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2021年9月の記事一覧

苦味も渋味もある人生に、ほっとする甘味の一口を。

青山美智子『月曜日の抹茶カフェ』、読了。
東京と京都をつなぐ、12ヵ月12編の物語です。

●印象に残った一文

この世に生まれ落ちたときから、僕たちはただどこまでも繋がり続けている。

本作は、同著者『木曜日にはココアを』の続編です。
読み終えた時、京都での茶道体験を思い出しました。

茶道の世界から生まれた「一期一会」という言葉。
いま、この時間に集う人との関係は二度と同じものはない、一度きり

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辞書を製作する人が、言葉をうまく使えるとは限らない

辞書を製作する人が、言葉をうまく使えるとは限らない

しかし不器用でも、真剣な言葉こそが、胸に響く。

三浦しをん『舟を編む』、読了。

新しい辞書『大渡海』の出版に向けた長い長い旅の話。
辞書作りに向き合う様々な人たちの情熱や心模様が、文字を、言葉を通して伝わってくる。

主人公の馬締の不器用さが、愛おしい。

そして西岡さんの立ち位置が絶妙。

仕事とは、関わるすべての人の協力があってこそ成り立つもの。
2人の関係を見ていて、なんだかラーメンズの

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「どう見られたいか?」より「どう見たいか?」

「どう見られたいか?」より「どう見たいか?」

生きづらさを感じている人への、一冊。

若林正恭『ナナメの夕暮れ』、読了。
お笑いコンビ・オードリーのツッコミ、若林さんのエッセイ。

●印象に残った部分

自分の生き辛さの原因のほとんどが、他人の否定的な視線への恐怖だった。
その視線を殺すには、まず自分が“他人への否定的な視線”をやめるしかない。

若林さんは「生きづらさ」を抱えて生きてきた人の一人。

生きづらさの一つに、他人からの評価や視線

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聞いてアロエリーナ♪ちょっと言いにくいんだけど♪

聞いてアロエリーナ♪ちょっと言いにくいんだけど♪

満身創痍の中で紡がれた岸田さんの言葉は、読み手に気づきと笑顔と勇気を与えてくれる。
そして、彼女を応援したくなる。

岸田奈美『もうあかんわ日記』、読了。

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』の著者である岸田さん。
noteに書かれた令和3年3月10日から4月15日までの日々を綴ったエッセイ。
父は急逝。弟はダウン症。
母は車いすユーザー、からのコロナ禍での大手術。
そして祖父

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たまには、うにうに。

たまには、うにうに。

住野よる『麦本三歩の好きなもの 第二集』、読了。

三歩の何気ない日常に、癒されました。

自身の日常の疲れが、物語とはいえ誰かの日常を知ることで癒されるとは。なんだか不思議なものです。

●印象に残った一文

何も届かなくてもいい、ちょっとだけ生きる責任を持ってあげられたらいい。

お隣さんとの関係性に関する話で出てきた一文。
たまたま玄関先で会えば、挨拶をするくらい。
しかし、壁一枚を隔てて、

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