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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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#文春文庫

廃墟に乞う (佐々木 譲)

廃墟に乞う (佐々木 譲)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 このところ気分転換に読んでいるミステリー小説は、読破にチャレンジしている内田康夫さんの “浅見光彦シリーズ” に偏っているので、ちょっと息抜きとして、今まであまり読んだことのない作家の方々の作品にトライしてみようと思っています。

 手始めに、これまた今まで意識的に避けていた「有名な文学賞」を受賞した作品からあたろうと考えて本作品を選んで

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テロリストのパラソル (藤原 伊織)

テロリストのパラソル (藤原 伊織)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 このところ気分転換に読んでいるミステリー小説は、読破にチャレンジしている内田康夫さんの “浅見光彦シリーズ” に偏っているので、ちょっと息抜きとして、今まであまり読んだことのない作家の方々の作品にトライしてみようと思っています。

 手始めに、これまた今まで意識的に避けていた「有名な文学賞」を受賞した作品からあたろうと考えて本作を選んでみ

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幕府軍艦「回天」始末 (吉村 昭)

幕府軍艦「回天」始末 (吉村 昭)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 吉村昭さんは私の好きな作家のひとりで、かなり以前には集中して何冊か読んでいました。
 今回、まだ読んでいない作品が、いつもの図書館の新着本リストの中に並んでいたので手に取ってみました。

 吉村さんの作品の中では、比較的軽めですね。幕末から明治維新期が舞台。函館に渡った旧幕府軍と新政府軍との一連の戦い(戊辰戦争)におけるエピソードのひとつ

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昭和史をどう生きたか 半藤一利対談 (半藤 一利)

昭和史をどう生きたか 半藤一利対談 (半藤 一利)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 著者の半藤一利さんの著作は、今までも何冊も読んでいますし、先日も「墨子よみがえる」や「戦争というもの」を読んだところです。
 やはり、半藤さんの戦争反対・平和希求への想いや言葉は強く心に沁み入ります。

 本書もそういった流れの中で手にした本です。

 澤地久枝さん、保阪正康さん、戸髙一成さん、加藤陽子さん、梯久美子さん、野中郁次郎さん、

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十万分の一の偶然 (松本 清張)

十万分の一の偶然 (松本 清張)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 また図書館で予約している本の受取タイミングがうまく合わなくて、年末年始の休みに読む本が切れてしまいました。
 とりあえずの繋ぎとして、納戸の本棚から引っ張り出してきたのが本書です。

 選んだのは、今から30数年前に買った松本清張さんのミステリー小説。
 ちょっと前にも同じような動機で「点と線」や「ガラスの城」を読み返したのですが、この本

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堤清二 罪と業 最後の「告白」 (児玉 博)

堤清二 罪と業 最後の「告白」 (児玉 博)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着書のリストの中で目についたので手に取ってみました。

 堤清二さんは、言わずもがなですが、セゾングループの総帥、「辻井喬」というペンネームで小説家としても有名でした。(2024年注:最近の方は「セゾングループ」といっても、あまりピンとこないかもしれませんね)

 本書は、トータル10時間以上にもわたるインタビューで堤清

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贄門島 上/下 (内田 康夫)

贄門島 上/下 (内田 康夫)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 かなり以前、内田康夫さんの作品は集中して読んだことがあります。
 一番最初は「シーラカンス殺人事件」だったように記憶しています。そのあとは、定番となった「浅見光彦シリーズ」に入っていくのですが・・・。

 今回は、図書館の新着書のコーナーで、久しぶりに「内田康夫」さんの名前をみたので、半ば衝動的に借りてきました。

 この作品は浅見光彦シ

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森と氷河と鯨 ワタリガラスの伝説を求めて (星野 道夫)

森と氷河と鯨 ワタリガラスの伝説を求めて (星野 道夫)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 星野道夫さんの著作は、かなり以前に読んだ「魔法のことば」という本以来ですから久しぶりになりますね。
 こちらは、未完に終わった雑誌の連載に日誌を加えて一冊の本に作り上げられたものです。

 私とは全く違った世界に生きた星野さんの思考や行動に触れると、(その瞬間だけでしかないのが情けないのですが、)大いに励起されるものがありますね。

 さ

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リターンマッチ (後藤 正治)

リターンマッチ (後藤 正治)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 先に柳田邦男さんの本を読んだ際、激賞されていたので手に取ってみました。後藤さんの著作はちょっと前にも「スカウト」という作品を読んだところでした。

 さて、本書、舞台が「定時制高校のボクシング部」ということなので、材料となるエピソードには事欠かないことは想像に難くないのですが、後

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生命と記憶のパラドクス 福岡ハカセ、66の小さな発見 (福岡 伸一)

生命と記憶のパラドクス 福岡ハカセ、66の小さな発見 (福岡 伸一)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 「生物と無生物のあいだ」を皮切りに「動的平衡ダイアローグ」「フェルメール 光の王国」等々、福岡伸一氏の著作は何冊か読んでいます。
 本書は「週刊文春」で連載された小文をまとめたものとのこと。とても穏やかで軽いタッチの読み物です。

 本書の隋所に福岡氏一流の興味深い視座からのものの見方が開陳されています。
 たとえば「働きバチは不幸か」とい

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レキシントンの幽霊 (村上 春樹)

レキシントンの幽霊 (村上 春樹)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 私はほとんど小説は読みません。その滅多に読まない小説の中でも、食わず嫌いの代表格が村上春樹氏の作品でした。

 たまたま文庫本で読む本が切れた際、家族の本棚を見ていて目に付いたので抜き出してみたのが、本書です。私にとっての「初ハルキ」、中身は7編の短編です。

 物語なのでストーリーの要約や過度な引用は控えますが、村上氏の作品はこういった感

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ロスジェネの逆襲 (池井戸 潤)

ロスジェネの逆襲 (池井戸 潤)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 池井戸潤氏の作品は「下町ロケット」に続いて2冊目です。

 本書は、昨年(注:当時)大流行した「半沢直樹」の原作。私自身「倍返し」というフレーズが大嫌いなので、一度もテレビドラマは見たことがないのですが、食わず嫌いはマズイと思い読んでみたものです。

 結果は・・・、やはり私には合いませんでした。
 登場人物の善悪・正邪がはっきりし過ぎてい

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大人のいない国 (鷲田 清一・内田 樹)

大人のいない国 (鷲田 清一・内田 樹)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 鷲田清一さんと内田樹さん、気になる論客お二人が揃い踏みした著作で、現代日本の諸相をご両人流の視点で縦横無尽に切り込んでいきます。

 まずは、本書のタイトルにもなった「大人のいない国」を、お二人はどんなふうにイメージしているのかですが、冒頭、こんなやり取りでスタートしています。

 日本には「大人」がいない、それでも(今は)やっていけている

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もう、きみには頼まない ― 石坂泰三の世界 (城山 三郎)

もう、きみには頼まない ― 石坂泰三の世界 (城山 三郎)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 「2013年本屋大賞」に百田尚樹さんの「海賊とよばれた男」が選ばれました。私も昨年読んだのですが、確かに気持ちの良い物語でしたね。一本芯の通った経営者の生き様はとても刺激的です。

 本書もそういうテイストの本として手に取ってみました。

 主人公は、第一生命・東芝の社長を歴任、その後長年にわたり経団連会長も務め“財界総理”との異名もとった

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