マガジンのカバー画像

初めてのエッセイ5作

5
運営しているクリエイター

記事一覧

iphone7は7年使う

 私は、物を大切にする方だ。というよりも、長く使っているものがいくつかあるというのが正しいか。

 お気に入りのジーンズがある。こいつは、父が二十歳の時に買ったアルマーニのジーンズ。景気が良かったとはいえ、きっと頑張って働いて買ったのだろう。私はこいつを、中学二年の時に受け継いだ。お気に入りとはいったものの、丈が少し短い。父の身長を超えたのはいつだったろうか。たぶん、高校に入ったくらいだったと思う

もっとみる

仕事

 仕事はできたほうがいい。当たり前。できないよりはできたほうがいい。この当たり前を覆されたことがあった。

 昨年、大学院を休学していた私は、北海道のとある湖でカヤックのガイドをしていた。北海道での働き先はいくつかあったが、カヤックは本格的にはやったことがなかったし、楽しいイメージがあったのでここを選ぶことにした。
 4月に働き始め、最初はもちろん研修。いきなりお客さんなんて連れていけるわけがない

もっとみる

All is well 〜きっとうまくいく〜

 今でこそ大学院生なんていう立場にあるけど、高校三年の夏まではまともに勉強などしたことがなかった。中高六年間で借りた本の数は「 1」。英語の授業で持ち物だった和英辞典を忘れたから借りた。大学に行く気もあんまりなかったし、編入で他の高校に行こうかと思ったことさえあった(親に勧められた)。通っていたのは、中学の時から大学受験を意識した勉強を強いられる、意識だけは高い中高一貫校だったので、明らかに向いて

もっとみる

私が結婚するために

        

 初めて人に好きと言われたのは小学校の時。当時小学五年生だった私は、終礼後はいつもそのまま音楽室に向かう。五時過ぎまでラッパを吹いては怒られ、ヘトヘトで下駄箱へ行くと、そこにはラブレターがあった。見てすぐにラブレターだと認識できるような可愛らしい封筒に入ったそれは、書くか書かないか迷ったり、書き始めてからも何度も書き直したのだろうか。そんなことは今だから思うこ

もっとみる

婚活アプリをはじめよう

            

 初恋の話をしよう。2009年、私は恋に落ちた。

 中学二年だった私が、ロクでもない生活を送っていたことは「All is well」で読んでくれたものとする。暗くなるまで遊ぶ日々、何をするわけでもない学校生活、悪さを誘発する尾崎豊。その頃には、特技だったはずのピアノすらまともに弾くことができない、取り柄のない男。そんなどうしようもない私にも、一つだけ趣味があった。それ

もっとみる