思春期の水曜日 其一六

 隣席の男子がとてつもなく変な題名の本を読んでいる。しかもそれでいて、題名だけは知っている小難しい本なのは理解できる。普段から怪しい振る舞いの目立つ異性であるが、正直近寄り難い。席替えで隣になった時はいまいち人となりが掴めなかったが、実際に近づいて余計混乱していた。
 既にホームルーム終了のチャイムが鳴り始め、教師は慌てて話を切り上げた。そしてそそくさと教室を出ていった。ざわめきは復活し、皆はお喋りしながら一限の準備を始めていた。教科書は机の上に出して、私は着席したままぼんやりしていた。
「――――ん、――――ちゃん」
「ん?なに?」
 ぼーっとし過ぎて、名を呼ばれているのにすぐ気づけなかった。月のものが来ている時にはどうも参る。
「ちょっと、トイレ行こう?」
 女子お得意の「集団トイレ」である。断ると後が怖いので、私は席を立って友人に倣った。
 学級委員は女子も男子も、囲まれて質問攻めに遭っている。スクールカーストの頂点に君臨する二人も、この時ばかりはうんざりしていそうだった。 

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