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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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#新潮文庫

ライアー (大沢 在昌)

ライアー (大沢 在昌)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 この前久しぶりに大沢在昌さんの新宿鮫シリーズの最新刊「黒石 新宿鮫Ⅻ」を読んだところですが、本書はちょっと前の作品です。
 最寄り駅の書店で平積みされていて、帯をみるとちょっと変わった主人公のプロフィールだったので手に取ってみました。

 小説なのでネタバレにならないよう、感じたところを記してみると、大沢作品の中でもなかなかの力作の部類だ

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化生の海 (内田 康夫)

化生の海 (内田 康夫)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 かなり以前に読んだ内田康夫さんの “浅見光彦シリーズ” ですが、このところ、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみています。

 今回は、都道府県レベルですが、ひとつの作品で3ヵ所をカバーしています。“北海道” “石川・福井” “福岡” です。

 いずれの地も都道府県としては出張で何度も訪れていますが、

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老後破産: ―長寿という悪夢― (NHKスペシャル取材班)

老後破産: ―長寿という悪夢― (NHKスペシャル取材班)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 久しぶりに最寄り駅のショッピングモールに入っている書店をのぞいていて、タイトルが目に飛び込んできた本です。

 ここ数年、ほとんどテレビは観なくなりました。ともかく内容の酷さに閉口です。NHKもご他聞に洩れず、バラエティはもちろんニュース番組も劣化が酷いですね。何とかある程度のレベルで踏み止まっているのは数少なくなった「ドキュメンタリー番

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駅前旅館 (井伏 鱒二) 

駅前旅館 (井伏 鱒二) 

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 たまたまいつも行っている図書館の書棚で目につきました。

 久しぶりに、誰でも知っているようなちょっと昔の有名作家の作品を読んでみようと思った次第です。
 とはいえ、そういったジャンルの本はほとんど手に取ったことがなく、井伏鱒二さんといっても、はるか昔の教科書からの知識で、「山椒魚」が代表作だというぐらいしか分かっていません。

 さてこ

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生きがい (茂木 健一郎)

生きがい (茂木 健一郎)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。

 茂木健一郎さんの著作は以前結構読んでいたのですが、このところちょっとご無沙汰でした。

 本書は、海外に向け英語で記されたものの翻訳版とのこと。そういった形態は新渡戸稲造の「武士道」を思い起こさせますが、イギリス留学の経験もある茂木さんが「生きがい」という概念をテーマにどんな

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ノックの音が (星 新一)

ノックの音が (星 新一)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 いつも行く図書館で日本文学の書架を眺めていた折に、たまたま目に留まった本です。

 星新一さんの著作は、わたしが中学生のころですから、今から50年ほど前にはよく読んでいました。この「ノックの音が」も1965年(昭和40年)の作なので当時読んだ記憶があります。

 ともかく星さんのショートショートは、プロットの巧みさ、独特の語り口に加え、と

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センス・オブ・ワンダー (レイチェル・L. カーソン)

センス・オブ・ワンダー (レイチェル・L. カーソン)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着書リストを覗いていて目に留まった本です。

 環境問題にいち早く警鐘を鳴らした書物として有名な「沈黙の春」の著者レイチェル・カーソンの遺作ということで手に取ってみました。

 幼いロジャーとともに自然溢れるメーン州の海岸と森を散策した様子を綴った小品です。
 エッセイのような体裁で、とても大切なレイチェルからのメッセー

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沈まぬ太陽 (山崎 豊子)

沈まぬ太陽 (山崎 豊子)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 日本監査役協会のオンライン講義で岡本浩一氏(東洋英和女学院大学教授)の講演を聞いたのですが、その中で「価値観の整備」のための参考図書として推薦されていました。

 以前から気になっていた著作ですが、かなりの大作なので手を付けるのに二の足を踏んでいたものです。
 日本航空をモデルにした物語で山崎豊子さんの代表作のひとつですね。小説なので、ネ

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自衛隊失格 :私が「特殊部隊」を去った理由 (伊藤 祐靖)

自衛隊失格 :私が「特殊部隊」を去った理由 (伊藤 祐靖)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 伊藤祐靖さんの著作は、以前「国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動」という本を読んだことがあります。

 今回の本は、いつもの図書館の新着書リストの中で目にとまったものです。
普段あまり気に留めていない「自衛隊」がテーマですが、先の伊藤さんの著作が結構興味深い内容だったので、こちらもちょっと期待しつつ手に取ってみました

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点と線 (松本 清張)

点と線 (松本 清張)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 ちょっと前に横溝正史さんのエッセイを読んでいて、その中に松本清張さんの名前が登場していたので、久しぶりに本棚から取り出してきました。
 読むのは3~4回目かもしれません。

 本作品は昭和32年から33年にかけて雑誌に連載されたもので、いわゆる “社会派推理小説” の先駆け的作品と言われています。横溝さんはそれより前、“怪奇的探偵小説”

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八甲田山 死の彷徨 (新田 次郎)

八甲田山 死の彷徨 (新田 次郎)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 新田次郎さんの代表作、もう40年以上経ちますが映画化もされた有名な作品です。私も以前から気にはなっていて、ようやく手に取ってみました。

 しかし、小説で読んだだけでも想像を絶する困難で無謀な雪中行軍だったのですね。途中の連絡手段も持たず、非常事態時の救出プランもないままに、真冬の八甲田山踏破を試みさせるというのは理解不能です。確信犯的な

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運を天に任すなんて ― 人間・中山素平 (城山 三郎)

運を天に任すなんて ― 人間・中山素平 (城山 三郎)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 この前、西和彦さんの「反省記」という本を読んだのですが、その中で西さんの生き方に大きな影響を与えた人物として中山素平さんが紹介されていました。

 本書は城山三郎さんによる「中山素平さんの評伝」です。

 中山素平(1906年(明治39年)3月5日 - 2005年(平成17年)11月19日)さんは、日本興業銀行頭取・経済同友会代表幹事等を

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東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (リリー・フランキー)

東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (リリー・フランキー)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 先日、いつか観たいと思っていた映画の方を先に観て、素晴らしい作品だと感動したので、今さらですが「原作」に立ち戻ってみました。

 小説なのでストーリーには触れませんが、こちらも良かったですね。

 内容は、リリー・フランキーさんの自叙伝ともいうべき小説で、たとえば、こんな自虐的?なフレーズにも(甚だ失礼ながら)納得感があります。

 確か

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建築家、走る (隈 研吾)

建築家、走る (隈 研吾)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 変わったタイトルの本ですね。
 今回の東京オリンピック開催にあたっての新国立競技場の設計者としても有名な隈研吾さんの自伝的エッセイです。

 建築家に至るまではオーソドックスなキャリアを歩み、主な経歴や実績だけを辿ると順風満帆のようにみえる著者の半生ですが、実際は、それこそ「走り回った」山あり谷ありの様相だったようです。
 そして、その過

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