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#日記

今日が終わるときっと消えてしまうから、書いておきたいことがあります。

今日が終わるときっと消えてしまうから、書いておきたいことがあります。

日が長くなってきました。

仕事を終えた家路、空に瞬き始めた星を見つけることが楽しみだった12月は、慌ただしく過ぎ去っていきました。いつもより暖かい冬の日、見上げると帰り道の空は、橙色と紺色が陣取り合戦を始めているところでした。

12月を終え、1月が始まり、私は昨日あったものが今日も同じようにあるとは限らないことを再び教えられました。誰かの犠牲の上で学ぶことは胸が苦しく、そして悲しいと感じます。

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空洞と波紋

空洞と波紋

ぽこん

体の中から音がした

理想と現実のその隙間
何やら怪しげな空洞ひとつ

空洞は

飯を食っても
酒を飲んでも
肌を合わせても
本を読んでも
歌を歌っても

何をしたって空洞のままだ

涙を堪え
ぎゅっと瞑り
再び体内へ
帰ってゆく涙が

ぽとん

体の中に反響して
波紋が広がって

少しだけ許される気がした

誰も責めてなんかいないのに

たまにどうしようもなく泣きたくなるような時があっ

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夏の終わり、秋の気配。

夏の終わり、秋の気配。

手を伸ばしても届きそうにないほど
遠くに行ってしまった

あんなにも近くにいたのに
高く高くのぼってゆく

私はそれを追いかけることなどできなくて
ただ深呼吸をするだけ

吸い込んだ空気に
金木犀の甘やかな香りをはらんでいるのを感じ
ああ、新しい季節が始まるんだと知った

見上げればどこまでも高い空は
雲を敷き詰めて

あなたはあの雲の上を軽々と飛んでいくのでしょう

私はあの雲がどこまでもどこま

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青いままで

青いままで

空も海も青いなら

私だって青いままで

いいじゃないか

うつむいた先の手には、小枝。

うつむいた先の手には、小枝。

「何しよーと?」

うつむいた息子の手には、必ず小枝があって。
その小枝で地面にお絵かきをしていた。

私も一緒になって、その小枝で絵を描いて。

さらさらとした黄土色の土を、小さな小石を、掻き分けるように、小枝は進む。

我が名はモーセ。
振り下ろした小枝が、公園の土を割ってゆく。
息子の喜ぶ顔が見たくて、右に左にと小枝はゆく。

アンパンマンにバイキンマン。
なぜかカレーパンマンは上手に描けな

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夕焼けも、朝焼けも。

夕焼けも、朝焼けも。

「いってらっしゃい」

ドアを開けて、夫を送り出す。
我が家の玄関は東向き。

たまに、ドアの向こう側から、近所のマンションの隙間をぬって、朝焼けが顔を出す。

朝焼けが見れた日は、すごく気持ちがいい。
得をした気分になる。

朝焼けは雨、なんて言うけど、気にしない。

雨は降る時は降るし。
雨が降らないと困るし。
雨が降ったら、傘をさすか、レインコートを着ればいいだけのこと。

そんなことより、

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詩|monochrome

詩|monochrome

あいちゃんは
行ってみることにしました
生まれて育った家に

遠足気分でたどり着いた家には
思い出がいっぱいありました

かえるの鳴き声
綺麗な星空
草のにおい
喧嘩したこと

子どものころの思い出がいっぱいです

寂しいできごともありました
しあわせなできごとを
少しだけ
背中を
そっとおすように思い出しました

立ち上がればこんなに色んなものが
小さかったのだろうかと思いました

冷たい水で

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詩|夏のはじまり、線香花火。

詩|夏のはじまり、線香花火。

鼻をくす
ぐる火薬
の匂いが
次第に薄
くなって
いく。火
をつけは
じめた時
の高揚感
も、次第
に鎮火し
て、もう
花火も終
わりを迎
える。ま
だ夏のは
じまりな
のに、胸
がぎゅっ
っとなる
線香花火
を一緒に
しようと
一本ずつ
手に持ち
どちらが
長持ちさ
せられる
かと勝負
を持ちか
けた。こ
の間に想
いを伝え
るんだ。
ご め ん と 申
し わ  け

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詩|ファスナーを、脱ぐ。

詩|ファスナーを、脱ぐ。

口にファスナ
ーを縫いつけ
ていれば、余
計なことを喋
らなくていい
人に文句も言
われないし、
このままずっ
とファスナー
生活でもいい
家に帰ってフ
ァスナーを開
けて、酒を煽
って、やっと
解放される。
でも、これが
大人ってもん
なんでしょう
大人に なんて
なりた くなん
てなか ったけ
どなっ てしま
った。 いつの
まにか 口につ

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詩|MONDAY

詩|MONDAY

明け方になると
いつも漏れてしまうのは
うんざりするようなため息

エアーポケットに
落ちてしまった週末の高揚感は
考えられないほどに
危機的な月曜日を演出する

クラゲのように漂う
倦怠感は
この週末が
攫っていった
幸せの残骸

吸い込んでしまった
世界中の憂鬱を
そっと胸に閉じ込めたせいで
立ち上がる気力も湧かず
力なくソファに横たわっている

つむじ風が
テコでも動かない憂鬱を
飛ばしてく

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詩|ささくれに、土がしみる。

詩|ささくれに、土がしみる。

さらさらと指の間からこぼれ落ちる
掴んではいけない、掴まない。流れ
ゆくまま眺めるだけ。止まらない
し、止められない。それは等し
く平等に。逆らわない、抗わ
ない。抗えば気づかぬうち
に溺れてしまうかもしれ
ない。けれど、溺れて
息もできず、もがき
続ければもしかし
て私も知らない
どこかに流れ
つくのだろ
うか。こ
こでな
いど

かへ
辿り着
いたどこ
かは、私の
目的地なのだ
ろうか。そん

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詩|波乗りジャジー

詩|波乗りジャジー

寄せて
は返す波
に、僕はい
つ乗ることが
できるのだろうか
寄せた時か返す時か僕
にはそれすらわからない。波
に乗り気持ちよさそうに泳ぐ人達
を眺めながら、僕は一人砂浜に佇
むだけなのだ。しかし、この
場所に長くいすぎた。
足が埋もれて動く
ことができな
い。僕は波
にも乗
れず、
どこに
も行くこ
とができない。
水平線を見つめ、
波がない海があるこ
とに今さら気づく。こん
なに穏やかな海もあ

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詩|Candy

詩|Candy

飴細工みたく
生きてみたかった

宇宙をアメに閉じ込めて
えいやと噛じったら
おなかいっぱいに
悲しみが広がって
綺麗な涙が
空気に溶けちゃうような

結晶化した悪夢をアメに閉じ込めて
こなごなに砕いたら
サーカスが現れて
シュールな曲芸中に
スコールが降って
世界が水浸しになっちゃうような

底なしに
楽しそうなことだけアメに閉じ込めて
ちょっとずつ舐めてたら
つまらなくなって
手がベタベタにな

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詩|枠の中には、いたくない。

詩|枠の中には、いたくない。

枠に収まるのを嫌がって自由なフリをする。でも案
外、枠に収まりながら、枠の中で遊べる人が自由じ
ゃないかって思ったりする。だって彼らの心はいつ
も、枠の中に  はなく思考も
心も枠の外に あって。だけ
どあえて枠の

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