今田ずんばあらず、旅する小説家

旅する小説家。随筆家。文芸個人サークル〈ドジョウ街道宿場町〉代表。代表作は東北津波被災地を旅する青春小説『イリエの情景~被災地さんぽめぐり~』シリーズ(全3巻)。いつでもどこでも同人誌即売会用のブースを設営するのが趣味。

今田ずんばあらず、旅する小説家

旅する小説家。随筆家。文芸個人サークル〈ドジョウ街道宿場町〉代表。代表作は東北津波被災地を旅する青春小説『イリエの情景~被災地さんぽめぐり~』シリーズ(全3巻)。いつでもどこでも同人誌即売会用のブースを設営するのが趣味。

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    産声をあげる日-ある文芸評論家から作品の感想をいただいた話と、恩師の話

    先日、ある文芸評論家と文通する機会があった。 自身の作品を読んでもらい、感想をいただくことを前提とした文通である。 ことの発端は、1本の電話からだった。 先週土曜日の朝、電話が鳴った。電話帳未登録の番号であった。 その日は仕事で、ちょうど出勤準備に追われていたこともあり、応えることができなかったがしかし、ひっきりなしにスマホは揺れつづけるのだった。 仕事の休憩時間に入るまで、2時間おきに不在着信があった。 折り返すと、それは高校時代の恩師であった。 当時僕は弓道部に所属

      • アニメぼっち・ざ・ろっく!最終回文化祭ライブで演奏されなかった幻の3曲目を考察する。

        覚悟はしていたが、とんでもなく長いnoteになってしまった。 なにせ今回はアルバム『結束バンド』収録曲全曲の歌詞精読が不可欠な部分であるためである。 毎度長いタイトルで恐縮なのだが、今回のタイトルを正しく書くならば「アニメぼっち・ざ・ろっく!最終回文化祭ライブで演奏されなかった幻の3曲目を考察するためにアルバム『結束バンド』の全曲を考察し導きだす」といった具合になるだろう。 図らずも2万字を超えてしまった。 「しおり」機能のないnote仕様のため、いつも以上に目次を多めに

        • アニメぼっち・ざ・ろっく!「忘れてやらない」「星座になれたら」の制作時期考察、山田がアクロバティックだと判明する。

          『ぼっち・ざ・ろっく!』最終回の文化祭ライブは、まるでライブを観ているような心地になる演出に心痺れた。 細やかな演出のひとつひとつをピックアップするのもいいかもしれないが、今回は前回に引き続き、 アルバム『結束バンド』収録曲が、作中内時間のいつごろ制作されたのかを検討していきたい。 第3回目は、文化祭ライブに焦点を当てる。 10月2日(日)秀華祭2日目 『ぼっち・ざ・ろっく!』1期最終話に行われた文化祭ライブのセットリストは、 1.忘れてやらない 2.星座になれたら

          • アニメぼっち・ざ・ろっく!第8話ライブでカットされた「第3の曲」の正体とは?

            メタな事情はウィキペディアや各所インタビューに委ねることとし、 このnoteではひたすら『ぼっち・ざ・ろっく!』作品世界に没頭したうえで語っていこうと思う。 本noteを読むだけでも把握できる内容になるよう努めたが、 本シリーズ初回(前回)のこちらも併せて読んでいただけると、より理解が深まると思うので、ぜひ。 アルバム『結束バンド』のコンセプト アルバム『結束バンド』は、結束バンドの曲を収録したアルバムである。 しかしこの認識は一方では正しいが、もう一方では説明が不充分

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          • ぼっち・ざ・ろっく!にひたる
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          • 思索と創作
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          • 【小説】ユーメと命がけの夢想家
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          • 『あめつち』語り
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          • 旅と日々
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            アニメぼっち・ざ・ろっく!後藤ひとりが結束バンドに加入したのは何月何日かを考察する。

            ぼっち・ざ・ろっく! こんなに熱中できる作品が世の中に存在するとは思わなかった。 今なお世界のどこかの押入れでギターをかき鳴らしているのではないかと思えてならない。 先月28日に発売されたアルバム『結束バンド』も何周したか分からない。 このCDを聴きながら、僕はふと疑問に思った。 ぼっちは、あるいは山田は、この曲たちをどのタイミングで手掛けたのだろうか。 当然メタ的なことをいえば、アニメ放映に合わせプロのミュージシャンが2年以上の歳月をかけて楽曲制作したということは理解

            表出と内省、殻斗と胚珠

            ものを書くということについて、ここ数ヶ月思いを馳せては霧散していくあれこれを記そうと思う。 今年は自らを見つめる年となった。 そもそも発表した作品は片手で数える程度であった。 昨年の今日から週間連載をした『ユーメと命がけの夢想家』からはじまり、 29歳の最後の日に『海の見える図書室 真夏の章』を出し、 7月30日に脚本を手掛けた『【鬼っ子ハンターついなちゃん】ボイスドラマ 第44話 前編』が発表された。 (収録自体は2020年に行われている。ここに詳しい) 先日の冬コミで

            無敵の人を救い、ひいては絶望に浸る人々を救うための探究序説、その思索

            無敵の人とは、意図的であれ偶然であれ、社会から孤立した(あるいはそう信じて疑わなくなった)者が選ぶ、二者択一のうちの、自殺ではないほうのおこないである。 社会的に失うものがなにひとつとしてないがために、躊躇いなく、むしろ犯罪を起こすことそれ自体に希望を見出し、実践する者である。 集団を排除してもそこに活路は一切ない。 むしろ、排除することは彼らの決断を助長する行為であり、協力者である。 そして無敵の人は、裁かれることに希望を見いだす。 裁かれ、そして死に至ることに救いを抱

            合法ジャンキーの手記‐モンスターエナジー片手に

            あらかじめ言っておこう。これは個人の経験であり、飲めば全員が同じ心地になるとは限らない。 ゆえに、これは僕個人の話であり、好き勝手に書く。 モンスターエナジー、変化を自覚する飲み物モンスターエナジーというドリンクは、飲むと身体に変化を生じさせる。 鼓動のたび心臓が詰まるような感覚が生じ、体温が上昇し、視界があかあか鮮明になり、感覚が過度に研ぎ澄まされる。 ハッキリ異常とわかる感覚に包まれ、いわゆる命の危機的な感触を気軽にひたることができる。 飲まないほうが身のためであろう。

            「レベルを上げて物理で殴りたい」 今の、ちっとも発信できずにいる自分が何を言っても、たとえそれが世界を変革させるとてつもない大発見であろうと、誰も見向きしてくれない。 だから、小説を書きながら、呪いみたいにぼやいてる。 レベルを上げて物理で殴りたい。

            【第4回】模倣のなかで僕はつよくなる【ほ】遙か彼方の空の下、桜舞い散るミツナの詩(124P)

             『あめつちの言ノ葉』は想像を上回るペースで頒布することができ、 2022年6月19日、なんと最後の1冊をお渡しすることとなった。  すなわち完全頒布達成。世に言う「完売」である。御礼である。  ありがとうございます、ありがとうございます……。  もうこの世に頒布できる『あめつちの言ノ葉』はないのだが、 当然お手元に『あめつちの言ノ葉』がある方がいらっしゃるわけで、 皆様のためにも、この連載は続けたいと思う。 (亀連載で本当に申し訳ないです……)  さて今回は、今田ずんば

            『海の見える図書室 真夏の章』、出ます。

            いとおしい物語とは、それを読みつづけた読者と、それを書きつづけた作者による、内輪ネタへのいざないなのかもしれない……。

            観戦者よ

            観戦者とは、大抵残虐で、残酷な生きものである。 赤勝てだの、 白勝てだの、 A選手は今シーズン50本打つに違いないだの、 B選手の調子が優れないからスタメンから外せだの、 パスをつなげようとしないから負けるだの、 当事者の立場なんてさておいて、 彼らの行動や思惑を口にすることで 仲間との交流をする生きものだからである。 特筆すべきは、そうした発言の数々に関して、一切責任を負う必要がないという点だ。 酒とつまみを手に観戦し、思いのたけを吐くだけ吐いて、 寝て起きれば、大抵のこ

            幕間006:サイエンス資料【ユーメと命がけの夢想家】

            前回目次◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆  まったくなにも書けなかった。今までの比ではなかった。というのも、今まではどんな難しいお題であっても、ある程度方針というものがあった。 「【黄昏時】なら、猫への加虐。【トキメキ二重奏】ならばファンタジックでソヴィエトな舞台と。そういった具合に、お題となにかを掛け合わせて、物語を書くというのが、僕の主な書き方だったんだけど」 「今回は、その『なにか』が一切なかった、と」  そうなのだ。なにひとつ引っかかることがなかった。  

            006:ついつい目のいく窓際の席【ユーメと命がけの夢想家】

            前回目次◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆  変化に乏しい我々の職場に、久方ぶりのニュースが飛び込んできた。 「我が造成課のエディカンプレラくんが、栄えある社長賞を獲得した!」  課長の紹介に、もちろんわたしは驚いた。ヒマ社員の巣窟と陰で言われる造成課から受賞者が出るなんて思いもしなかったのだ。それも、エディカンプレラくんが。 「スターバーストによる生命体生成術が、高く評価されたのだ」  エディカンプレラくん。造成課のヘンなの筆頭格。  わたしたちの仕事は泡づくりだ。

            幕間005:構造と理屈なき展開【ユーメと命がけの夢想家】

            前回目次◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「ある脚本家は、世の中にあふれるすべての物語の構造を、10の類型にまとめたというわ」 「貴種流離譚とか、勧善懲悪とかいう話?」 「それは説話の類型ね。見るなのタブー、なんてのもそうだけど置いといて。とにかく物語というのは数あれど、その構造というのは出つくされていて、いわゆる〈オリジナリティ〉というのは、もっと別の部分に宿るんでしょうね」  今日のユーメは、いつも以上にぶつくさとぼやいている。僕に向けて話してるようでいて、自らの