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物語化する/される私たち(全4回)

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千野帽子著『人はなぜ物語を求めるのか』を元に、音楽、書籍の解説を交えたレビューを更新予定。 第一回目の記事では、人が持つストーリーという認知形式と、メディアで作り上げられる物語…
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物語に描かれる異端者のまなざし│物語化する/される私たち #4

物語に描かれる異端者のまなざし│物語化する/される私たち #4

 私たちは世界を理解しようとするとき、ストーリーという枠組みを用いる。それは他者理解においても同様だ。その枠組みから外れてしまった人々は、異端とみなされる。

 今回の記事では、村田沙耶香『コンビニ人間』を中心に、カミュ『異邦人』、春日武彦『自殺帳』、今村夏子『こちらあみ子』『むらさきのスカートの女』、兼本浩祐 『普通という異常 健常発達という病』などの著作を取り上げ、異端とされた人々のまなざしに

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存在の脆さと偶然の頼りなさの狭間で|物語化する/される私たち #3

存在の脆さと偶然の頼りなさの狭間で|物語化する/される私たち #3

人はなぜ、人生を物語化し、意味を与えようとするのだろうか。生の意味とは、どこにあるのだろうか。
今回は、人生の無意味さから出発し、 星野源氏の歌詞にもみられる「生活」を主軸にした生の捉え方、そして、偶然の頼りなさについて、クンデラの『存在の耐えられない軽さ』や永井均氏の著作を援用しつつ、書いていきたい。

なお、この記事は「人はなぜ物語を求めるのか」を元にしたマガジンの三作目となります。

ストー

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過去の自分は、いまの私の所有物ではない|物語化する/される私たち#2

過去の自分は、いまの私の所有物ではない|物語化する/される私たち#2

 「人生は物語のようなものだ。重要なのはどんなに長いかということではなく、どんなに良いかということだ。」というセネカの言葉にあるように、私たちはしばしば自分の人生を物語やストーリーという枠組みの中で捉える。

 前回の記事に続き、今回は、私たちが自らの人生を物語化(ストーリー化)することによる弊害について、最果タヒの著作『十代に共感する奴は皆嘘つき』や過去の不登校児のインタビューを交えながら書いて

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人はなぜ物語を求めるのか|物語化する/される私たち #1

人はなぜ物語を求めるのか|物語化する/される私たち #1

 人は物語る動物である。

 私たちは起こった出来事を因果関係の上で捉え、あらゆる物事をストーリー化する。そのストーリーを表現するために、しばしば物語(ナラティブ)という形式を用いる。

 突然だが、ここでひとつなぞなぞを出そうと思う。

 正解は、「雨が降るまで踊り続ける」ことである。

 なんだか肩透かしな答えである。そんなの当たり前、ただの屁理屈だと思った人もいるかもしれない。ここで「おまじ

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