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正源宗之の雑歌詩集

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記事一覧

『平面と空間』 正源宗之の雑歌詩集より

『平面と空間』 正源宗之の雑歌詩集より

平面に線を描く

それがどんなに広くても

いつかどこかで交差する

君はこの平面のどこかにいる

君と交差する地点まで

それがどんなに遠くても

君を求めて

君も求めているだろう

それが出会いというものだろう

それとも君は私を避けて

この広く果てしない空間に飛び立ったのか

追い求めても交差するのがわからない

手応えさえもしないだろう

空間とはそんな所かもしれない

   『平面と

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正源宗之の雑歌詩集より『戯れの詩』

正源宗之の雑歌詩集より『戯れの詩』

こんなものかと問いかける
そんなものだと答える私
いったい何がこんなもの
利害が絡めば鬼にもなる
歴史辿れば歴然と
君もきっとわかるだろ

こんなものかと問いかける
そんなものだと答える私
いったい何がこんなもの
しょせん世の中 男と女
騙し騙され生きている
君はどっち 騙す方

こんなものかと問いかける
そんなものだと答える私
いったい何がそんなもの
運のよいモノ 悪いモノ
持って生まれて生きて

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正源宗之の雑歌詩集より『視線』

正源宗之の雑歌詩集より『視線』

振り向きもせず帰る僕
さよならも言わないで背を丸め
視線は遠くを見やることなく
吹く風は丸めた背中を通り抜ける

あなたもまた何も語らず
ただ行きずりの二人のように
改札の中へ消える
遠ざかる電車のひびきは
ただむなしく僕の胸に残照となる
この淋しさが消え去るまで

     『視線』正源宗之

(正源の娘のひとり言)

僕は本来強い眼差しの持主だと思うのです。でも今は弱い。
その視線の先にいたは

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正源宗之の雑歌詩集より『叫び』

正源宗之の雑歌詩集より『叫び』

(今日は父正源宗之の命日です。)

座敷の方が何だか騒々しい 早朝だというのに
ヒソヒソ話を打ち消すかのように掃除機の音が聞こえる
何だろう
しばらくすると表に車の止まる気配がした
そして何かを運び入れた
そうか座敷の調度品でも買ったのかもしれない
そのために掃除をしていたのだろう
それなら合点もいく
組み立てが始まったらしい?
何だあれは?
祭壇じゃないか 棺も運び込まれている
いったい誰が死ん

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正源宗之の雑歌詩集より『問答』

正源宗之の雑歌詩集より『問答』

闇夜に泣かぬカラスの声を聞け
禅問答の様な事を聞いた事がある
あなたは見えますか 
聞こえますか
僕には到底聞くことはできない
見ることもできない

私には聞くことができます 
私は難聴です
だからどんな声も健常者の方が聞こえない声ほど
よく聞き取ることができるのです

そうですか 
ではカラスの姿を見ることができますか

できます 
わたしは盲目なんです
ですから健常者の方より心眼がすごく発達し

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正源宗之の雑歌詩集より『大空』

正源宗之の雑歌詩集より『大空』

澄みきった青空がひろがる

雲一つないみごとな晴天

私の心も澄みきった青空だ

あまりにも澄みきった心でいるとなんだか

他の人にすべてを見通されている様だ

それではいやだ  静かにしまっておきたい事もある

見通されたくない事だってある

秘めておきたい事柄だって

そうだ 私は白いペンキを持ち出した

青い空に向かってうすくハケで雲を描いた

私にもうすい雲が広がった

まだ不十分な部分が

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正源宗之の雑歌詩集より 『問題』

正源宗之の雑歌詩集より 『問題』

背中に大きな包みを背負い

足音しのばせやって来る

気付かぬ内に包みを置いて立ち去った 小人のようだ

目を凝らし後を追ったが見失う

包みを開けたその中に

小さな問題が一杯詰まってた

今まで気にせず捨て去った一つ一つの小さな事を

そんな小さなその事がやがて大きな問題に

そうだ大きな問題も その時利害がないかぎり

あまり問題にしない

悲しい人間の性なのだろか

これから起こるどんな小

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『耐える』 正源宗之の雑歌詩集より

『耐える』 正源宗之の雑歌詩集より

何を聞いても虚しく響く

なんと悲しき三味の音よ

打ちたたくなんと無情の太鼓の音よ

打ち鳴らす鐘の音も

今の私には

ただ騒々しくて虚しくて

心の隙間を通り抜ける

冷たい冬の北風の様だ

私は上着の襟を立て

耳をふさいでじっと耐え

春の小川のせせらぎが

あなたの優しい愛の言葉が

私の胸に届くまで

耳をふさいでじっと耐え

   正源宗之 『耐える』

被災された皆様、海保の皆様

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『少年と少女と私』正源宗之の雑歌詩集より

『少年と少女と私』正源宗之の雑歌詩集より

数分でよいから私に時間をください
 そんな短い時間何に使うんだ
眠るんです 
うとうとと眠りたいのです
そして夢を見たいのです 今すぐに

私は少女を愛しています  
そこには少年もいるのです
私は二人を愛してしまったのです 
私の愛に応えてか少女は私の膝にのり
紅く染めた頬を胸にうずめるのです
少年は私の手を取り
自分の頬に当てるのです

なんて優しい少年でしょう
なんて優しい少女でしょう

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『運』正源宗之の雑歌詩集より (旅立ちの季節にあなたへ)

『運』正源宗之の雑歌詩集より (旅立ちの季節にあなたへ)

( 正源の娘のひとり言 )

逃げる二月とはよく言ったものですね。今日は、閏年、四年に一度のおまけの日です。三月一日、私が高校を卒業する日淡い雪が降り続けていました。積もりそうなほどの降り方なのに落ちては解けてゆく、一日違うだけで三月は春なのだとそのふわふわの雪の空を見上げていたのを思い出しています。

まだまだ未舗装の道や作りかけの道が多かった頃に正源が書いたものを置いておこうと思います。
時代

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『夢見る私』 正源宗之の雑歌詩集より

『夢見る私』 正源宗之の雑歌詩集より

( 正源の娘のひとり言 )

半世紀ほど昔の昭和の女性が登場します。
恋愛の本質は変わらないかなとも思います。
正源が70過ぎた頃に女心を書いている、不思議でなりません。
普通のおじいちゃんだったのですよ。
今日はこの詩をここに残します。
そんな気分の娘です。
さださんとか、こうせつさんとかの初期に出てきそうな女性です。

 夢見る私

あなたがくれた浴衣地を
たのしく私は縫い上げました
今年の夏

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『虫』正源宗之の雑歌詩集より 

『虫』正源宗之の雑歌詩集より 

私は虫となりその世界を見る事に

折も折国道において幅四十センチ高さ二十センチの

土砂崩れが発生付近を通行中のアリ数匹が生き埋めに

自力で脱出できるのか
 
二次災害のおそれあり救出はできないとか

土砂崩れの原因は?

その数時間前 カエルが通る際オシッコをして立ち去ったと言う

目撃証人 いや虫が現れた

カエルのオシッコにより地盤がゆるみ崩れたとの見方もある

道路を管理する国の責任なの

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3.11の日に詩を捧ぐ         正源宗之の雑歌詩集より

3.11の日に詩を捧ぐ         正源宗之の雑歌詩集より

『歩む』

我が春 迎えたれど
きびしき春となりぬ
がけにころび
いばらに傷つきたれど
進まねば そこに
屍となるらん
ならば血の一滴 残りしなれば
次なる息 つづくかぎり
我は歩まねばならぬ

『愛を求めて』

今の私には何も考える暇なんか無いんだ
ただ一つ君の唇に
私の唇を重ねることだけだ
それが終われば私は暇になるだろう

私の暇な時間は数時間とないだろう
数時間も経てば
また私は君の愛を求

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『視野』 正源宗之の雑歌詩集より

『視野』 正源宗之の雑歌詩集より

前を向いて歩こう 
時折後ろもふり向いて

右を向いて歩こう 
腕をかざして景色を見よう

左を向いて歩こう 
時折小鳥のさえずり聞いて

上を向いて歩こう 
時折大きく呼吸して

下を向いて歩こう 
時折足元見つめ直して

視野は大きく広まったか
心は大きく育ったか

現在を歩こう
いつか全てをふり返るその日の
楽しみのために
希望のために

   「視野」 正源宗之