今田ずんばあらず、旅する小説家

旅する小説家。随筆家。文芸個人サークル〈ドジョウ街道宿場町〉代表。代表作は東北津波被災…

今田ずんばあらず、旅する小説家

旅する小説家。随筆家。文芸個人サークル〈ドジョウ街道宿場町〉代表。代表作は東北津波被災地を旅する青春小説『イリエの情景~被災地さんぽめぐり~』シリーズ(全3巻)。いつでもどこでも同人誌即売会用のブースを設営するのが趣味。

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産声をあげる日-ある文芸評論家から作品の感想をいただいた話と、恩師の話

先日、ある文芸評論家と文通する機会があった。 自身の作品を読んでもらい、感想をいただくことを前提とした文通である。 ことの発端は、1本の電話からだった。 先週土曜…

広島で靴の音を鳴らす。 文学フリマ広島6前日譚前篇

広島に着いた。 2月24日、土曜日のことだ。 新幹線の改札を抜けてコンコースへ至ると、その人の多さに驚いた。 新幹線に乗り換えた小田原駅や途中の名古屋駅では海外の人…

証とはそういうものだ

初めてのぞみに乗った。 いや、もしかすると幼い頃に父に連れられて乗ったことがあるかもしれないけれど。というか、電車好きな父のことだから、乗せないわけがない。 だか…

だから僕は他人の為に書くのをやめた。

新幹線に乗っている。 明日開催される文学フリマ京都の遠征のためだ。 小田原駅を出てしばらく経ち、北の峰に新東名と東名の高架が見え、雲に隠れた(大抵この付近を訪ね…

記憶の道、間近の車窓

急遽、文学フリマ福岡には新幹線で向かうことになった。人生で何度か乗った覚えがあるけど、ここ数年は乗っていなかった。長距離の旅は、車を使っていたからだ。 小田原駅…

書けない。

僕は今、文章が書けない。この夏で3年目に突入する。 きっと、ここでいう文章とは「文章」と書き表したほうが適切かもしれない。自分の「文章」を読むと、気持ちが悪くて仕…

霧がかる夕焼けと湘南平

西の空が茜色できれいだった。 こんな日はドライブをしようと地元の田園を走らせていたら、湘南平に霧がかかっているのに気がついた。 湘南平。 標高約180M、平塚の西南に…

「生まれてきてくれてありがとう」という言葉に、違和感。

「誕生日おめでとうと言われるのは嫌なんです。歳とっておばさんになってく感じがするじゃないですか。だから誕生日が嫌いだったんですけど、『生れてきてくれてありがとう…

灰皿を囲んで煙草を吸えない。吸いたいけれど。

僕はおそらく、煙草を吸うのが遅い。 「おそらく」というのは、他人が嗜む様子を見る機会がそれほどないからだ。でも数ヶ月に1回程度、見知った方と共にする機会があって、…

アニメぼっち・ざ・ろっく!最終回文化祭ライブで演奏されなかった幻の3曲目を考察する。

覚悟はしていたが、とんでもなく長いnoteになってしまった。 なにせ今回はアルバム『結束バンド』収録曲全曲の歌詞精読が不可欠な部分であるためである。 毎度長いタイト…

アニメぼっち・ざ・ろっく!「忘れてやらない」「星座になれたら」の制作時期考察、山田がアクロバティックだと判明する。

『ぼっち・ざ・ろっく!』最終回の文化祭ライブは、まるでライブを観ているような心地になる演出に心痺れた。 細やかな演出のひとつひとつをピックアップするのもいいかも…

アニメぼっち・ざ・ろっく!第8話ライブでカットされた「第3の曲」の正体とは?

メタな事情はウィキペディアや各所インタビューに委ねることとし、 このnoteではひたすら『ぼっち・ざ・ろっく!』作品世界に没頭したうえで語っていこうと思う。 本note…

アニメぼっち・ざ・ろっく!後藤ひとりが結束バンドに加入したのは何月何日かを考察する。

ぼっち・ざ・ろっく! こんなに熱中できる作品が世の中に存在するとは思わなかった。 今なお世界のどこかの押入れでギターをかき鳴らしているのではないかと思えてならな…

表出と内省、殻斗と胚珠

ものを書くということについて、ここ数ヶ月思いを馳せては霧散していくあれこれを記そうと思う。 今年は自らを見つめる年となった。 そもそも発表した作品は片手で数える…

無敵の人を救い、ひいては絶望に浸る人々を救うための探究序説、その思索

無敵の人とは、意図的であれ偶然であれ、社会から孤立した(あるいはそう信じて疑わなくなった)者が選ぶ、二者択一のうちの、自殺ではないほうのおこないである。 社会的…

合法ジャンキーの手記‐モンスターエナジー片手に

あらかじめ言っておこう。これは個人の経験であり、飲めば全員が同じ心地になるとは限らない。 ゆえに、これは僕個人の話であり、好き勝手に書く。 モンスターエナジー、…

産声をあげる日-ある文芸評論家から作品の感想をいただいた話と、恩師の話

産声をあげる日-ある文芸評論家から作品の感想をいただいた話と、恩師の話

先日、ある文芸評論家と文通する機会があった。
自身の作品を読んでもらい、感想をいただくことを前提とした文通である。

ことの発端は、1本の電話からだった。

先週土曜日の朝、電話が鳴った。電話帳未登録の番号であった。
その日は仕事で、ちょうど出勤準備に追われていたこともあり、応えることができなかったがしかし、ひっきりなしにスマホは揺れつづけるのだった。
仕事の休憩時間に入るまで、2時間おきに不在着

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広島で靴の音を鳴らす。 文学フリマ広島6前日譚前篇

広島で靴の音を鳴らす。 文学フリマ広島6前日譚前篇

広島に着いた。
2月24日、土曜日のことだ。

新幹線の改札を抜けてコンコースへ至ると、その人の多さに驚いた。
新幹線に乗り換えた小田原駅や途中の名古屋駅では海外の人たちの姿が目立った印象だったけど、
広島では国内の人たち、とりわけ地元の人が多いように思えた。
ただの認知バイアスであることは承知の上でだけど。

僕は広島という街のことが好きだ。

さあ、歩こう。
先日迎えたばかりのOn Cloud

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証とはそういうものだ

証とはそういうものだ

初めてのぞみに乗った。
いや、もしかすると幼い頃に父に連れられて乗ったことがあるかもしれないけれど。というか、電車好きな父のことだから、乗せないわけがない。
だからこう訂正すべきだろう。

初めてひとりでのぞみに乗った。
名古屋駅で乗り換えだった。
しばしホームで待っていると、東京方面の線路の先から新幹線の白いビームがまぶしく見えた。僕は思いがけず心が浮き立った。大して期待もしてなかったのに、のぞ

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だから僕は他人の為に書くのをやめた。

だから僕は他人の為に書くのをやめた。

新幹線に乗っている。
明日開催される文学フリマ京都の遠征のためだ。

小田原駅を出てしばらく経ち、北の峰に新東名と東名の高架が見え、雲に隠れた(大抵この付近を訪ねると隠れている)富士山が主張をし始めたので、まあ静岡のそこらへんなのだろう。





今、僕は小説を書いている。
このたった一行を記すことができたことに、僕は僕の感じる以上の嬉しさを抱いている。
とても、とても。

昨年の今頃は、

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記憶の道、間近の車窓

記憶の道、間近の車窓

急遽、文学フリマ福岡には新幹線で向かうことになった。人生で何度か乗った覚えがあるけど、ここ数年は乗っていなかった。長距離の旅は、車を使っていたからだ。

小田原駅からこだまに乗っている。聞き覚えのある地名を冠する駅まで、あっという間に辿り着き、あっという間に過ぎていく。これがひかりやのぞみだったら、あっと口を開くまでもなくいつの間にか過ぎ去っていくのだと思うと、この乗り物は実に魅惑的だ。

車窓を

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書けない。

書けない。

僕は今、文章が書けない。この夏で3年目に突入する。
きっと、ここでいう文章とは「文章」と書き表したほうが適切かもしれない。自分の「文章」を読むと、気持ちが悪くて仕方がなくなる。特に小説の、人間やそれに準ずる輩の言葉に、気味悪さというか、魂のようなもののない、虚ろなものに思えて、拒絶反応が起こるのだ。
ひとえに自信のなさから生じるものだと思うし、もはや完治なんか期待しちゃいけないのかとも思ってしまう

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霧がかる夕焼けと湘南平

霧がかる夕焼けと湘南平

西の空が茜色できれいだった。
こんな日はドライブをしようと地元の田園を走らせていたら、湘南平に霧がかかっているのに気がついた。

湘南平。
標高約180M、平塚の西南にある山の名前だ。
正しくはその山の頂上を指す名称で、千畳敷とも呼ばれる。一帯が平らで、散歩やキャッチボール、季節によっては花見をする地元の人たちが訪れる。

このちいさな山の麓で育った僕にとって、それこそ「親の顔より見た」と形容でき

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「生まれてきてくれてありがとう」という言葉に、違和感。

「生まれてきてくれてありがとう」という言葉に、違和感。

「誕生日おめでとうと言われるのは嫌なんです。歳とっておばさんになってく感じがするじゃないですか。だから誕生日が嫌いだったんですけど、『生れてきてくれてありがとう』って言われたことがあって、それで、ちょっとだけ誕生日も悪くないかなって思ったんです」

数年前に、そんな感じのことをラジオ番組のパーソナリティが言っていた。
いつものようにドライブ中のことで、そのときは「こんなふうに思う人もいるんだな」程

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灰皿を囲んで煙草を吸えない。吸いたいけれど。

灰皿を囲んで煙草を吸えない。吸いたいけれど。

僕はおそらく、煙草を吸うのが遅い。
「おそらく」というのは、他人が嗜む様子を見る機会がそれほどないからだ。でも数ヶ月に1回程度、見知った方と共にする機会があって、自分が半分ほど進んだ時点で相手は1本終えている。自分よりゆっくり嗜む方と相席したことがないので、「おそらく」煙草を吸うのが遅い、と思うわけだ。

煙草をはじめたのは、大学を卒業して1年後、当時勤めていた仕事に疲弊して、「夜逃げ」をしたあと

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アニメぼっち・ざ・ろっく!最終回文化祭ライブで演奏されなかった幻の3曲目を考察する。

アニメぼっち・ざ・ろっく!最終回文化祭ライブで演奏されなかった幻の3曲目を考察する。

覚悟はしていたが、とんでもなく長いnoteになってしまった。
なにせ今回はアルバム『結束バンド』収録曲全曲の歌詞精読が不可欠な部分であるためである。

毎度長いタイトルで恐縮なのだが、今回のタイトルを正しく書くならば「アニメぼっち・ざ・ろっく!最終回文化祭ライブで演奏されなかった幻の3曲目を考察するためにアルバム『結束バンド』の全曲を考察し導きだす」といった具合になるだろう。

図らずも2万字を超

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アニメぼっち・ざ・ろっく!「忘れてやらない」「星座になれたら」の制作時期考察、山田がアクロバティックだと判明する。

アニメぼっち・ざ・ろっく!「忘れてやらない」「星座になれたら」の制作時期考察、山田がアクロバティックだと判明する。

『ぼっち・ざ・ろっく!』最終回の文化祭ライブは、まるでライブを観ているような心地になる演出に心痺れた。
細やかな演出のひとつひとつをピックアップするのもいいかもしれないが、今回は前回に引き続き、

アルバム『結束バンド』収録曲が、作中内時間のいつごろ制作されたのかを検討していきたい。

第3回目は、文化祭ライブに焦点を当てる。

10月2日(日)秀華祭2日目
『ぼっち・ざ・ろっく!』1期最終話に行

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アニメぼっち・ざ・ろっく!第8話ライブでカットされた「第3の曲」の正体とは?

アニメぼっち・ざ・ろっく!第8話ライブでカットされた「第3の曲」の正体とは?

メタな事情はウィキペディアや各所インタビューに委ねることとし、
このnoteではひたすら『ぼっち・ざ・ろっく!』作品世界に没頭したうえで語っていこうと思う。

本noteを読むだけでも把握できる内容になるよう努めたが、
本シリーズ初回(前回)のこちらも併せて読んでいただけると、より理解が深まると思うので、ぜひ。

アルバム『結束バンド』のコンセプト

アルバム『結束バンド』は、結束バンドの曲を収録

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アニメぼっち・ざ・ろっく!後藤ひとりが結束バンドに加入したのは何月何日かを考察する。

アニメぼっち・ざ・ろっく!後藤ひとりが結束バンドに加入したのは何月何日かを考察する。

ぼっち・ざ・ろっく!

こんなに熱中できる作品が世の中に存在するとは思わなかった。
今なお世界のどこかの押入れでギターをかき鳴らしているのではないかと思えてならない。
先月28日に発売されたアルバム『結束バンド』も何周したか分からない。
このCDを聴きながら、僕はふと疑問に思った。

ぼっちは、あるいは山田は、この曲たちをどのタイミングで手掛けたのだろうか。

当然メタ的なことをいえば、アニメ放映

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表出と内省、殻斗と胚珠

表出と内省、殻斗と胚珠

ものを書くということについて、ここ数ヶ月思いを馳せては霧散していくあれこれを記そうと思う。

今年は自らを見つめる年となった。
そもそも発表した作品は片手で数える程度であった。

昨年の今日から週間連載をした『ユーメと命がけの夢想家』からはじまり、
29歳の最後の日に『海の見える図書室 真夏の章』を出し、
7月30日に脚本を手掛けた『【鬼っ子ハンターついなちゃん】ボイスドラマ 第44話 前編』が発

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無敵の人を救い、ひいては絶望に浸る人々を救うための探究序説、その思索

無敵の人を救い、ひいては絶望に浸る人々を救うための探究序説、その思索

無敵の人とは、意図的であれ偶然であれ、社会から孤立した(あるいはそう信じて疑わなくなった)者が選ぶ、二者択一のうちの、自殺ではないほうのおこないである。
社会的に失うものがなにひとつとしてないがために、躊躇いなく、むしろ犯罪を起こすことそれ自体に希望を見出し、実践する者である。

集団を排除してもそこに活路は一切ない。
むしろ、排除することは彼らの決断を助長する行為であり、協力者である。

そして

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合法ジャンキーの手記‐モンスターエナジー片手に

合法ジャンキーの手記‐モンスターエナジー片手に

あらかじめ言っておこう。これは個人の経験であり、飲めば全員が同じ心地になるとは限らない。
ゆえに、これは僕個人の話であり、好き勝手に書く。

モンスターエナジー、変化を自覚する飲み物モンスターエナジーというドリンクは、飲むと身体に変化を生じさせる。
鼓動のたび心臓が詰まるような感覚が生じ、体温が上昇し、視界があかあか鮮明になり、感覚が過度に研ぎ澄まされる。
ハッキリ異常とわかる感覚に包まれ、いわゆ

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