展覧会レポ:国際子ども図書館「おいしい児童書」
【約3,900文字、写真約30枚】
初めて上野の国際子ども図書館に行き、展覧会「おいしい児童書」を鑑賞しました。図書館と展覧会の感想を書きます。
結論から言うと、展覧会のために行くよりも、建築や歴史も含めて訪問することが良いと思いました。良かった点は、1)新旧が美しく融合した安藤忠雄による建築、2)テーマごとに世界の児童書をキュレーションした興味深い展覧会、3)子どもと読み聞かせできる充実したスペースです。子どもはもちろん、建築が好きな方、上野デートなどに向いていると思いました。
▶︎訪問のきっかけ
国際子ども図書館を訪問したきっかけは、1)過去に安藤忠雄の建築について調べた際、国際子ども図書館に興味をもったこと、2)展覧会スケジュールで展覧会を調べた際「おいしい児童書」を知ったことから、子どもとお出かけする場所として最適だと思ったからです。
▶︎アクセス
国際子ども図書館へは、上野駅から徒歩約10分。上野といえば、国立西洋美術館、国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館などあります。しかし、そこから一角離れた東京藝術大学大学美術館や国際子ども図書館まで足を運ぶ人は少ないかもしれません。
国際子ども図書館は、誰でも無料で入場・利用することができます。
住所:東京都台東区上野公園12−49
▶︎国際子ども図書館とは
国際子ども図書館は、国立国会図書館の支部図書館です。2000年に日本初の児童書専門の国立図書館として設立。日本内外の児童書などの収集・保存・提供などをしています。
1980年代、国会図書館の蔵書が増えたため、国が増設を検討。当時の子どもの読書離れを背景に、支部上野図書館の方針が調整されました。1999年、国立国会図書館法が改正、国際子ども図書館の設置が決まりました。
1906年築の旧帝国図書館の建物を利用しながら、安藤忠雄建築研究所と日建設計により設計、鴻池組が改修しました。2000年に一部開館、2002年に全面開館、2015年にアーチ棟が新設されました。
この建物で面白いのは、旧帝国図書館の外観・内観を極力残していること。昔の外観を残しつつ、その外側に「ガラスボックス」「ガラスのカーテンウォール」を設置しています。床は、当時の床を残して、その数十センチ上にさらに床を設置し、旧床と新床の間に空調や照明まで通しています。
図書館は、建築のガイドツアーも週に数回実施しています。図書館を利用しなくとも、建築が好きな方にとっては、楽しい施設だと思います。
子どもがいる方は「子どものへや」「世界を知るへや」など、児童書を読み聞かせられる部屋はおすすめです。
安藤忠雄さんのガラスで覆う手法は、ドイツのランゲン美術館(2004年)などに似ている気がしました。
外観や廊下、階段などは撮影できますが、本を読むスペースなどは写真撮影不可です。詳しい写真は、国際子ども美術館のHPで紹介されています。
安藤忠雄さんは「こどもたちの素直な眼差しと感受性を大切にする"物語"の聖地をつくる」をコンセプトに「こども本の森」を、大阪、岩手、神戸、北海道、さらに海外への展開(予定)しています。
私は大学生4年生頃から読書が習慣になり、今は年間120〜150冊、記録している限り、累計2,038冊となりました。能動的に読書することで、生きる知恵や見識を広げることができると思います。子どもに読書を提供することは、安藤忠雄さんと同じく、非常に意義のあることだと感じます。
安藤忠雄さんが手がけた兵庫県立美術館や「こども本の森」には、2メートルを超える青リンゴのオブジェがあります。安藤忠雄さんは、その意味を「人間も国も青いままの方がいい。熟れたら、おしまい。青春のまま走る。覚悟と希望を持って」と述べています。
国際子ども図書館にも、青リンゴのオブジェを置くことで、読書の意義を伝えること、フォトスポットとして集客に役立つと思いました。
▶︎「おいしい児童書」感想
国際子ども図書館の3階に「本のミュージアム」があります。年に数回、展覧会を実施しているようです。天井や壁には漆喰装飾、館内で唯一見られる赤レンガなど、建築においても見どころも満載です(撮影不可)。
展示室内は、円筒形の「展示塔」が二つあります。その塔の内側と外側に児童書を展示。順路は分かりやすく、観覧者の衝突もなかったです。
この展覧会では、「食欲の秋」「読書の秋」に託けて、「食」をテーマに、57の国から235冊の児童書が展示されています。本だけの展覧会は珍しいため興味深かったです。
衣食住の中でも「食」は、特に世界共通であり、児童書でも多く取り上げられています。「食」と言っても、買い物、飲み物、キッチン、レシピ、食卓、排泄…など、切り口は多岐にわたります。
私が知っている児童書も数多くありました。こまったさんシリーズ、おおきなかぶ、はじめてのおつかい、カラスのパンやさん、はらぺこあおむし…。「食」のカテゴリーで分けると「これもあれも全部"食"に関する児童書だったんだ。幼児・児童にとって、食は最も身近で重要なんだな」と改めて気付きました。
一般的な美術館と違い、観覧者の対象は子どもも含まれているため、ある程度の声で話すことが許容された雰囲気でした。「これ見たことあるね」「これは何の本だろう」など、そこらじゅうで親子の会話が生まれていました。
本だけでなく「食」を通じ、子どもと丁寧にコミュニケーションした方がいいな、と感じました。テレビを見ながら食事をする際、料理についての会話も少なく食べ終わることがあります。「ながら食べ」は味覚の発達に影響するとも言われています。子どもにとって「食」から学ぶことは多いですね。
また、世界中の児童書が展示されていることから、国際子ども図書館は、世界の児童書を研究していることが伝わってきました。アーチ棟は主に研究施設です。一体どのように児童書を研究していて、その成果は何に活かされているのでしょうか。その点も館内で展示があると良いと思いました。
▶︎まとめ
いかがだったでしょうか?展覧会だけを見に行くよりも、建物や歴史も含めて訪問すると楽しいと思いました。おすすめポイントは、1)1906年築の建築と安藤忠雄の建築の融合、2)世界中の児童書を展示した珍しい展覧会、3)子どもと児童書を読み聞かせできるスペースです。子ども連れはもちろん、建築が好きな方、デートなどにも適していると思いました。
▶︎今日の図書館飯
▶︎おまけ(「こども」「子ども」「子供」)
「こども」「子ども」「子供」は、「国際子ども図書館」「こども本の森」のように表記が異なります。記者ハンドブックは「子供・子ども」とし、どちらでも構わないとしています。
5月5日の「こどもの日」は「こども」ですね。「子供」は「漢字ばかりで硬い」「”共”という漢字は、大人に従属する印象」、「子ども」は「漢字ひらがな交じりでしっくりこない」と感じる人もいるなど、様々な事情があるようです。文字の揺れは、ついつい普段から気になってしまいます。