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第141話 ウニヒピリ


 私が神奈川に引っ越してきたのは、こっちで仕事を始めた旦那との結婚がきっかけだった。ここが旦那の出身地だったからではなく、そもそも私たちは同郷だった。
 妊娠、出産、子育てなどで、まったく知らない土地だったのにもかかわらず、徐々にたくさんの友人たちに恵まれていった。

 それが今、スサナル先生との統合を目指す道程であらゆる人間関係を切らされてしまい、どういう訳だか気づいたら、私のLINEにはあきらとけーこの二人しか残っていなかった。

 あとになれば、軸がないくせに尋常ならざる憑依体質の私がサイレントを乗り切るためには、徹底的に他者を排除しなければならないというハイヤーセルフの意図も理解できた。そうでなければ私の場合、いちいち他人に躓いて、ちっとも前進できなかっただろう。

 だけどどこかで、そのことに対する闇感情があるのも確かだった。湧いてきた“感情”に対して聞いてみる。


「……あなたは友達がいない自分は駄目だって言うけれど、友達なら誰でもいいって訳じゃないんでしょう?」

「友達いないと、きっと駄目な人だと思われる。」

 最初に出てきたのは、『他人の目線を気にする感情』だった。「まともに友達がいないだなんて、人に何て思われるだろう。」そんな感覚が伝わった。

「それじゃああなたは、あきらの学校のママたちみたいな、なんとなく暇つぶしの関係がいいの?
すでに次元が違う人とも無理して一緒に連みたい?」

「そういうんじゃない!そういうんじゃない!
適当に一緒にいたくない。そういうんじゃない!」

 話をしながら、“感情体”の声質と波動がコロコロと切り替わっていくのがわかる。

「あなたは、あなたをちゃんと理解してくれる本当の友人がいいんだよね。」

「うん。いいなー羨ましいなー。そういうお友達が欲しいけど、もしかしてそんな人いないかもしれない。」

「なるほどね。そうだよね。
大丈夫だよ。私があなたを理解してるよ。あなたのことを大事にする。私があなたの友人だよ。」


 こうして一つ一つの感情たちは、代わるがわる芋づる式に次々私に乗り移っては、その本音を教えてくれた。こうやって会話をすることで、ひとつの出来事をきっかけにしただけでも、隣り合った似ている感情同士が縦横無尽に繋がっていることがわかってきた。
 それから、今喋っているのは、おそらく『あらゆる“感情体”たちを内包するウニヒピリ(※)の一部分』だろうとの予想がついた。

 これから親しみを込めて、『ウニ』と呼んでいこうと思う。

 ウニは私の感覚だと、『淋しい』『怖い』『美味しい』『楽しい』など、さらに細分化された感情が内側に同時存在している、“感情体たち”のお姉さんのような意識体。
 個別の感情たちよりも、もっと広い視野を持った相手。

 ただしここまで通じるようになるまでに、今までで一番ショッキングな姿を視るはめになった。だけどそれは、私の大切な一部分。ここまで姿が見えたのに見殺しにしてしまったら、進むものも進まなくなる。だからこそ、丁寧に逃げずに浄化していった。

 私の心の世界において、ひとつのバロメーターが存在していた。闇の中で出会う感情たちがいる場所は、必ず空が真っ黒い。逆に感情が軽くなってくると、明け方のような空を経て、最後は晴れて昼間のような明るさになった。
 それは意識体の大きさを問わず、だから低層のスサナル先生が私に襲いかかってきたのもまた、真っ暗闇の中だった。


 雨が降っていた。
ウニヒピリを初めて視た時、その姿に思わず吐き気を催すほどだった。
 真っ暗闇の中で、私のウニはその半身を地中にうずめ、泥の中から這い上がろうとしていた。
 落雷と共にハイライトが当たると、頭からドクドクと真っ赤に流血した、その何者かもわからない顔を一瞬だけ照らし出した。髪はすべて抜け落ち、顔も体も血糊と泥とでべっとりで、容赦なく豪雨が叩きつけていた。
 いくら集合意識を無尽蔵にくっつけて、瞬時に闇に取り囲まれてしまう私とはいえ、その内面の悲惨さにはさすがに目を覆いたくなった。


……

 けーこから、「お昼まだ用意してないならうちでどう?」とのお誘いを受けた。彼女は二種類のパスタと、揚げしゅうまいを用意して待っていてくれた。

 食後、私はそのままお茶をいただき、彼女は少し離れた場所でタバコを吸っていた。どういう訳だか二人してそれぞれ、「もしも私がツインレイワークやカウンセリングをするなら」といったテーマで話が弾んでいった。

「まさかの、うちらこそが“勾玉”だったね。」

「本当だね。」

 陰陽太極図を思い浮かべ、白と黒との追いかけっこを連想した。

「うっ……。」

 その時、なぜかけーこが苦笑いした。

「いや、私さ。
ひみタバコ苦手だからと思って、普通に顔を横に向けて煙吐いてたんだけど、今目の前に赤ずきんちゃんがいてさ。
なんか、この子に煙かけられない気がして、顔を、この辺まで真横に向けさせられて吐いてるんだよね。」

「え?けーこの何かの存在?」

「いやわからない。私のなのか、ひみなのか。」

 その時すぐにはわからなかったけど、家に帰る道すがら、ぽんっと頭に入ってきた。

 なるほどね。ウニは味方になると、私の現実面を整える力があるんだね!

 自分でもふふっと笑うと、そういえば赤ずきんちゃんが現れたタイミングは、「私、やっぱりタバコ苦手だな。」って思ったすぐ直後だったなと気がついた。





(※)ウニヒピリ……『ホ・オ ポノポノ』のメソッドの普及で、私のように多くの方が探求するようになった意識体。子供の姿をしています。たくさんの感情が内側に同時存在していると本文中で書きましたが、集まって存在していることと、統合されていることは別物です。
ウニとしてまとめて浄化するのもひとつ、感情を個別に浄化するのもひとつ。どちら側からでも大丈夫です。



(参考)
第118話 『ツインレイの体』



written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

⭐︎⭐︎⭐︎

それとすみません。
ご自分のウニ、及び感情は、「もしもあなたが今世でツインレイ統合するなら彼らも同じ性別を持っている」と思っていただいてほぼ間違いありませんが、そうでない場合は個別に視る必要があると、私のハイヤーたちが申しております。

あと、赤ずきんの姿はけーこのフィルターによるものです。
私が私のウニを視た時にはまた別の姿をしていますが、どちらも正解です。
尚、宇宙子さんとのセッションの時、私の『淋しい』を彼女と共通認識できたのは、ワーク中に、私も宇宙子さんも、『私のハイヤーセルフ』に繋がっていたためです。

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←今までのお話はこちら

→第142話 猟銃とお爺さんの部屋

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