坂木陽介

小説家志望。現在、AmazonにてオリジナルSF小説『宇宙駆ける者』をKindle出版…

坂木陽介

小説家志望。現在、AmazonにてオリジナルSF小説『宇宙駆ける者』をKindle出版中。存命の方には敬称付き、故人には敬称略としております。 『宇宙駆ける者』Amazon商品ページ https://amzn.asia/d/cR4g1AO

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  • 思春期の水曜日

    毎週水曜日に更新中の『思春期の水曜日』のまとめになります。

記事一覧

思春期の水曜日 其二八

 学級委員二人のラブラブ登校から始まった騒乱も、一区切り付いた。朝には話が独り歩きし、昼には一波乱あり、放課後には終息した。紆余曲折したが、最終的には学級委員の…

坂木陽介
1日前

思春期の水曜日 其二七

 動画を見終えてすぐ、あたしは教室を飛び出した。いなくなった女子学級委員の行き先はわかる。彼氏がヤンキーをボコした体育館裏だ。自分への虐めより、付き合っている相…

坂木陽介
8日前

思春期の水曜日 其二六

 スマホでのカメラ撮影が趣味の男子が、昼休みに続いて教室内を騒然とさせた。人数のまばらだった教室内の全員が、男子の周りに殺到した。俺もゆっくり、頭を掻きながら人…

坂木陽介
2週間前

思春期の水曜日 其二五

 ホームルームも終わった放課後、私たちは女子学級委員を囲んで立っていた。本当は男子も巻き込み、男女両方の学級委員をさらし者にしたかったが、男子学級委員はいつの間…

坂木陽介
3週間前

思春期の水曜日 其二四

 女子たちが同性の学級委員を虐め始めているのは、男のオレにもわかった。原因が、彼氏がヤンキーにケンカで負けたからだという事も。  全く理解できない。三対一のケン…

坂木陽介
4週間前

思春期の水曜日 其二三

 随分と格好悪い彼氏を持った。それが私の正直な感想だった。女子がこぞって学級委員に難癖つけ始めたのも当然である。女の序列は彼氏の能力や容姿で決まるからだ。  女…

坂木陽介
1か月前
1

思春期の水曜日 其二二

 昼休み終了と同時に、学級委員は別々に、二人とも教室に戻ってきた。そして何事もなかったかの如く、教師がやってきて授業が始まった。  しかし、女子たちのひそひそ話…

坂木陽介
1か月前

思春期の水曜日 其二一

 昼休み終了間際、女子の学級委員が教室内に戻ってくると、女子たちは一斉に白い目を向けた。無敵の学級委員も数多の威圧的視線にたじろいだ。  ただ、問題となった映像…

坂木陽介
1か月前

思春期の水曜日 其二〇

 青天の霹靂だった。学級委員カップルの話も徐々に静まってきた昼休み、俺はスマホで衝撃的な場面を撮り、教室に戻った。 「大変だ!男の学級委員がヤンキーにボコられた…

坂木陽介
1か月前
2

思春期の水曜日 其一九

 一限の数学が終わった。噂話が駆け巡る時間は、少しずつ冷めていっている。短時間での、次の授業の準備やトイレを済ませる必要に追われ、学級委員に群がる人波もなくなっ…

坂木陽介
2か月前

思春期の水曜日 其一八

 前席の女子が、学級委員との紙片のやり取りで一喜一憂している。  他人の恋路に一喜一憂するなんて、くだらなくて幼い――――とは言えない。おれも、一喜一憂した人間…

坂木陽介
2か月前
1

思春期の水曜日 其一七

 学級委員の二人に質問攻めをかけた、私も含めた生徒は、程なく教室にやってきた数学教師の一喝で席に戻った。 「何してるんだ?早く着席するように!」  私も渋々席に戻…

坂木陽介
2か月前

思春期の水曜日 其一六

 隣席の男子がとてつもなく変な題名の本を読んでいる。しかもそれでいて、題名だけは知っている小難しい本なのは理解できる。普段から怪しい振る舞いの目立つ異性であるが…

坂木陽介
2か月前
1

思春期の水曜日 其一五

 進路希望になんと書いていいか、僕には全く見当がつかない。学力も平均、対人関係も苦手、打ち込める趣味や、他者に抜きん出た特技等々も持ち合わせていない。  しばし…

坂木陽介
3か月前
4

思春期の水曜日 其一五

 進路希望になんと書いていいか、僕には全く見当がつかない。学力も平均、対人関係も苦手、打ち込める趣味や、他者に抜きん出た特技等々も持ち合わせていない。  しばし…

坂木陽介
3か月前

思春期の水曜日 其一四

 進路希望記入用紙が配られて、何人かは迷わず説明途中でも記入している。しかし大半の人間は用紙と教師の顔を交互に見ていた。  俺はこれといった進路希望が思いつかな…

坂木陽介
3か月前

思春期の水曜日 其二八

 学級委員二人のラブラブ登校から始まった騒乱も、一区切り付いた。朝には話が独り歩きし、昼には一波乱あり、放課後には終息した。紆余曲折したが、最終的には学級委員の万人への絶対的優位は変わっていない。初めから、何もなかったかのようだ。
 教師たちも、何事もなかったように振る舞っているが、あれは大人として許されるのか?昼過ぎには学級委員二人に明らかな虐めが発生したが、教師は見て見ぬふりだった。こんな感じ

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思春期の水曜日 其二七

 動画を見終えてすぐ、あたしは教室を飛び出した。いなくなった女子学級委員の行き先はわかる。彼氏がヤンキーをボコした体育館裏だ。自分への虐めより、付き合っている相手の心配を優先するのが、彼女らしかった。
 あたしは友人も、友人の彼氏も心配だった。だから反射的に、教室を飛び出したのだ。余計なお世話かもしれない。しかし体が動いていた。友情を、感じていたから。
 しかしその思いは裏切られる事となる。心配で

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思春期の水曜日 其二六

 スマホでのカメラ撮影が趣味の男子が、昼休みに続いて教室内を騒然とさせた。人数のまばらだった教室内の全員が、男子の周りに殺到した。俺もゆっくり、頭を掻きながら人混みに近づいた。
 元々、おかしいと思っていた。昼休みに、何故ヤンキー如き三人に――――
 背の高いおれは、人混みの後ろから、撮影された動画を見た。三方向から同時に迫られながら、男子学級委員は鮮やかに三人をさばき、脛やみぞおちに一発ずつ打撃

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思春期の水曜日 其二五

 ホームルームも終わった放課後、私たちは女子学級委員を囲んで立っていた。本当は男子も巻き込み、男女両方の学級委員をさらし者にしたかったが、男子学級委員はいつの間にかいなくなっていた。彼氏に見捨てられた女子学級委員は、席に着いたまま、四方から囲む私たちを見上げていた。居心地は悪そうだ。
「あんたの彼氏、あんなザコだったの?」
 私の友人は、学級委員を責めた。
「はぁ〜、いい気味だわ。普段から、アンタ

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思春期の水曜日 其二四

 女子たちが同性の学級委員を虐め始めているのは、男のオレにもわかった。原因が、彼氏がヤンキーにケンカで負けたからだという事も。
 全く理解できない。三対一のケンカで勝つのがどれほど難しいか。ちょっとやそっと殴られた程度で怒らない事がどれ程格好良いか。付き合っている相手の心配で手一杯な人間を虐めるのが、どれ程みっともないか。どれ一つとして、虐めに加担する人間は理解していない。その事が理解できなかった

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思春期の水曜日 其二三

 随分と格好悪い彼氏を持った。それが私の正直な感想だった。女子がこぞって学級委員に難癖つけ始めたのも当然である。女の序列は彼氏の能力や容姿で決まるからだ。
 女子学級委員は、ため息をついて俯いている。いたたまれなさが、周囲にまで影響しているようだ。斜め前の席に座る学級委員の仕草は、全て見えていた。その心中も察しがつく。今回の事で女子カーストの頂点から転落して焦っているのだろう。
 授業中、私は学級

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思春期の水曜日 其二二

 昼休み終了と同時に、学級委員は別々に、二人とも教室に戻ってきた。そして何事もなかったかの如く、教師がやってきて授業が始まった。
 しかし、女子たちのひそひそ話は止むことがない。おれが男だからなのか、女子たちの態度や話しぶりは理解できない。別に誰が誰と付き合おうと、そして何か起ころうと、何を気にするのかと思う。女子たちのカーストは、スクールカースト全体からもはみ出る異常さを感じる。
 おれの恋は敗

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思春期の水曜日 其二一

 昼休み終了間際、女子の学級委員が教室内に戻ってくると、女子たちは一斉に白い目を向けた。無敵の学級委員も数多の威圧的視線にたじろいだ。
 ただ、問題となった映像を見るやいなや、学級委員は急いで教室を出ていった。
 わたしたち女子は、一斉に学級委員の悪口で盛り上がった。
「あの天下無敵の学級委員が選んだ男が、この程度だったなんてね〜」
「運命の人、みたいに言っていたのも、虚しく聞こえるよね」
「ほん

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思春期の水曜日 其二〇

 青天の霹靂だった。学級委員カップルの話も徐々に静まってきた昼休み、俺はスマホで衝撃的な場面を撮り、教室に戻った。
「大変だ!男の学級委員がヤンキーにボコられた!」
 教室内は一瞬静まり返り、その後騒然として皆が俺の周りを取り囲んだ。俺はスマホの動画を再生し、級友たちに一部始終を見せた。三人のヤンキーに囲まれる男子学級委員。飛びかかってきた一人の攻撃をかわしたが、膝蹴りで相手の顔を蹴ろうとして思い

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思春期の水曜日 其一九

 一限の数学が終わった。噂話が駆け巡る時間は、少しずつ冷めていっている。短時間での、次の授業の準備やトイレを済ませる必要に追われ、学級委員に群がる人波もなくなった。
 しかし、あたしもあのメモを見せられた時は何も言えなかった。

 生まれる前から

 まさに運命の人、と自信満々に誇る学級委員の姿に、驚きを通り越して絶句した。
 国語の授業の準備をして、あたしは空想に耽った。運命は生まれる前から決ま

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思春期の水曜日 其一八

 前席の女子が、学級委員との紙片のやり取りで一喜一憂している。
 他人の恋路に一喜一憂するなんて、くだらなくて幼い――――とは言えない。おれも、一喜一憂した人間の一人だ。何故なら、おれも女子学級委員に恋していた者だからだ。手を繋いでの登校風景を見て、おれは傘を落とし、しばらく呆然として動けなかった。雨に濡れ、涙を流し、立ち尽くした。同じ思いを味わった生徒は、男女双方に何人もいたはずだ。
 あの二人

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思春期の水曜日 其一七

 学級委員の二人に質問攻めをかけた、私も含めた生徒は、程なく教室にやってきた数学教師の一喝で席に戻った。
「何してるんだ?早く着席するように!」
 私も渋々席に戻ったが、女子学級委員の隣席なのを利用しようと考えた。真面目な学級委員に、授業中にLINEを送っても見てはもらえない。タブレットでショートメッセージを送っては、記録が残ってしまう。ここは昔ながらの、紙片にメッセージを伝える方法を用いた。

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思春期の水曜日 其一六

 隣席の男子がとてつもなく変な題名の本を読んでいる。しかもそれでいて、題名だけは知っている小難しい本なのは理解できる。普段から怪しい振る舞いの目立つ異性であるが、正直近寄り難い。席替えで隣になった時はいまいち人となりが掴めなかったが、実際に近づいて余計混乱していた。
 既にホームルーム終了のチャイムが鳴り始め、教師は慌てて話を切り上げた。そしてそそくさと教室を出ていった。ざわめきは復活し、皆はお喋

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思春期の水曜日 其一五

 進路希望になんと書いていいか、僕には全く見当がつかない。学力も平均、対人関係も苦手、打ち込める趣味や、他者に抜きん出た特技等々も持ち合わせていない。
 しばしば「スクールカースト」なる単語を耳にする。しかし僕は、カーストの中にさえいない。いてもいなくても、他者に何の影響も与えない幽霊の如き存在だ。外へも内にも、何もないのと同じである。
 学級委員の噂話も、僕に話しかける人はいない。僕から話しかけ

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思春期の水曜日 其一五

 進路希望になんと書いていいか、僕には全く見当がつかない。学力も平均、対人関係も苦手、打ち込める趣味や、他者に抜きん出た特技等々も持ち合わせていない。
 しばしば「スクールカースト」なる単語を耳にする。しかし僕は、カーストの中にさえいない。いてもいなくても、他者に何の影響も与えない幽霊の如き存在だ。外へも内にも、何もないのと同じである。
 学級委員の噂話も、僕に話しかける人はいない。僕から話しかけ

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思春期の水曜日 其一四

 進路希望記入用紙が配られて、何人かは迷わず説明途中でも記入している。しかし大半の人間は用紙と教師の顔を交互に見ていた。
 俺はこれといった進路希望が思いつかない。劇団所属の級友や、理系のテストで満点を取り続ける物理学者志望の女子もいる。そんな連中と比べて、俺には何がある?

 何もない。

 そう結論するしかなかった。ただ惰性で、その場限りの楽しみに耽って生きている。それを省みると、自分が情けな

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