ジャックは私です。#11
間部は受付の近くの柱にもたれて人差し指をしきりに動かしていた。
まだか。あれから十五分も経っているのに、今だに亀岡に繋がる様子はない。ただ何度も聞いたことのある呼び出し音が辺りに響くばかりだ。
そんな時、尾身がエレベーターから降りてくる。手ぶらで間部に近づいてくる。
「収穫あったかい?」間部はイラつきながら問う。。
「あぁるもくそも俺と警官二人で入ろうとしたんだが頑なに入れてくれないんだよ。それで公務執行妨害だぞって脅したんだがこっちだって営業妨害だとかいいだして収拾つかないからもう帰ってきたよ。
ったく・・・・」
「病院の連中はバカが多いからな。」
「そうだよ・・・子供の頃は気づかなかったよ・・・・」
男性の遺体が発見されたのは新宿のアパートの一室。側には遺書と酒の瓶が置かれていた。
遺書の内容はこうだ。
「私は死ぬことにしました。罪悪感を抑えれそうにないのです。
終夜眠りにつく時いつもあの少女達の顔が浮かびます。何故こんなことをしてしまったのか自分でも分かりません。
まだまだ可能性のあった若者の命を奪ってしまい申し訳ないと思っています。
切り裂きジャックという人物を知っていますか?彼は五人を殺害しても尚捕まっていません。
私はそんなジャックに憧れていました。私は殺しの欲求を抑えられませんでした。
次は誰にその刃が向くか分かりません。
ここで終わりにします。二つの事件の犯人は私です。ジャックは私です。
さようなら。」
間部は遺書を落とした。尾身も吐息をついた。場は静寂に包まれた。
「本当に・・・・この亀岡が・・・犯人だったのか?」間部は力なく言葉を繋ぐ。
答える者はいない。
「もう・・・犯人はこの世にいないのか?」
尾身は首を撫でた。
「この遺書・・・・本物か?本物というか・・・・亀岡が書いたものなのか?・・・真犯人が偽装したかもしれないじゃないか!そうだ、鑑識に回せ。それで・・・」
「間部!!」尾身が静止する。
「もう・・・・・犯人は死んだんだ。俺だって納得いってないさ・・・・・動機だって判明してないし・・・だけどな・・・遺書には亀岡が犯人だっていってるんだから・・・」
「だからその遺書が亀岡本人が書いたものじゃないかもしれないじゃないか!!早く鑑識に・・・」
「犯人はもう死んだんだ!」
「・・・・・・・・・・」
「お前の熱意は凄いと思う。被害者の魂を供養してやりたいんだろ?だけど・・・犯人に辿り着こうと必死で捜査して、今この場にいることも充分供養なんじゃないか?」
「・・・・・・・」
「さぁ・・・死体を下ろそう・・・・」
次の日の新聞で事件の犯人が判明したこと、雨宮啓介の誤認逮捕に対する謝罪、雨宮国立病院への名誉毀損に対する謝罪などが報道された。
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