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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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#新潮文庫

ノックの音が (星 新一)

ノックの音が (星 新一)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 いつも行く図書館で日本文学の書架を眺めていた折に、たまたま目に留まった本です。

 星新一さんの著作は、わたしが中学生のころですから、今から50年ほど前にはよく読んでいました。この「ノックの音が」も1965年(昭和40年)の作なので当時読んだ記憶があります。

 ともかく星さんのショートショートは、プロットの巧みさ、独特の語り口に加え、と

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センス・オブ・ワンダー (レイチェル・L. カーソン)

センス・オブ・ワンダー (レイチェル・L. カーソン)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着書リストを覗いていて目に留まった本です。

 環境問題にいち早く警鐘を鳴らした書物として有名な「沈黙の春」の著者レイチェル・カーソンの遺作ということで手に取ってみました。

 幼いロジャーとともに自然溢れるメーン州の海岸と森を散策した様子を綴った小品です。
 エッセイのような体裁で、とても大切なレイチェルからのメッセー

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沈まぬ太陽 (山崎 豊子)

沈まぬ太陽 (山崎 豊子)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 日本監査役協会のオンライン講義で岡本浩一氏(東洋英和女学院大学教授)の講演を聞いたのですが、その中で「価値観の整備」のための参考図書として推薦されていました。

 以前から気になっていた著作ですが、かなりの大作なので手を付けるのに二の足を踏んでいたものです。
 日本航空をモデルにした物語で山崎豊子さんの代表作のひとつですね。小説なので、ネ

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自衛隊失格 :私が「特殊部隊」を去った理由 (伊藤 祐靖)

自衛隊失格 :私が「特殊部隊」を去った理由 (伊藤 祐靖)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 伊藤祐靖さんの著作は、以前「国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動」という本を読んだことがあります。

 今回の本は、いつもの図書館の新着書リストの中で目にとまったものです。
普段あまり気に留めていない「自衛隊」がテーマですが、先の伊藤さんの著作が結構興味深い内容だったので、こちらもちょっと期待しつつ手に取ってみました

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点と線 (松本 清張)

点と線 (松本 清張)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 ちょっと前に横溝正史さんのエッセイを読んでいて、その中に松本清張さんの名前が登場していたので、久しぶりに本棚から取り出してきました。
 読むのは3~4回目かもしれません。

 本作品は昭和32年から33年にかけて雑誌に連載されたもので、いわゆる “社会派推理小説” の先駆け的作品と言われています。横溝さんはそれより前、“怪奇的探偵小説”

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八甲田山 死の彷徨 (新田 次郎)

八甲田山 死の彷徨 (新田 次郎)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 新田次郎さんの代表作、もう40年以上経ちますが映画化もされた有名な作品です。私も以前から気にはなっていて、ようやく手に取ってみました。

 しかし、小説で読んだだけでも想像を絶する困難で無謀な雪中行軍だったのですね。途中の連絡手段も持たず、非常事態時の救出プランもないままに、真冬の八甲田山踏破を試みさせるというのは理解不能です。確信犯的な

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運を天に任すなんて ― 人間・中山素平 (城山 三郎)

運を天に任すなんて ― 人間・中山素平 (城山 三郎)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 この前、西和彦さんの「反省記」という本を読んだのですが、その中で西さんの生き方に大きな影響を与えた人物として中山素平さんが紹介されていました。

 本書は城山三郎さんによる「中山素平さんの評伝」です。

 中山素平(1906年(明治39年)3月5日 - 2005年(平成17年)11月19日)さんは、日本興業銀行頭取・経済同友会代表幹事等を

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東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (リリー・フランキー)

東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (リリー・フランキー)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 先日、いつか観たいと思っていた映画の方を先に観て、素晴らしい作品だと感動したので、今さらですが「原作」に立ち戻ってみました。

 小説なのでストーリーには触れませんが、こちらも良かったですね。

 内容は、リリー・フランキーさんの自叙伝ともいうべき小説で、たとえば、こんな自虐的?なフレーズにも(甚だ失礼ながら)納得感があります。

 確か

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建築家、走る (隈 研吾)

建築家、走る (隈 研吾)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 変わったタイトルの本ですね。
 今回の東京オリンピック開催にあたっての新国立競技場の設計者としても有名な隈研吾さんの自伝的エッセイです。

 建築家に至るまではオーソドックスなキャリアを歩み、主な経歴や実績だけを辿ると順風満帆のようにみえる著者の半生ですが、実際は、それこそ「走り回った」山あり谷ありの様相だったようです。
 そして、その過

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数学する人生  (岡 潔)

数学する人生 (岡 潔)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 寺田寅彦さん、湯川秀樹さん、最近では福岡伸一さん等々、科学の世界で超一流の方々で思索的な文章の達人は数多くいらっしゃいますね。

 岡潔さんの著作(もちろん数学の専門書ではなく)にはとても関心があって、以前も、小林秀雄さんとの対談「人間の建設」を読んでみています。

 しかし、ダ

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物部氏の正体 (関 裕二)

物部氏の正体 (関 裕二)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 このところ新たな史実や史跡の探求が進み、定説とされていた歴史上の事件や文物の間違いが数多く指摘されるようになりました。
 古墳時代から飛鳥期の日本史も、私が中高生のころに学んだ内容とは大きく異なる説が数多く唱えられています。

 本書で説かれている「物部=吉備」説についていえば、

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無所属の時間で生きる (城山 三郎)

無所属の時間で生きる (城山 三郎)

(注:本稿は、2019年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 城山三郎さんは私の好きな作家のひとりで、今までも「辛酸 ― 田中正造と足尾鉱毒事件」をはじめとして、小説やノンフィクション等そこそこ読んでいます。

 今回は、久しぶりの城山三郎さんのエッセイです。

 私も、もうすぐ定年を迎え、ここに書かれているエピソードが正に当てはまるステー

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世界は数字でできている (野口 悠紀雄)

世界は数字でできている (野口 悠紀雄)

(注:本稿は、2019年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 野口悠紀雄さんの著作は、かなり以前にもベストセラーになった「「超」整理法」や「「超」勉強法」を読んだことがあります。

 本書は、似たような切り口の著作が世の中に数多く流布しているなか、野口さんならではの独創的なコメントに期待して手に取ってみたのですが、正直今ひとつといった印象で

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一握の砂・悲しき玩具 ― 石川啄木歌集 (石川 啄木)

一握の砂・悲しき玩具 ― 石川啄木歌集 (石川 啄木)

(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)

 なかなかできていないのですが、図書館に行ったら、普段手に取る本とは出来るだけ違ったジャンルのものにも関心を向けようと思っています。

 とはいえ本書はあまりにも有名な石川啄木の歌集ですから、“何を今さら”という感は拭えず、かなりの気恥ずかしさがあります。

 「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」「たはむれに母を背負ひ

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