ハーバートを継ぐ者。#5
「こんなに容易く侵入されて十三人も失った上に、マイケル・デリンジャーとその他の犯罪者を逃しただと!?」ニオス刑務所の所長ベリンダ・ストロニークは報告してきた職員に向かって怒号を上げた。
怒鳴り声を上げられた職員は怯えたように首をすくめる。「はい‥全てデリンジャーの思惑だった。我々はずっと手の上で踊らされていた。そう認めざるを得ません‥‥」
「なぁにが認めざるを得ないだ!!!私が出張で三日開けたと思ったらこれか!!畜生‥これからやってくる警察のお偉方になんて言えばいいんだ‥‥ゲンジー課長はガレンジーとスコフィールドを寄越すといっている‥‥俺はあいつらが苦手なんだ‥‥」
負け犬め。公務員としての権限はそっちの方が強いはずなのにどうして一刑事にそこまで恐れをなしてるんだ。
もしガレンジーとスコフィールドが来たらいつものように要領の得ない返答をしてガン詰めされるが良い。
先程から怒鳴られている刑務官のダンテ・サーチェンスは腹の中でそう嘲った。
どうしてこんなヘタレ童貞が一刑務所の管理を任されているんだ。まったく解せない。それよりも人望もあって優秀な俺に所長を一任するべきだ。
ぺこりぺこりと頭を下げながら心の中では踵で上司の頭をぐりぐりと押さえつけていた。
そんな時、スコフィールドとガレンジーが到着したとの知らせが入った。
ストロニークの目には明らかに狼狽が走っていた。
短く舌打ちすると足速に玄関へ向かった。サーチェンスもそれに続く。
既に、コートを羽織った二人の若刑事が中へ入っていた。ガレンジーは応接に駆けつけた職員にコートを投げた。
スコフィールドはサーチェンスを一瞥してストロニークに会釈した。「久しぶりですな。例のクレーン事件以来ですかな?」妙に威圧感のあるスコフィールドの一言一句にすっかり萎縮したのか、ストロニークは額に汗を伝わせながら「あ、あぁ‥‥久しぶりですな‥‥」と途切れ途切れの言葉でいった。
そしてストロニークの一番苦手なガレンジーが近づいてくる。
「あぁ、ガレンジー刑事、これはこれは‥‥‥」
「前工場は面白いと聞くけど、あんたのはドーナツを食べない警官並みにいけてない。さっさと状況を教えて。」
無愛想に跳ね除けた。
サーチェンスは良い気味だと思った。
「えぇと、まずは被害者のリストです。」
「そんなものはいいから破壊された現場を見せてよ。」
「はぁ‥‥‥」
そうして一同は外へ出て爆破された壁を見に行った。
スコフィールドとガレンジーはしきりに、断面を見ていた。
ガレンジーは開口した。「分かったよ。」
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