- 運営しているクリエイター
記事一覧
日本は「同性愛」に寛容だったのか? ジャニーズ問題の根源としての伝統仏教と少年性愛
日本は伝統的に同性愛に寛容だったとよく言われるが、乃至政彦『戦国武将と男色』洋泉社,2013によれば、前近代の男色は実質「少年との性交」で、江戸時代には性具とされた少年たちの人権(という言葉はなかったが)に配慮すべきだとして各方面から批判にさらされ、度々禁令も出され、明治維新までにはかなり廃れていたそうだ。
世に遅れた仏教寺院ではずっと陋習として残り、町人の間にもそれなりに盛んだったようだが、建
【書評】杉本良男著『仏教モダニズムの遺産 アナガーリカ・ダルマパーラとナショナリズム』佐藤哲朗(『近代仏教』第29号、2022年5月発行 日本近代仏教史研究会)
仏教モダニズムとは何か?
スリランカを主なフィールドの一つとしてきた社会人類学者・南アジア研究者が上梓した本書は「仏教モダニズムが、スリランカにおいて、アナガーリカ・ダルマパーラの影響力のもとで、とくにナショナリズムとの関係において、現代に至るまでどのような展開をみせてきたのかについて総合的に考えようとする、人類学的、系譜学的研究」(はじめに)である。著者は一九八〇年代から同地で吹き荒れた宗
弥勒(マイトレーヤ)を待ちわびて|仏陀再誕はあり得ない ①
弥勒(マイトレーヤ)とは何者か?
東日本大震災で大きなダメージを受けた日本国のみならず、世界中で政情不安や社会不安、金融不安などが渦巻いています。実際、社会の変革期に入っているなぁという感触を抱いている人は少なくないのではないでしょうか? 精神世界やスピリチュアル界隈では、二〇一二年にはアセンションが起こるなどと、よく分からない終末論もどきの言説が交わされていました。ノストラダムスの大予言から、
テーラワーダ仏教(『日本宗教史のキーワード』より)
佐藤哲朗
布教伝道の現場から近現代の日本で断続的に試みられてきたテーラワーダ仏教(上座仏教)受容の歴史は井上ウィマラ[井上 二〇一六]、藤本晃[藤本 二〇一六]、青野貴芳[青野 二〇一四]に詳しい。本稿では、布教伝道にたずさわる当事者の視点から所見を述べたい。学生や研究者の皆さんが考えるヒントにしてもらえれば幸いである。筆者は二〇〇三年の春から宗教法人 日本テーラワーダ仏教協会(一九九四年設立。