『創造性を創造するチョコレート』AFKy
「行き詰ったら何をしますか?」
この質問に、あなたはなんと答えるだろうか。
コーヒーを飲む。散歩をする。
おそらく様々な答えが返ってくることだろう。
いつのまにか身につけた行き詰まりの打開策は、それすらも日常の一部になっている。
気分転換。
ついさっきまで思い悩んでいた物事を振り払って、別の物事に意識を切り替えること。
何気なく使っている言葉だが、一時離脱する先はどっぷり浸れる何かでなくてはいけない。
しがみつくように考えていた物事から自分を振りほどいてくれる、それだけの深みが必要だ。
打開策が人によって異なるのも、人によって浸れる物事が異なるから。
自分にとって最適なやり方がまだどこかに眠っているかもしれない。
新しい方法を、一度試してみてはどうだろうか。
それでは気分転換に、チョコレートを一粒。
悩んでいた問題から私たちを切り離し、刺激を与えて目覚めさせる。
ただ逃げるのではなく、ブレイクスルーを引き起こすために距離を取る。
『AFKy』のチョコレートは休憩にぴったりな一品だ。
チョコレートってシンプルだ。
『AFKy』を立ち上げた田村昂佑さんの本業は、IT企業の会社員。
事業開発、マーケティング、経営戦略、採用人事と多岐に渡る業種を経験してきた。
こだわりのこもったチョコを食べては紹介し、自らチョコを売る側にもなった田村さん。
実は、最初からチョコが好きだったわけではない。
むしろ苦手ですらあったという。
「チョコレートは得意ではなかったです。薄味で素朴なもの、シンプルな料理を昔から好んで食べていたので。チョコレートは得体の知れない感じがあって、油っぽさや甘さを受け付けないところがありました」
田村さんの苦手意識を変えたのは、チョコレート作りのワークショップだった。
使う材料はカカオ豆と砂糖だけ。
完成したチョコを口にして、衝撃を受けた。
「めちゃくちゃさっぱりしてたんです。豆の個性もそのまま反映されていました。チョコレートはこの世で一番シンプルな食べ物なんじゃないかと、このとき思いましたね」
「いろいろなものを削ぎ落した方が人生はクリアになる」と田村さんは話す。
シンプルな生活への徹底は食だけに留まらない。
着るブランドはVivienne Westwoodのみ、家の中はホテルのように物が少ない。
ライフスタイルをシンプルに構築して、機能面でも性格面でも生きやすい暮らしを追求している。
そんな田村さんが提案するのは、チョコレートによる休憩。
ブランド名『AFKy』はIT業界などで使われる用語、「AFK」=「Away From Keyboard」に由来している。
「キーボードから離れる」という語の意味の通り、休憩を表す言葉だ。
企画立案も担う仕事柄、考え事をしている時間が多いという田村さん。
壁にぶつかったら、限界まで考えに考え抜いてから休憩を取る。
いいアイデアは、いつだって休憩中に受けた刺激から生まれる。
「執着して悩み続けても答えは出ません。だから休憩が必要なんですが、同じレベルで深く考えられるものの方がいいと考えています。休憩でコーヒーを飲むとして、豆からこだわれば味や香りに意識を没入させられる。嗜好品はクリエイティブに満ちていて、チョコレートもその役割を担えると思うんです」
ビーントゥバーと呼ばれる、カカオ豆の個性を引き出すように作られたチョコレート。
無駄を削って洗練されたその食品には、引き込もうとするほどの深みが宿る。
「カカオ豆の加工品、カカオマスで作られるチョコの多くは素材の個性を消し去ってしまっていると感じます。味や香りが違うのは付け加えた何かの影響ですし。豆それぞれの個性を活かしてチョコを作る。食べたとき自分らしさに立ち返れる、個性を潰さないチョコレートはそうすることで作れると思います」
田村さんは「本来、個性って削ぎ落して見えていくものですしね」とも語った。
シンプルは個性を形成し、それはイノベーションにも結びつくようだ。
ストイックな休憩、退屈な休憩。
休憩にも種類がある、というのが田村さんの持論。
どんな時間を過ごすかが創造性にも繋がってくるそうだ。
「ストイックな休憩と退屈な休憩があると思うんです。例えば映画を見ていて、話の起伏や伏線まで俯瞰的に掴み取ろうとするのがストイックな休憩。一方でSNSをだらだら眺めてしまうのが退屈な休憩。創造性を高めるのはストイックな休憩です」
息抜きと称して逃避すると返って疲れるのは、休憩の仕方が悪いからだと田村さんは考える。
クリエイティビティに還元されない休憩では、消費することだけに時間を費やす。
身体や頭を休めながらも、自分の中に何かを生み出すのが休憩において重要だ。
このときのクリエイティビティとは、実際の創作活動に働く力だけを指すものではない。
まったく新しい着想を見出すこと。
いままでなかった解釈に辿り着くこと。
画期的なひらめきは待っているだけでは降ってこない。
外部からの刺激を貪欲に求める姿勢こそが、行き詰まりの突破口となるのである。
「休憩時間をどう過ごすかは自分次第ですよね。SNSを眺めることだって情報を率先して回収しようとすればインプットになりますし。どんなものにも仕組みがあって、紐解いていけば新しい世界が見えてくる。そういうものを読み取って、自分の中に落とし込んでいく。そこから触発されて新しいアイデアが生まれる。いろんなものが繋がって新しいものが生まれるのって、面白いじゃないですか」
連続する創造の、最初のきっかけに『AFKy』がいてくれたら。
そう願って、田村さんはチョコレートを届けている。
「神の食べもの」で創造性を得る。
『AFKy』では、産地の異なるカカオ豆から作った三種類のチョコレートを販売中。
「Natty,Nutty!!」は日本でもお馴染み、ガーナの豆を使った王道チョコ。
田村さんによると、ガーナの豆は没個性的でヨーロッパ圏では避けられがちだという。
「ナッティ」と読める単語のうち、「Natty」は「粋な」、「Nutty」は「ナッツ」を表す。
ザクザクしたカカオニブを練り込んだこのチョコは、ガーナチョコの中でも粋であれという想いが込められている。
「パジャマパーティー」はフルーティな甘さが特徴のタンザニア産カカオを使用。
カカオと一緒にバニラなどを育てることで生まれる風味なのだそうだ。
タンザニアでは独自の音楽が発達しており、明朗な歌と舞踊が文化の中にある。
混沌としながらも楽しい夜のイメージが名前に表現されている。
「今宵はスモーカー」の豆の産地はカリブ海に浮かぶ島国、トリニダード・トバゴ。
トバゴ産カカオは「トリニタリオ種」とも呼ばれる珍しい品種で、燻製したような癖がある。
その理由は適度な潮風によるストレスと、一緒に育てるオレンジの酸味。
トリニダード・トバゴでしか生まれない味をどうかご賞味あれ。
最後に、田村さんはチョコレートと創造性にまつわる話を教えてくれた。
カカオの正式名称はテオブロマ・カカオ。
テオブロマとは「神の食べもの」という意味。
南米で食べられていたカカオ。その油分は30度前後で急速に溶け始める。
かくして口に含んだ瞬間に体温で溶けるカカオを、「神が人間のために創った食べもの」と呼ぶ人もいる。
「知性を持つことが人間の種としての特徴。新しいものを創るスピードが速い。そんな人間のために創られた食べものって、すごくいいことが起こりそうじゃないですか。アイデアをひらめく瞬間は、ぎゅっと凝り固まったものがぶわっと広がる。突然溶けるチョコレートみたいに」
人間は何かを創り出すために生まれてきた。
しかし、行き詰っても大丈夫。
ひと休みして離れれば、離れた分だけ走り出せる。
そうすれば、次はもっと高いところへ跳べる。
ブランド情報
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執筆者: 廣瀬慎