている

地面に根を下ろして 

時の流れなど無い様に

僕はまた 何処までも歩き続けた

消えた約束を独り抱きしめて

あの時の想いも
運を運ぶ言葉

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エンディング テーマ 《詩》

エンディング テーマ 《詩》

「エンディング テーマ」

薄い残照 
風の音が全てを覆う

死にかけた季節がゆっくりと去り

スチールの花は永遠に微笑み続ける

光と闇が混じり合う時

致死量に値する薬を机の上に並べた

正しく産まれて来たのなら
正しく死ぬ事は罪では無いはず

完成された完璧な旋律は何処にある

そして僕等は
エンディングテーマを探した

Photo : Seiji Arita

檻の中 《詩》

檻の中 《詩》

「檻の中」

今 目に見えているものが
全てだと思った

本物だとそう信じていた

とても綺麗だった

だけど近づいてみると
望んでいたものとは違ったんだ

正論や一般論を並べ立て

これが正義だと
高く天にかざし勝ち進む

誰かの心を台無しにしてまで

小さな枠組み檻の中で

勝者も敗者も無く
誤ちだとも気付かないまま

忘れたい事が沢山あって
何ひとつとして忘れられない

誰かがいつか 

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欠けた太陽 《詩》

欠けた太陽 《詩》

「欠けた太陽」

地面に音も無く降り積もる光

ただぼんやりと眺めていた

やがて不透明なヴェールが
空の青を侵食して行き

大気が幾つもの
起伏となり軌道を超えた

彼方の空に
白い線が入ってゆくのが見えたんだ

僕は頭を撃ち抜かれ

欠けた太陽の陽だまりの中に
独りうずくまる

遥か先にあるであろう

重なり合う緑の森を夢見ていた

九月の風 《詩》

九月の風 《詩》

「九月の風」

時の彼方から吹き込む九月の風

混じり合った何種類ものピース

そんな物でこのパズルは出来ている

繋がる事の無い断片と断片で
違和感を生み出す

別に私に名前が無くたって
誰も困らないわ

そう言って彼女は笑った

その時の笑顔と声が
今でも僕の中に眠ってる

入り口があれば出口もあるよ 
安心しなよ

僕は最後にそう付け加えた

九月の風はもう此処には居なかった

夏の夢 《詩》

夏の夢 《詩》

完璧な絶望と完璧な希望の狭間

風が流れを変換し交差する

夏の通り雨の様に静かに消え去る

嘘と罪と沈黙と真実の意味

夢を見たのは久しぶりだった

私 待つのは嫌いなの
彼女の口癖

僕等は
はっきりとした
海の香りを感じていた

そして夏の夢

チェリーソーダに混ぜたカルア 《詩》

チェリーソーダに混ぜたカルア 《詩》

「チェリーソーダに混ぜたカルア」

堕落した街に雨が降る

濡れたDr.Martin

ポケットに突っ込んで隠した言葉

ブラウンの瞳 

不協和音の中

乱れ踊る水玉模様 ワンピース

透き通ってた光は跳ね返り
屈折し歪み堕ちる

お前の宇宙に触れた汚れた指先

唇を噛み切る様な痛いキス

チェリーソーダに混ぜたカルア

遊び場を見つけた
子供の様に笑ってた

もっと淫らに狂いなよ

どうせ雨

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小さな恋の物語 《詩》

小さな恋の物語 《詩》

「小さな恋の物語」

命を繋いだ細くて
綺麗な糸が切れるまで

ギターの弦に似た美しさ

奏でる想い 
君からの手紙の様

破滅型の詩人がくれた
天高く舞う翼

ずっと言葉の中で遊んでいたい

君と一緒に

小さな街の小さな夜

小さな恋の物語

この細くて綺麗な糸が切れるまで

街風 《詩》

街風 《詩》

「街風」

弱さを吐き出した世界の片隅

孤独を抱きしめた夜の真ん中

それでもまだ

届くはずの無い星 仰ぎ見た僕等

大切な言葉ひとつ 
上手く君に伝えられずに

僕を置き去りにして時は逝き

溺れそうな夜に記憶を辿る

君が僕にくれた言葉全てが 
消えてゆく

この街に吹く風が連れ去った星 

それでもまだ

成れの果て 《詩》

成れの果て 《詩》

「成れの果て」

飼い慣らした犬 

鎖は離さない

金より女より良いもん見たいだろう

邪魔するなよ 

逃げ道は彼方 

どうぞご勝手に その先 墓場

カチ込む修羅場 花は咲いたか

知らん顔してディスるメンション

俺には見える成れの果て

回りくどい話しはしない 

やりたい事やって死ね

カクテル 《詩》

カクテル 《詩》

「カクテル」

夜の右手 

差し出したカクテル

シェイカーの中 愛と憎しみ

メジャーカップ溢れ出した嘘

青白い輝き 君の瞳に似てる

溶け始めたブライアンジョーンズの
ホワイトティアドロップ

SEX & DRUG & R’N’R
誰かが歌ってた遠い昔

静かに柔らかに優しく

カクテルグラスに口づけ

世界の終わりを待ちながら

そして あの娘は詠う

幸せの詩を