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ハーバートを継ぐ者。#9
ガレンジーは靴底をカツカツと鳴らして階段を降りて歩道橋の最後の段数に踵を返し、事務所の方へ駆け出した。
事務所では相変わらずトラックの窓から半身を乗り出して窓口の人間と争っている。窓口の人間は小太りの男性で威風堂々とした雰囲気があったが突き出た下っ腹と禿げ上がった頭のせいで頼りになる管理職からだらしのない中年野郎に成り下がっていた。
運転手は依然落ち着いた様子で話している。平静を装っている
ハーバートを継ぐ者。#6
「分かったって何がですか?」ストロニークは聞いた。
ガレンジーは芝生を踏みつけて唇に人差し指を当てながら「この…え…と何だっけ…そうだ断面を見る限り、円状の焼け跡でないからダイナマイトじゃないよね。今主流のダイナマイトを使わない粋な犯罪者達の仕業であることは一目瞭然で……」と言葉を切った。
スコフィールドが手帳を取り出して言葉を繋ぐ。「レシピが複雑な硫化鉄素材の爆弾だ。ディリンジャーがその手
ハーバートを継ぐ者。#2
刑務所の裏側に一台の車が停まった。真っ黒なSUVだ。車輪が徐々にスピードを緩めると正式な駐車スペースがすぐ横にあるのにも関わらず、それを突っ切って刑務所の西棟の壁の裏に停まった。
扉が開くと操縦席と助手席、その後ろの席から合わせて六人の男が出てきた。皆黒か茶色の革靴を履いていて、その長身と奇麗な目鼻立ち。洗練されたスーツの着こなし具合と体格のバランスが男達の男性的魅力を一層引き出していた。