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#219 「発達段階」という言葉の呪縛が成長を妨げている(もっとシンプルに!)

よく言われる「マズローの欲求5段階」もそうですし、「成人発達段階」などに言葉に使われる、「発達段階」という言葉が実は成長を妨げているのでは?と思ったのでメモ。


1、「成人発達段階」とは?

「マズローの欲求5段階」はご存知の方も多いと思います。
「成人発達段階」は世界的権威であるハーバード大学のロバート・キーガン(Robert Kegan)教授の理論が有名です。

教授は5つの意識段階を提示しています。
以下は教授に直接学んだ加藤洋平氏著「なぜ部下とうまくいかないのか」を表にしたものです(出典:リクルートマネジメントソリューションズ)。

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(発達段階1は「具体的思考段階」で子供の意思段階ですので省略されています)

☑️ 発達段階2は「道具主義的段階(利己的段階)」で、この段階の人は極めて自己中心的な認識の枠組みを持っています。
☑️ 発達段階3は「他者依存段階(慣習的段階)」で、組織や集団に従属し、他者に依存する形で意思決定をする点に特徴があります。いわゆる指示待ち人間の意識段階です。
☑️ 発達段階4は「自己主導段階(自己著述段階)」で、この段階に来ると、自分なりの価値体系や意思決定基準を持ち、自律的に行動することができるようになります。
☑️ 発達段階5は「自己変容・相互発達段階」で、自己の価値観に横たわる前提条件を考察し、深い内省を行いながら、既存の価値観や認識の枠組みを打ち壊し、新しい自己をつくり上げていく意識段階です。

なお、発達段階4に達する人は成人人口の2割未満、発達段階5は同1%未満という調査結果が出ており、到達するのは簡単ではありません。


2、「呪縛」とは?

こうした「発展段階」は形を変えてよく見られます。

確かにわかりやすいのですが、そのわかりやすさゆえに「呪縛」に囚われて成長を阻害することもあるのではないか、と思います。

別の言い方をすると、「より高い段階がより良い」、という捉え方をし、一直線に「より高みを目指す」という努力が、実は、次の段階への成長を難しくしているのでは、ということです。

というのも、各段階同士は不連続の関係なのです。

つまり、Aという段階を極めれば、次のBという段階に行けるわけではない、ということです。

例えば、ご紹介した「成人発達段階」の発展段階4と発展段階5を比べて見ましょう。

☑️ 発展段階4:自分なりの価値体系や意思決定基準を持ち、自律的に行動することができる。
☑️ 発展段階5:自己の価値観に横たわる前提条件を考察し、深い内省を行いながら、既存の価値観や認識の枠組みを打ち壊し、新しい自己をつくり上げていける。

いかがでしょう?発展段階4を極めれば発展段階5にいける、という感じ、しますでしょうか?

むしろ、発展段階4と発展段階5は全く正反対とも言え、カルチャーチェンジが必要なのです。

発展段階4では、「自分」が軸です。
発展段階5では、「既存の価値観や認識の枠組みを打ち壊」すことが必要です。

つまり、発展段階4から発展段階5へ行くには、「全否定」「破壊」が必要なのです。

実際、加藤氏は以下のように指摘しています。

発達段階4は、しっかりと自分なりの軸や専門性を確立する時期ですが、そこから発達段階5に向かうためには、他の領域へ越境し、異質な他者や異分野などに接する、つまりある種のイバラの道を歩むことが重要になりますが、イバラの道に踏み出していける人が少ないことが、発達段階5の出現率が低い要因かもしれません。

例えば、私は日本企業の40代マネジャーたちと話す機会が多いのですが、彼らの多くは、自分たちと価値観が大きく異なる20代メンバーをどうやってマネジメントしたらよいか分からないと言います。しかし、よくよく話を聞いてみると、真剣に若者と向き合ったり、ぶつかったりする経験は意外となかったりします。

つまり、自分の価値観の枠組みから一歩外の世界に足を踏み出し、異質な他者と対峙することを通じて、自らの価値観を新たに構築していくというアンラーンを迫られる経験が少ないことが、段階4から5への移行を妨げている要因だと思います。


3、まとめ(もっとシンプルに!)

いかがでしたでしょうか?

発達心理学でよく見られる「発達段階」は、各段階の解説だけ見て分かったつもりになると、その言葉の「呪縛」に囚われ、かえって次の段階からは遠ざかってしまう危険があるのではないか、という個人的感想をご紹介してきました。

面白いもので(私が知る限りですが)、こうした発達段階は、最終段階に行くには、その一つ前の段階を「破壊」する必要があります。

そして、その「破壊」の対象は「自分」であることが多いのです。

なんか、宗教的な感じもしますが、もっと身近な、「自分ではなく人のために」という、非常に簡単な心掛け、心の持ちよう、とも言えるような気がします。

理屈をつけて心理学なんて学ぶ前に、人として当たり前のことをきちんと、とことんまでやる、ということに尽きるのでは?と、ぐるっと一周回って、思ってしまいました。

とはいえ、簡単で当たり前のことほど、難しい、ですよね。



最後までお読みいただきありがとうございました。

小学生の道徳みたいな結論で申し訳ありませんが、何か参考になるところがあれば嬉しいです。


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