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短編小説

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電車の中/あるエピソードとそこから生まれた物語

電車の中/あるエピソードとそこから生まれた物語

 今でもずっと羨ましいエピソードがある。
 十年以上前だが、新聞で読んだ読者からのエッセイを掲載する投稿で、と 
 ても印象深く残っているものがある。
 あるご婦人がご主人とのエピソードを綴ったお話なのだが、こんなことあ
 るんだと笑ってしまうと同時に、人間的で「なんだかいいなあ」と思わず
 呟いてしまいました。全文は記憶していませんが、大まかに説明するとこ
 んなお話です。
 ご夫婦の姪っ子さん

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短編小説/昼下がりの男たち 

短編小説/昼下がりの男たち 

 
 6月の土曜日の昼前のことだった。
 妻が突然「お腹が痛い」と訴え、ダイニングテーブルに掴まりながらしゃがみこみ、唸り声を漏らすと、しまいに蹲ってしまった。救急車は近所に迷惑掛けるから嫌だと言うので、僕の車で一番近い総合病院に連れていった。
 痛みが強いので救急で診てもらった。血液検査のあとにCTも撮ったりと、検査結果が分かるまで3時間以上掛かった。痛みの原因は胆管に石が詰まっていた胆嚢炎だっ

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短編小説/カジイさん

短編小説/カジイさん

「あのね、今日からしばらく知り合いの人が一緒に住むことになったから。カジイさんっていうの。いい人だから祐介も仲良くしてね」
 
 学童に迎えに来たママが車の中で言った。初めて聞く名前だった。
「誰それ」
「お友達よ。男の人」

 運転する横顔が綻ぶ。僕はママの機嫌のバロメーターを計るプロだから、今日はかなりいいとすぐ分かる。ただのお迎えなのに花柄のワンピースなんか着ているのがその証拠だ。
 家に帰

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短編小説/世界一の美女

短編小説/世界一の美女

   
   『○月○日 世界一の美女来たる!』

 ある日、こんなポスターが町の至る所に貼られた。キャッチコピーの横には、美女らしき女性のシルエットが浮かび上がっている。ウェーブした長い髪に細身のスタイル。それはまさに美女を思わせる横顔で、町の男たちはポスターの前に群がって、どんな美女が来るのかと口々に言い合った。

「あの女優みたいな美女じゃないか?」
「いやいや美女と言えば最近よくCMに出て

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短編小説/初夏

短編小説/初夏

「カッツン」
 声を掛けると、カッツンはギターを爪弾く手を止めて、のそりとこちらを振り向いた。
「いいのかよ。出棺しちゃったぜ。今から急げばまだ親父さんと最後の対面できるぞ」
 しかしカッツンは顔を元に戻すと「いいんだよ」と、またギターを鳴らした。カーキ色のジャケットを羽織る角張った背中。
 村外れの高台にある岩山はカッツンのお気に入りスポット。昔もよくここでギターを弾いていた。以前はもう少し草に

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(短編小説) 三本足のルル

(短編小説) 三本足のルル

 ここから見える岬は自殺の名所で、毎年数十人が死を求めてやってくる。
だいたいみんな明るい時間に下見に来て、夕方ぐらいに一度淵に立って決意を確かめる。ひとけがなければそのまま飛び降りてしまう者もいるが、何かを見つけて踏みとどまることも少なくない。その何かは人それぞれだ。
 落ちてゆく夕日が海に溶けてく風景の美しさに心を打たれ、もう一度頑張ろうと奮起したり、ふと取り出した携帯電話の中にかけがえのない

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