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#読書感想文

『可愛い女』

『可愛い女』

『可愛い女』
チェーホフ著

美人で恋愛好きな主人公オーレンカが、その時々に出逢った人を、熱烈に愛して、彼らそれぞれの色に染まっていく。夫となる男達は、どういう訳だか、あっさり亡くなってしまう。その度に、抜け殻のようになってしまうオーレンカなのだけど、半年もしないうちに次の出逢いに夢中になっていくという非常に魅力的で可愛い女性の物語。トルストイは、オーレンカを、理想の女性だと称賛したらしい。

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『1984』

『1984』

『1984』
ジョージ・オーウェル著

1949年に発表されたいわゆるディストピア小説。

核戦争後の1984年の世界を舞台に、オセアニアという国家に住む主人公ウィンストン・スミスの日常が展開される。

ビッグ・ブラザーと呼ばれる党首が絶対的な権力を握り、テレスクリーンという監視器や思想警察によって人々の行動や思考が厳しく管理されてる。

ウィンストン自身は、党の都合に合わせて歴史や事実を改竄する

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『白痴 3』

『白痴 3』

『白痴 3』
ドストエフスキー著
亀山郁夫 訳

登場人物が多くて難解な作品で、ムイシユキン公爵、ロゴージン、イッポリートがナスターシアとアグラーヤという美女を巡る複雑な三角関係が展開される。

文章には独特の引力があって、理解が難しいものの、魅了される。 2度読みしているのに、なかなか理解が難しい。

愛情深く破滅的なナスターシア。
世界をひっくり返す美しさとされるアグラーヤ。

ムイシュキン公

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『マリーの愛の証明』

『マリーの愛の証明』

『マリーの愛の証明』
川上未映子著

マリーは「死ね」という言葉を使うことができなかった。もちろん口に出すことはできないし、頭で考えることもできない。そんなマリーはミア寮というところで暮らしている。最近別れた元恋人カレン(女性)から、自分のことを愛していたのか?と問われる。という話。

何だこれは⁇なのだけど、案外深い話なのだと思った。

キーワードとして、「虐待」,「愛情」で、検索してみた。そう

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『スタートライン』

『スタートライン』

『スタートライン』
喜多川泰著

『あなたが見たいと思う変化に、あなた自身がなりなさい』

『明日死んでしまうかのように生きなさい。そして永遠に生き続けるかのように学びなさい』

「向かい風が強いいうことは、前向いて走ってる証拠や。」

物語の冒頭に三連発の名言で始まる。

物語は大きくは五部構成で、主な登場人物は伊福大祐、長森真苗の二人。

第一部は、高校生18才の伊福大祐の目線で同級生の長森真

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『普請中』(ふしんちゅう)

『普請中』(ふしんちゅう)

『普請中』(ふしんちゅう)
森鴎外著

実録版、その後の『舞姫』と言われている作品。エリス来日の時にあったかもしれない話だと言われている。

登場人物はドイツ人女性と日本の官僚(渡辺)。渡辺がドイツに留学していた時、二人は恋人同士だったという設定。

普請中(改装中)のホテルで会食する二人なのだけど、男性の態度は冷ややか。そして、そのまま、女性は旅立っていく。という話。

物語のシーンとしては、そ

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『変容』(『丸の内魔法少女ミラクリーナ』その2)

『変容』(『丸の内魔法少女ミラクリーナ』その2)

『変容』(『丸の内魔法少女ミラクリーナ』その2)
村田沙耶香著

ザ村田沙耶香ワールド炸裂という感じで、なかなか面白い。

物語としては、どういうわけだか、"怒りのない"世界に入り込んでしまった主人公の真琴。周りの若者たちは、"怒り"というのは、大昔の人間の象徴だとばかりに、老人らの怒りの感情をサラッと受け流す。
何だ?これは、?という感じで物語は、進んでいく。

自分だけが、周りと違うという違和

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『伊豆の踊子』

『伊豆の踊子』

 『伊豆の踊り子』
川端康成著

これも、高校生くらいの時に読んだと思うのだけど、義務感で読んでいたもので、ほぼ、記憶がない。「天城越え」くらいかな、覚えているのは。

自伝的な小説らしい。
始めは、追っかけのように、旅芸人一家を追っかけまわしていたので、変態的な話かとおもっていたが、そうではないのだなあ。

恋愛的な側面もあるのだけれど、どちらかといえば、半分鬱でよくわからなくなっていた時、暖か

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『漫画方丈記 日本最古の災害文学』

『漫画方丈記 日本最古の災害文学』

『漫画方丈記 日本最古の災害文学』
鴨長明著

漫画なのですが、解説は、養老孟司さんが書かれていて、面白い。解説を読んだ後、方丈記のオリジナルが添付されていて、けっこう古典を味わえて良いと思った。

約1000年前、平安時代から鎌倉時代に移り変わる時期の話。
大地震があって、大火災があったり、遷都があったり、世の中の不安定な状況が、今に通じるものをかんじた。

「行く河の流れはたえずして〜」

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『盲目的な恋と友情』

『盲目的な恋と友情』

『盲目的な恋と友情』
辻村深月著

物語は、二部構成。
前半の主人公は、一瀬蘭花という、育ちの良い垢抜けた美女。蘭花の目線で語られる病的な恋愛感の話。後半の主人公は、傘沼留利絵という、外見にコンプレックスを持っている女性。その留利絵の病的な友情感の話。

その他の主な登場人物としては、
名木沢美波。彼女は、物語の中では、比較的軽く扱われる今どきの軽いノリの女性。そして、問題となる茂美星近は、イケイ

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『鎌倉駅徒歩8分、空室あり』

『鎌倉駅徒歩8分、空室あり』

『鎌倉駅徒歩8分、空室あり』
越智月子著

鎌倉を舞台とした、穏やかな、物語。様々な問題を抱えた女性たちが、寄り添って生きているのだけれど。

最後の落ちは、(途中から、もしかしたらってよぎった展開ではあったのだけど、)少し、考えさせられた。こういう人生、こういう親子関係だったのかあと涙した。

物語に出てくる、コーヒーやカレーの説明が、なかなか良かった。

私自身、毎朝のコーヒーは欠かさないのに

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『山椒魚』

『山椒魚』

『山椒魚』
井伏鱒二著

 山椒魚と岩屋って、知らずに選択してしまった人生ってことなのかなあと思った。

岩屋は〝壊れない〟し〝出ることができない〟それが、日常になる。

群れに縛られるメダカをバカにする。その点、山椒魚は、確かに自由だ。しかも、山椒魚には身の危険が無い。ただ、孤独なのだ。

そこに蛙が迷い込む。

最後に山椒魚が、死にゆく蛙に対して、「お前はどういうことを考えているのか?」と問う

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『木野』(『女のいない男たち』その2)

『木野』(『女のいない男たち』その2)

『木野』(『女のいない男たち』その2)
村上春樹著

「女のいない男たち」に含まれている短編の一つです。

これもなかなか、難解な文章の羅列が続いているので、じっくりと
キーワードを味わうのも面白いと思ったが、誰かに解説してもらいたいところだ。

主人公の木野は妻の不倫を目撃し、離婚。長年勤めた会社を辞め、バー「木野」を経営する。物語は「女」を失った「男」が、どうなっていくのか、ずらずら綴られてい

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『運転者』喜多川泰著

『運転者』喜多川泰著

『運転者』
喜多川泰著

「運が劇的に変わる時、場というのが、人生にはあります。」

「運はいいか悪いで表現するものじゃないんですよ。 使う・貯めるで表現するものなんです。 」

「周囲から運がいいと思われている人は、貯まったから使っただけです。」

自己啓発風な小説ですが、読みやすくて、わかりやすく、元気付けられる内容です。思っていた以上に、よい本でした。

クリスチャンの人だったら、
「いつも

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