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2022年、観たもの読んだもの。

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記事一覧

『伝わる英語表現法』

『伝わる英語表現法』

Twitter界隈で話題になっていた『伝わる英語表現法』は岩波新書からの復刊本だという。数ある英語学習本たちと何が違うのだろうと僕も手を取ってみた。

手を動かす新書

本書は「伝わる英語表現」という銘打っている通り、英語話者に伝えられるようになることに重点を置いている。単語偏重の日本語的な英語学習とは袂を分かち、比較的平易なーそして英語的なー表現を体得できるようバラエティ豊かな例題を用意している

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映画「世界でいちばん美しい村」

映画「世界でいちばん美しい村」

震災に襲われたネパール山岳地帯のラプラック村に密着取材したドキュメンタリーである。
民族学のフィールド調査に帯同しているような雰囲気さえ感じる作品だった。評論するほどの力量はないので、思いつく限り所感を書きなぐることとする。

逞しいことは美しいこと

ラプラック村の人たちは、幼い子どもも青年も、父も母も、老婆までもみんな美しかった。

衛生状況は決して良いとは言えない。濁った水を使っているし、身

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日本で映画を広告する業界批判〜「バスルーム 裸の二日間」〜

日本で映画を広告する業界批判〜「バスルーム 裸の二日間」〜

Amazonがセクシーな映画をレコメンドしてきやがった…と思いつつ、試しに観てみた。もし出演俳優の肌の平均露出率という指数があれば、現存する映画の中でも屈指の成績を誇るだろう。なぜなら浴室から出られなくなった男女の2日間を描いた作品だからだ。

美しい女性の裸体を拝むことができる…そういう視点から観れば一部のレビュワーが指摘するように下品な映画だということになる。しかし、それはそのように見るレビュ

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内村鑑三『後世への最大遺物』

内村鑑三『後世への最大遺物』

以前に連続起業家の孫泰蔵氏が推薦しているのを目にして、気になっていた同書。ようやく読む順番が回ってきたが、これは誰にでも薦めたい一冊だ。

(余談:改めて調べると孫氏は色んなメディアで同書に言及している。そのことだけでも同書に対する熱が伝わってくる。)

多分、元々読んだのはこれで…

他にもこんなのとかも…

では、同書についてみてみよう。

内村鑑三氏は、『余はいかにしてキリスト信徒となりしか

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『オーバーヒート』

『オーバーヒート』

哲学者・千葉雅也氏の著作。二作収録されているのだけど、それを知らなくていつの間にか終わった一作目。二作とも読み終えた後も気づかず「変な終わり方だなあ…」と思ってすみません(笑)

文体がぼくの思考に馴染むまでは異物を身体に接種している感じがしたけれど、慣れてしまえばパンキッシュな文体が心地よくもあったり。

内向的な主人公は自らの内側に湧き上がる言語の海に溺れている。
それをそれらしくパッキングし

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『ムーミン谷の彗星』と『人新世の「資本論」』

『ムーミン谷の彗星』と『人新世の「資本論」』

三十路を過ぎムーミンを読むとは思わなかった。きっかけは予備校講師・小池陽慈先生のツイートだった。

ムーミンが哲学?ムーミンでイヤーな気分?哲学にも精通する国語予備校講師の先生が「世紀の傑作」と評するのだからこれは一読せねば、と手に取ったわけだから単細胞だ。

人間への深い洞察眼が現れた「ムーミン谷」子ども向けに書かれた(訳された?)ものであろうから、ひらがなが多くて読みづらい。論理でつかめないレ

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付録(感銘を受けた『ムーミン谷の彗星』名言・名場面集)

付録(感銘を受けた『ムーミン谷の彗星』名言・名場面集)

付録として前noteの末尾に付そうと思っていたものの、結構なボリュームだったので別のnoteにまとめた。ほとんどがスナフキンにまつわる内容。

スナフキンのミニマリズム「そうだな。なんでも自分のものにして、もってかえろうとすると、むずかしいものなんだよ。ぼくは、見るだけしてるんだ。そして、立ち去るときには、それを頭の中へしまっておくのさ。ぼくはそれで、かばんをもち歩くよりも、ずっとたのしいね」(6

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「愛を読む人」(2009)

「愛を読む人」(2009)

「君に読む物語」という映画を薦められたことがある。そろそろ観てみようと思うに至ったが、観ているとなんだか思っていたのと違う。何でだ、と思ったら違う映画だった。それが「愛を読む人」との出会いだった。

セクシャルな描写もあるので親子での鑑賞などは控えた方がいいかも知れないが、かと言って高校生くらいなら観賞をきっかけに良質な思索がはじまるかも知れない。

映画は、戦後のドイツを舞台に壮年を迎えた男性の

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シャッターアイランド(2009)

シャッターアイランド(2009)

「ディパーテッド」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」など、名作を残してきたマーティン・スコセッシ監督✕レオナルド・ディカプリオ主演の名タッグが魅せるサスペンス映画。誰を信じたら良いのか判らなくなる筋書きはよくあるものの、それを更に一歩進めたのが本作だろう。(以下、ネタバレ?)

観る側に主人公の錯乱状態を追体験させるような演出、どこかで観たことがあるなと思ったら好んで観ていたクリストファー・ノー

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