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ひみの連載ストーリー
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2021年12月の記事一覧

第152話 シリウスクライシス

第152話 シリウスクライシス

 数週間振りに観る画面の中の宇宙子さんは、髪の毛を真っ赤に染めていた。「今年の浄化は今年のうちに。」そう言って笑う彼女と共に、年内最後のセッションがスタートした。

 お互いに、何か大きなブロックが浮上してきているのを感じ取り、今日はそこを視ていくことになった。

「ひみさんこれ、何か視えますか?」

 さっきから私の眼球は、目を閉じた瞼の下でその“何か”を探して上下左右、視界を隈なくキョロキョロ

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第151話 暦の不条理

第151話 暦の不条理

 玄関の鏡の前に立って、「やっぱり今日はこっちの靴にしよう」と思う。運転する時右足の踵(かかと)を床につくので、おしゃれ靴のそこだけ汚れてしまうことを考えると普段履きのブーツのほうが都合がいいけど、今日という日はかわいくありたい。ちょうどインターホンが鳴り、扉を開けるとやはり普段より綺麗な格好をしているけーこが立っていた。

 十二月二十五日。閑散としたショッピングモールで、二人でクリスマスディナ

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番外編 オリオンの元戦士

番外編 オリオンの元戦士

「ねぇひみ、変な夢見たんだけど聞いて。」

 それは、私が離婚しあきらが中学校を卒業した春の一コマ。

「どんな夢?」

「父親とさぁ、戦ってるんだよ。あーだから、嫌だけどたぶんアイツからの憑依?
うぉら近づくなー!って言って、それからどうしたと思う?」

「んー、憑依体に対してってことは、バトル?」

「そう!
あのね、自分の背中を壁に押し当ててそこを支点にして、手に持ったクラッチ(杖)を両足の

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第150話 剣の舞

第150話 剣の舞

 そしてまだ、はぁはぁと呼吸が乱れているその間。
 明晰夢の状態から観察者の視点へと切り替わると、今度はなぜかウニヒピリたちの姿が視えてきた。いつもは三人で出かける果物畑に、今はたった二人きりの小さな子供がやってきていた。

 私がいないのにもかかわらず、彼のウニヒピリが何度も頑張ってジャンプをし、ウニちゃんのために葡萄を取ってあげていた。受け取って、笑顔を見せたウニちゃんの様子を見て、なんとウニ

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第149話 太陽の剣

第149話 太陽の剣

 空が明るく白み始めてきたその日の早朝。ほんの少しだけ意識が目を覚ましてしまい、気がつくと夢と現(うつつ)の狭間にいた。明晰夢のような状態で視界をぐるっと見回してスサナル先生を探してみると、すぐに見つけることができた。

 思い切って闇に触れる。
体を丸めている彼の元へと飛んでいき背中にそっと手を添えると、その途端に現実で寝ている肉体がベッドの上でのけぞった。私に対する激しい拒絶。奥から奥から止め

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第148話 フラクタルラバーズ

第148話 フラクタルラバーズ

 街全体が、急かされるような雰囲気に飲まれていく十二月のある日。とうとうけーこが彼女自身のツインレイに出会った。詳細は省きたいと思うが、教えてもらった彼のことを初めて見たとき「なんだかタケミカヅチみたいだな。」と思った。
 そんな彼の名前には一目、スサノオやミカエルと同じソウルグループの印があった。ただ、ここでそのままを書く訳にはいかないため、登場させる時には武甕槌から名前を借りて「タケくん」と書

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第147話 オリオンアレルギー

第147話 オリオンアレルギー

「もう、ひみさーん。
本当ひみさんは相変わらずだねー。“ひみさん”っていう一つの概念。ひみこさまー!」

 会うたびごとに、私のエネルギーの変化に対して驚きと共に喜んでくれる宇宙子さんにからかわれながら、その日のセッションが始まった。

「どうします?今日は彼のことを進めてもいいし、お子さんのことをやっていってもいいし。」

 彼女からそう言われ、ハイヤーセルフにアクセスしてみる。

「……うーん

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第146話 愛は時空を超えて

第146話 愛は時空を超えて

 決意する。
今晩、どんなに悪夢にうなされて寒気で目が覚めてしまっても、“スサナル先生の闇感情たち”をひとりぼっちにしないよう、できる限り包んで寝よう。

 ベッドに入ると彼を意識し、その上でさらにハイヤーセルフにしっかりと繋がって、こちら側からあたたかい光で彼の闇を満たしていく。
 一晩何度もトライすると次々と不快な夢を見て、起きる前から頭痛もしていた。

 すると翌日の午前中、けーこからLIN

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第145話 午後のマリアと子供たち

第145話 午後のマリアと子供たち

 頭の中には、アヴェマリアが流れていた。

 四次元体を成す聖母マリアには未だに拭いきれない思いがあったものの、高次元を伝って降りてきたこの音楽の持つ波動にすっぽり包まれると、その優しさで心の奥が少しくすぐったくなった。

 動画サイトでさっそく探し、再生と同時に涙が出てきてしまったけど、いちいちエネルギーの流れを遮るコマーシャル音がウニヒピリたちにはえらく不評だった。
 それならばとスマホ本体に

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第144話 魂の空間は螺旋する

第144話 魂の空間は螺旋する

 幼稚園の頃、近所に住むかよちゃんの家に遊びに行った。
 誕生日を迎えたかよちゃんは、着せ替え人形用の、小さな子供でも簡易的な服が作れるデザイナーセットのおもちゃを貰っていた。
 そのおもちゃでの遊びに誘われ、私も自分の着せ替え人形を持って彼女の家にお邪魔すると、リボンやレース、紙のメジャーや布切れなどで、テーブルの周りは瞬く間に賑やかになった。

 ひと通り遊び尽くし飽きてきた頃。
彼女は付属品

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第143話 意識体たちの日常生活

第143話 意識体たちの日常生活

 結局、途中だった夢日記の内容をきちんと整理し直せたのは、その日のお昼近くになってから。
 ただ面白いことに、その記録を書くに当たって振り返っていたその間、なんとも心強い助っ人が私と一緒にいてくれた。彼女以上にこの世界の解説ができる適任者は、他にはいなかったことだろう。

 『ウニヒピリ』によるとそのお爺さんの部屋は、私たち、つまり私とウニとの“感情”ではないとのこと。またその扉はいつも必ず閉まっ

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第142話 猟銃とお爺さんの部屋

第142話 猟銃とお爺さんの部屋

 夕ご飯を食べ終えて洗い物をしている時、今日は私の内側がやけに静かだなと思った。気づいたら思考のおしゃべりが止まっていて、その代わりに脳内では、なぜだかオルゴールの子守り歌が再生されていた。

 あまりにしんとしていたので、思わず声をかけてしまった。

「『嫉妬ー』?嫉妬、いる?」

「起こさないで!」

「ああ、ごめんごめん。おやすみなさい。」

 急にみんなにアクセスできなくなったのかと思った

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第141話 ウニヒピリ

第141話 ウニヒピリ

 私が神奈川に引っ越してきたのは、こっちで仕事を始めた旦那との結婚がきっかけだった。ここが旦那の出身地だったからではなく、そもそも私たちは同郷だった。
 妊娠、出産、子育てなどで、まったく知らない土地だったのにもかかわらず、徐々にたくさんの友人たちに恵まれていった。

 それが今、スサナル先生との統合を目指す道程であらゆる人間関係を切らされてしまい、どういう訳だか気づいたら、私のLINEにはあきら

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第140話 鏡に映った自縄自縛

第140話 鏡に映った自縄自縛

(かがみにうつったじじょうじばく)

「……でね、『嫉妬ちゃん』のガムテープが剥がれたんだけど、そしたら本当はその下には、牙が生えてたんだよね。」

「おおマジか。……でもなんか牙っての、それわかる気がする。」

 ここのところ、私が一体何を視て何を浄化しているかを逐一あきらに報告することが、なんとなく日課になっていた。この子に話を聞いてもらえることで保っている部分もあった。
 スサナル先生に長い

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