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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2022年7月の記事一覧

中谷宇吉郎随筆集 (中谷 宇吉郎)

中谷宇吉郎随筆集 (中谷 宇吉郎)

 中谷宇吉郎氏は、低温科学の草分け的な物理学者です。
 雪の研究で有名で、そのままズバリのタイトルを冠した岩波新書の「雪」は、ファラデーの「ロウソクの科学」にも比肩する素晴らしい著作だと思います。

 本書は、その中谷氏の随筆集です。寺田寅彦門下でもある中谷氏は、やはり随筆の名手でもありました。
 たとえば、「雪雑記」。
 雪の結晶の観察のために十勝岳のヒュッテに滞在したときのくだりです。

 続

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しがみつかない生き方 ― 「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (香山 リカ)

しがみつかない生き方 ― 「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (香山 リカ)

(注:本稿は2011年に初投稿したものの再録です)

 ちょっと旬を過ぎた本ですが、出張の往復で読みきれる程度のものということで選んでみました。

 香山リカ氏の著作としては、以前「なぜ日本人は劣化したか」を読んだことがあります。そのときにも感じたのですが、香山氏の立論は、今ひとつ踏み込みに物足りなさが残ります。本書もまさにそうでした。

 その中で、ちょっと書きとめておこうと思ったくだりをいくつ

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諜報の天才 杉原千畝 (白石 仁章)

諜報の天才 杉原千畝 (白石 仁章)

 杉原千畝氏(1900年1月1日~1986年7月31日)は、第二次世界大戦前後の時期に活躍した外交官です。
 リトアニアのカウナス領事館に赴任していた当時、ナチス・ドイツの迫害によりポーランド等欧州各地から逃れてきた難民たちに対して大量のヴィザを発給し、数千人にのぼる難民を救ったことで有名ですね。

 本書は、杉原氏の研究をライフワークにしている白石仁章氏による「杉原伝」です。
 ただ、その着眼は

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ニーチェ『ツァラトゥストラ』 (西 研)

ニーチェ『ツァラトゥストラ』 (西 研)

 NHKテレビで放送された「100分de名著」のテキストです。
 講師は西研氏。西氏の著作は以前も「ヘーゲル・大人のなりかた」や苅谷剛彦氏との共著の「考えあう技術」等を読んだことがあります。

 今回は、以前から興味があった「ニーチェ」の解説ということで手にとってみました。100ページ程度のブックレットなので内容は超概論です。が、それでも私レベルには勉強になります。

 題材は、ニーチェの代表的著

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自分の中に毒を持て ― あなたは“常識人間”を捨てられるか (岡本 太郎)

自分の中に毒を持て ― あなたは“常識人間”を捨てられるか (岡本 太郎)

(注:本記事は、2011年に初投稿したものの再録です)

 今年(注:2011年当時)は岡本太郎氏生誕100年にあたります。
 私が岡本太郎氏の名前を初めて目にしたのは、1970年大阪で開催された万国博覧会の記念モニュメント「太陽の塔」の作者としてでした。
 そして、その後、岡本氏は、「芸術は爆発だ!」との強烈なフレーズとアクションでマスコミにも登場し、さらに広く一般の人々にも大きなインパクトを与

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大前研一 洞察力の原点 プロフェッショナルに贈る言葉 (大前 研一)

大前研一 洞察力の原点 プロフェッショナルに贈る言葉 (大前 研一)

(本稿は2011年に初投稿したものの再録です)

 私は “大前教” の信者ではありませんが、氏の著作は30年ほど前の「企業参謀」をはじめとしてある程度は読んでいます。

 本書は、大前氏の数多くの著作の中から、Twitterの「ohmaebot」のノリで代表的なキーフレーズを選び出して採録したものです。約250のフレーズが、
「第1章 答えのない時代に必要なこと」
「第2章 基本的態度」
「第3

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阪急電車 (有川 浩)

阪急電車 (有川 浩)

(注:本記事は2011年に初投稿されたものの再録です)

 この本も、会社の寄贈文庫の棚にあったものです。そういう機会でもないと、私の場合、まず手に取らない類の本ですね。

 物語の舞台は「阪急電車今津線」。
 今から30年以上前、帰省の途中によく会っていた学生時代の友人が「西宮北口」に下宿していました。「阪急電車」は懐かしくまた馴染みのある電車です。

 本書は当代の人気作家有川浩さんの作品。中

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ビジネスパーソンの街歩き学入門 (藤巻 幸夫)

ビジネスパーソンの街歩き学入門 (藤巻 幸夫)

 タイトルに惹かれたのと以前カリスマバイヤーとして注目された藤巻幸夫氏の著作ということで読んでみました。

 目次を眺めると、

1.感性を磨く街歩き

2.世の中の流れを見抜く街歩き

3.人脈を広げる街歩き

4.考える力をつける街歩き

5.発見力を鍛える街歩き

6.審美眼を養う街歩き

7.気持ちを切り替える街歩き

といったように「目的別」に章立てされています。

 藤巻氏にとっての街

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大学生がダマされる50の危険 (三菱総合研究所/全国大学生活協同組合連合会)

大学生がダマされる50の危険 (三菱総合研究所/全国大学生活協同組合連合会)

(注:本稿は、2011年に初投稿したものの再録です)

 今年から娘が大学生になったので、ちょっと気になって読んでみた本です。

 私が大学に入学したころ(今から30年以上も前ですが、)からあったケースもあれば、いかにも今日的といったものも取り上げられています。
 ちなみに「目次」を紹介するとこんな感じです。

第1章 入学前に知っておきたい!―大学生が巻き込まれやすい危険(悪質な宗教団体の勧誘―

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男子の本懐 (城山 三郎)

男子の本懐 (城山 三郎)

 先日、浜口雄幸氏の遺稿ともなった「随感録」を読んだのですが、そこに顕れた浜口氏の質実剛健・実直な姿勢には大きな感銘を受けました。
 本書は、その流れで手に取ったものです。

 主人公は、浜口雄幸氏と井上準之助氏。二人は、第一次大戦後の混乱収拾期、経済財政面での最重要案件であった金輸出解禁に、まさに命懸けの決意で望み断行しました。

 財政政策としての金輸出解禁の評価は、ほぼ同時期に発生した世界大

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モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (ダニエル・ピンク)

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (ダニエル・ピンク)

〈モチベーション2.0〉の弊害 話題の本(注:2011年当時)なので手にとってみました。

 著者の主張の基本的な骨格は「動機づけ」の類型化です。それを、コンピュータのOSに準えてヴァージョンで分類しています。

 本書の第一部では、主として〈モチベーション2.0〉の問題点を考察しています。

 〈モチベーション2.0〉はルーティン業務には適していても、現代のクリエイティブな業務には適応できないと

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不動心 (松井 秀喜)

不動心 (松井 秀喜)

 たまたま通勤電車内で読む本が途切れたとき、何か軽めのものはないかと会社の寄贈書籍の棚を探していて見つけた本です。

 著者はニューヨークヤンキース(当時)の松井秀喜選手。2007年の発刊ですから、まだ現役バリバリのころです。

 本書は、松井選手の物事に対する思考法、構えのようなものを自らの体験を踏まえて語ったものですが、上梓のきっかけのひとつには、松井選手の連続試合出場を途切れさせることとなっ

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ビッグボーイの生涯 ― 五島昇その人 (城山 三郎)

ビッグボーイの生涯 ― 五島昇その人 (城山 三郎)

 東急グループの総帥五島昇氏の評伝です。

 昇氏の父五島慶太氏は、運輸官僚から実業界へ転進、強引な事業拡大で「大東急」を作り上げた豪傑でした。その長男である昇氏は、紆余曲折はあったものの東急の二代目社長として頭角を現し始めました。

 社内外には坊ちゃん・暗愚といった評判もある中、昇氏は、父慶太氏の死後、集団指導体制を否定し自らをトップにしたリーダシップの発揮を宣言します。とはいえ、全く他人の意

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随感録 (浜口 雄幸)

随感録 (浜口 雄幸)

命懸け 浜口雄幸(1870年5月1日-1931年8月26日)、「ライオン宰相」と呼ばれ、大正から昭和初期の激動期に大蔵官僚・蔵相・首相と数々の重職を勤めた政治家です。

 一国の指導者の器が本当に小さくなってしまった今日、銃弾に撃たれながらも「男子の本懐」と語った覚悟に、改めて、重く尊い気概を感じます。

 本書は、その浜口雄幸氏の自伝であり遺稿集です。
 巻頭の「自序」にはこういう言葉があります

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