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アニメぼっち・ざ・ろっく!後藤ひとりが結束バンドに加入したのは何月何日かを考察する。

ぼっち・ざ・ろっく!

こんなに熱中できる作品が世の中に存在するとは思わなかった。
今なお世界のどこかの押入れでギターをかき鳴らしているのではないかと思えてならない。
先月28日に発売されたアルバム『結束バンド』も何周したか分からない。
このCDを聴きながら、僕はふと疑問に思った。

ぼっちは、あるいは山田は、この曲たちをどのタイミングで手掛けたのだろうか。

当然メタ的なことをいえば、アニメ放映に合わせプロのミュージシャンが2年以上の歳月をかけて楽曲制作したということは理解できる。
参考

しかしぼざろ世界において『結束バンド』の楽曲は結束バンドメンバーが手掛けたものであり、そして製作者サイドもそのリアリティは可能な限り突き詰めている。
それは結束バンド初のオリジナルソング「ギターと孤独と蒼い惑星」制作の描写がこまかくなされていることからもうかがえる。
となれば、「ギターと孤独と蒼い惑星」以外の楽曲も、いつ頃作られたのか、ある程度予想がつくのではないだろうか。

その一環として、ぼざろの時系列を整理することから始める必要があろう。

本シリーズは、
1、ぼざろアニメ本編内の出来事と年月日を紐付けし、
2、アルバム『結束バンド』収録曲がアニメ本編内時間のいつ頃制作されたかを検討し
3、8話の台風ライブおよび12話の文化祭ライブで未登場のセットリスト3曲目が一体なにであったのかを妄想する。

そんな内容にしていきたいと考える。

第1回目の今回は、ぼざろ本編を精読し、各シーンの日程を特定していく。

原作とアニメ版で異なる時系列

まず原作とアニメ版では時系列が異なるが、今回はアニメ版に着眼して書く。
この記事でのゴールは、「ぼっちがいつ結束バンドに加入したか」であるが、原作の場合、容易に予想が可能である。

©はまじあき/芳文社
1巻8ページ

第1巻8ページに、ギターヒーローの投稿動画「【ギター】アシッド『ハルノユキ』【弾いてみた】」の投稿日が2017年5月12日であり、これは金曜日の出来事である。

このことから、土日のあいだに書かれたコメントがつき、月曜日に、つまり5月15日にギターを背負って登校し、その放課後虹夏から勧誘を受けたのだろう、と考えられる。

一方でアニメ版の場合、

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
1話5:31

投稿日がカットされており、この時点で何日であるかはおろか、何年が舞台であるかも定かではないのだ。

ただし念のため言っておくが、『ぼっち・ざ・ろっく!』という作品は、日付を追わなければ展開が分からなくなるようなお話ではない。
ぼっちや結束バンドメンバーの成長を、のんびり眺めているだけで充分楽しめる。

しかしながら、これは製作者の意図があるのか定かではないが、注意して観てみると、この場面が何月何日であるか、ほとんどのシーンを解き明かすことができるのであった……!

ぼざろ世界のタイムライン

ではさっそくアニメ本篇を通し、明確に日付が示されている場面がどれほどあるかをピックアップしてみよう。

8月9日、虹夏と喜多ちゃん、後藤家へ訪問
8月14日、台風ライブ
8月15日~20日、ぼっち自宅でギター練習
8月30日、一般相対性理論
9月16日、秀華祭ステージ申込〆切
10月1日、秀華祭1日目
10月2日、秀華祭2日目

以上である。

実のところ、本篇の6話で結束バンドの初ライブ※が8月14日に行われることが示されるまで、日にちの描写が一切なされないのである。
※ここでいう初ライブはフルメンバーでの初ライブという意味で、第8話の台風ライブを示している。

しかしアニメ内の描写を吟味すると、以下のようなタイムラインが浮かび上がる。

2022年5月
8(日)【ギター】アシッド「ハルノユキ」【弾いてみた】と新作動画投稿
9(月)完熟マンゴーライブ
    ぼっち結束バンドに加入【ここまで1話】
10(火)第1回結束バンドミーティング
15(日)水風呂、風邪ひけギター
16(月)ぼっち初バイト、その後風邪をひく【ここまで2話】
17(火)~22(日)風邪でお休み
23(月)ぼっち二度目のバイト
    喜多ちゃん結束バンドに正式加入
24(火)喜多ちゃん、山田からギターを借りる
25(水)喜多ちゃん、ぼっちと放課後や昼休みに練習する
26(木)スタジオ練習。山田が草を食べながらスタジオ入り【ここまで3話】
27(金)雨。バンドミーティング(ぼっち作詞制作開始)

6月
4(土)ぼっち1行も歌詞が書けず苦しむ
5(日)アー写撮影
8(水)~10(金)ごろ、「ギターと孤独と蒼い惑星」歌詞完成【ここまで4話】
25(土)ぼっちの初給料日
    「ギターと孤独と蒼い惑星」楽曲完成
27(月)放課後学校で喜多ちゃんと練習
28(火)バンドマンとしての成長を見た目で表現→スターリーで練習
29(水)個人練習(喜多ちゃんは学校、ぼっちは自宅)
30(木)虹夏とバイト→スターリーで練習(虹夏は家で家事)

7月
1(金)オーディション前日最終調整
2(土)ライブオーディション【ここまで5話】

8月
4(木)金沢八景路上ライブ【ここまで6話】
5(金)スターリーで練習
9(火)虹夏と喜多ちゃん、ぼっちの家へ
12(金)結束バンドTシャツ完成
14(日)台風直撃。【ここまで7話】結束バンドフルメンバーでの初ライブ【ここまで8話】
15(月)ぼっち自宅でギター練習
16(火)ぼっち自宅でギター練習
17(水)ぼっち自宅でギター練習
18(木)ぼっち自宅でギター練習
19(金)ぼっち自宅でギター練習(おそらくスターリーで練習)
20(土)ぼっち自宅でギター練習(おそらくバイト日)
31(水)江ノ島探訪

9月
1(木)新学期【ここまで9話】、1年2組出し物決定
2(金)結束バンド秀華祭ライブ決定、SICK HACKライブ観賞【ここまで10話】
16(金)秀華祭ステージ申込〆切

10月
1日(土)秀華祭1日目
2日(日)秀華祭2日目【ここまで11話】、結束バンド文化祭ライブ
(後日ぼっちギターを買う)【ここまで12話】

以上である。

これだけ見ても「なんのこっちゃ」となるだろう。
つまるところ『ぼっち・ざ・ろっく!』という作品は、きちんと行程を把握し、齟齬や矛盾がないよう考慮したうえで、作品として不必要な部分を削っているということである。

とはいえ、本当にここまで日程を埋めることができるのか、疑問に思う方もおられるかもしれない。
というわけで、ようやく本題となるが、それぞれの根拠となったシーンを列挙していこうと思う。

なお、当然のことながら、本編ではほとんど具体的な日付が明記されていない以上、推測が多分に含まれていることはご了承願いたいし、これはあくまで一個人の趣味と暇潰しの一貫で書き記したものである。
誤りや勘違いや予測違いがあってもどうか笑って許していただければ幸いである。

アニメ本編の舞台は何年であるか

日付の特定に迫る前に、まずアニメ本編内時間が何年であるかを特定する必要がある。
実はアニメ版ぼざろに、現在が何年であるかを明確に確定する描写はほとんどない。
一方で、「たぶん2022年なんだろうな」と予感させる描写は溢れている。
スターリーや下北沢の街に張られているポスターがそれである。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
2話10:30

ポスターのなかには日付が印字されているものがあり、その多くは2021年である。
特に2021年の夏以降のポスターがよく目につくため、「この世界の舞台はたぶん最近なのだろう」と察せられる。

また同時に、スターリーは2021年頃にオープンし、以降各バンドのポスターを掲載していったとも推測できる。

閑話休題、では舞台が何年であるかの特定するには、第1話に登場する1秒程度のカットを見つけられるかにかかっている。

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1話7:30

ぼっちが教室の席で広げた雑誌『ROCK JAPON』であるが、2022年6月号であることが印字されている。
このときぼっちは声をかけられたがっており、最新のバンド語りをすることを夢見ている。
ゆえに『ROCK JAPON』6月号は最新号であると考えられ、ここから現時点で2022年であることが導き出される。

年が確定することにより、日にちと曜日が紐づけられる。
時系列を辿るためには曜日を考慮することが必要不可欠な要素であるため、『ROCK JAPON』6月号がなければ積みであった。

では2022年であることが判明したため、以降は各シーンの日にち特定に移りたい。
読みやすさの都合上、基本的に10月(最終話)からさかのぼっていく方向で進めていくことをご了承願う。


八景路上ライブ~秀華祭まで

10月1日(土)、2日(日)
秀華祭
9月16日(金)
秀華祭ステージ申込〆切

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9話22:01

秀華祭関連の日程は、9話の最終カットの秀華祭ステージ募集ポスターで明示される。
ちなみに10月の1日と2日はそれぞれ日曜日と土曜日で、舞台が2022年であることが不自然ないことへの証明でもある。


9月1日(木)
秀華祭クラス出し物決定
2日(金)
結束バンド秀華祭ライブ決定、SICK HACKライブ観賞

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
11話15:00

11話新宿FOLTにて、ライブ会場待機列シーンにある中央の案内板をよく見ると、

TONIGHT SHOW
  /2

と書かれており、その下に「SICK HACK」と思しきロゴもある。
新宿FOLTの元ネタは、実在する新宿LOFTであり、この表示板もLOFTを元にしている。
「/2」とはなんぞや、という話になるが、こちらのブログを参照すると、「TONIGHT SHOW」の下にある数字は日付であることが分かる。
つまり「/2」はSICK HACKのライブがある日、つまり今日が「9/2(金)」であると分かる。

※字が掠れているだけで12日や20日以降である可能性もよぎるが、12日は月曜日であり、前日に学校へ登校している描写があるためおかしい。20日以降は秀華祭ステージ申込〆切である16日を超過しているため矛盾してしまう。
※なお【10話9:58】に、文化祭ステージ申込を勝手に提出してしまった喜多ちゃんが「明日(申込を取り消せないか)話してみます」と語っているが、その明日は9月3日で土曜日である。おそらく棺桶状態のぼっちに取り乱しており、さらに夏休み明け間もなくで曜日感覚が狂っているため、明日も学校があると誤解をしているのかもしれない。

また、1年2組の秀華祭出し物がメイド執事喫茶に決定した日が、SICK HACKライブ前日の9月1日であることが判明する。
ちなみに9月1日は後述の通り新学期が始まる日でもあり、実はこのときぼっちは江ノ島探訪の全身筋肉痛状態であることが分かる。
(この状態で生徒会室前で激しくヘドバンしてたのすごいと思う)


8月31日(水)
江ノ島探訪
9月1日(木)
新学期

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9話21:37

江ノ島探訪の日付は、8月30日か8月31日かで大変悩ましかったが
新学期の朝、左上の日めくりカレンダーの日付が1桁らしいことが伺え、この日が9月1日であると分かる。
そして前日の江ノ島探訪は8月31日(水)となる。


8月30日(火)
一般相対性理論

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9話2:49

妹ふたりの絵日記から。


8月14日(月)~8月20日(土)
ぼっちの自宅ギター練習

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9話0:44

つまり平凡な日々が過ぎ去るシーンであるが、
19日(金)はおそらくスターリーで練習があったと思われ、その翌日はおそらくバイトがあったと思われる。
というのも、今後何度か出てくるのだが、どうも金曜日はスターリーで合わせ練習をするシーンが多く、結束バンドは金曜を定例練習日にしていると思われる。

すると【1:08】で虹夏が「ぼっちちゃん、明日のバイトもよろしくね」と語るのを思い出すくだりは、「とある夏休みの一場面」ではなく「今日の定例練習の帰り際に虹夏が掛けてくれた言葉」という具体性を持つことになる。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
9話1:25

その後LOINで「明日、シフト入れる人いるー? ちょっと用事できちゃって」という虹夏の頼みに喜多ちゃんが対応している。
ぼっちは虹夏に電話で遊ぶ約束をしようとして諦めるくだりがあるが、それは明日直接遊ぶ約束を切り出せなくなったから勇気を出して電話しようとしているのである。
あくまで文面でなく口頭で誘おうとする(けど結局断念する)のが、妙にぼっちらしい。


8月14日(日)
台風のなか、結束バンドフルメンバーでの初ライブ

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6話14:50
©はまじあき/芳文社・アニプレックス
6話01:16
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6話3:05
©はまじあき/芳文社・アニプレックス
7話11:36
©はまじあき/芳文社・アニプレックス
7話21:52

初ライブの日程描写は突出して主張が激しい。
これ以前の日程はほぼ一切描かれていないことも相まって、視聴者は強く印象を抱くことだろう。

8話の台風ライブは大きな山場の一つであり、さらに文化祭ライブやオーディションのように、ほかのエピソードとの紐づけがなく、さらに結束バンドメンバーが刻一刻と近づくこの日のために練習しているということを強調するための演出であろう。


8月12日(金)
結束バンドライブTシャツお披露目

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7話9:48

ライブTシャツに袖を通したぼっちが【7話20:32】で「明後日はライブ」と独白している。
よって、この日は8月12日(金)であることが分かる。


8月9日(火)
虹夏と喜多ちゃん、後藤家へ

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
7話14:17

後藤家で流れる天気予報に「9日」とあり、日付が判明する。


8月4日(木)
八景路上ライブ
8月5日(金)
メンバー揃ってスタジオ練習

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
6話1:10

この場面でぼっちの「ライブまであと10日なのに」という独白があり、逆算すると八景で路上ライブを行った日は8月4日(木)であることが分かる。

また、6話ラストで、

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6話21:41

ぼっちのLOIN「チケット全部売れました」に訝しんだ虹夏が、
【21:54】「明日の練習は、みんなやさしく迎えてあげよう」と語る。
ここから8月5日(金)にはメンバー全員が集まって練習する予定が入っていることが分かる。


ぼっちの初給料日~ライブオーディションまで

6月25日(土)~7月2日(土)
ぼっちの初給料日~ライブオーディション

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
5話00:18

スターリーの給料日がいつであるかは明記されていないが、状況証拠的に25日であることが想像できる。

まず給与を受け取るシーンで、バンドメンバーの服装は私服である。
(ぼっちは制服のスカートを着用しておらず、喜多ちゃんはかわいい)
平日は制服でスターリー直行であるため、この日は休日であることが分かる。

さて給料日といえば「五・十日ご・とおび」といいい、5の倍数日に支払われるのが通例である。
(無論スターリーが通例に沿わない場合もあるが、これを考えるときりがないのでさておく)
2022年6月の5の倍数日で土日に当てはまるのは、5日(日)と25日(土)のみで、5日だと後述の時系列的に矛盾が生じるので、消去法で25日であると判明する。

(2023年1月8日追記)この給料日が7月である可能性もご指摘いただいたので、それに関する話は、このnoteの最後に追記として記載した。
ご興味ある方はそちらも読んでいただけると幸いである。


初給料日が判明すると、オーディションの日も導くことができる。
給料日の1週間後、7月2日(土)である。
これは【5話6:36】で星歌は「1週間後の土曜日に演奏見て決めるから」とぼっちに語るところから判明する。

そして給料日とオーディションのあいだに挟まる日々は、
【08:41】から【14:25】で描写される。

その間のカットは
【08:41】~【09:43】ぼっちと喜多ちゃん放課後学校で練習
【09:44】~【11:02】バンドマンとしての成長を見た目で表現(きのこヘア)
【11:03】~【11:10】スターリーでの合わせ練習
【11:11】~【11:19】喜多ちゃん放課後学校で練習
【11:20】~【11:22】ぼっち自宅で練習
【11:23】~【11:28】ぼっちと虹夏バイト
【11:29】~【11:35】ぼっち、喜多ちゃん、山田、スターリーで練習
【11:36】~【11:42】虹夏、夕飯をつくりながら練習(時刻は19:25)
【11:43】~【11:43】星歌がソファに座る(虹夏の練習を見守る?)
【11:44】~【11:45】夜、山田の帰路
【11:46】~【12:10】オーディション前日最終調整(制服姿)
【12:11】~【14:25】自販機前、夢語り

このカットが、時系列順に並んでいると仮定すると、

6/27(月)放課後学校で喜多ちゃんと練習
28(火)バンドマンとしての成長を見た目で表現→スターリーで練習
29(水)個人練習(喜多ちゃんは学校、ぼっちは自宅)
30(木)虹夏とバイト→スターリーで練習(虹夏は家で家事)
7/1(金)オーディション前日最終調整→自販機

と、このようにきれいに並べられる。
また、オーディションの前日最終調整でメンバーが制服姿であることから、この日は金曜日で、またその翌日が土曜日となり、スターリーの給料日が25日であることが確定する。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
5話11:39

6月30日の虹夏練習シーンは、外が夕方であるため時間がズレているようにも思えるが、その日の日没は19時2分である。
この場面が(数秒前の時計カットが示すように)19時25分であるとすると、トワイライトな夕景があっても頷ける。




また、結束バンドのリーダーである虹夏も、そんな姉に頼っているきらいがあると見ている。

初バイトの前日~初給料日まで

さて、ここまで個別に取り扱ってきた日にち特定だが、
給与日以前の日程を決めるには、包括して考える必要がある。
まず検討する必要があるのは、ぼっちの初任給である。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
5話00:23

6月25日の初任給で描写されるのは、1万円札1枚である。
よく考えると妙な話で、高校生のバイトだからといって、あまりにも少ない額ではないだろうか。

2022年5月の東京都最低賃金は時給1041円であり、ぼっちの時給もこの最低賃金だと仮定すると、
1万円札1枚(+小銭少々)の給与というのは勤務時間は9.7~10.5時間であると計算できる。

これが長いのか短いのか。
では次に1日の勤務時間を考えてみよう。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
2話14:23

2話の、ぼっち初バイトの勤務時間は16時ごろ~21時ごろまでの5時間勤務であることが伺える。(【14:16】と【21:32】の時計参照)

一方次のバイト勤務の描写は、喜多ちゃんがスターリーで働いた第3話であるが、
16時半になっても働く描写がない。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
3話11:18
このあと喜多ちゃんがメイド姿で働く描写に続く

おそらく両日合計で10分~20分程度の残業をし、2日間で9.7時間(9時間42分)勤務を超えたのであろうと思われる。

ちなみに第3話(喜多ちゃんと出会い、ぼっちが二度目のバイトが描かれる日)は、ぼっちの「憂鬱な月曜日が始まった」(0:05)で開始するように、月曜日である。

ぼっちの初任給は2話と3話で描かれるバイト2日間で得たものであると推測できるが、少々ごちゃついてきたので、一旦初バイトの前日まで戻り、流れをまとめてみたいと思う。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
2話11:38

初バイトを逃れるため、ぼっちは氷風呂に浸かり風邪をひくことで逃れようとする。
その後扇風機の前で「風邪ひけ風邪ひけ」と熱唱するが、そのとき外はまだ明るい。
つまりこの日は休日である可能性が高い。
そしてバイト初日は、【2話11:10】で虹夏が「学校終わったらうち(スターリー)に直行で」と言うように、平日であることが分かる。
すなわち氷風呂に浸かった日は日曜日で、初バイトの日は月曜日であると想像できる。

さて風邪をひいてバイトを休もうと試みたぼっちだが、残念ながら熱が出ることはなく、働くことになってしまう。
そして悲しいかな初バイトを終えた直後に発熱、その後ふたり曰く「学校を何日も休」むことになる。【3話0:16】
※原作だと「学校3日も休めてラッキーだね!」【1巻42ページ】であるが、あえて台詞が変更されている。

具体的に何日休んだかは明言されていないが、妹ふたりとの会話は「憂鬱な月曜日」【3話0:06】の朝に行われている。すなわち火曜日から金曜日までの4日間学校を休み、月曜を迎えたことが伺える。
そしてその月曜日にぼっちは喜多ちゃんと出会い、そして二度目のバイトに臨むのであった。

要は、ぼっちは月曜日に2度続けてバイトをしたのである。
ここで2022年5月のカレンダーを見る。

https://illustimage.com/

この2回のバイトがいつ行われたのかを考えるには、スターリーの締め日の確定が必要となるが、
締め日を考えるにあたり、25日説と月末説がある。
(一般的な締め日は15日、25日、月末の3種であるが、15日締めの場合ぼざろ第1話が4月スタートになるため矛盾する)

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
4話10:08

僕が調べたところ、25日説と月末説どちらかを絞りきることができなかった。
ただ、4話でアジサイが開花間もないことを考えると、
25日締めの翌月25日が給料日、という形式であるのがもっとも可能性が高いと言える。

つまり、
5月16日(月)ぼっち初バイト
5月23日(月)ぼっち2度目のバイト、喜多ちゃん結束バンド加入

という流れがもっともリアリティがあるのではないかと思われる。


5月27日(金)
バンドミーティング(第4話前半)

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
4話10:08

この日にミーティングがあった確たる証拠は(例によって)ないのだが、金曜日にスタジオ練習をする描写が多いため、この日が一番確率が高い。

「確率が高い」だけでは心許ないので、さらなる考察を加えよう。
このミーティングは、ぼっちが独白するように「最近練習頑張ってる喜多さんの息抜き」を兼ねていると思われる。【4話3:31】
では結束バンド加入後の喜多ちゃんの動向を検討してみる。

喜多ちゃんは結束バンド加入当日(23日)に、「お父さんにおこづかいとお年玉2年分前借り」して買ったギターが多弦ベースであることが判明する。【3話20:20】
後日、スタジオでの練習シーンで語られるのは、
このベースは山田が買い取ることになり※1、代わりに喜多ちゃんは山田のギターを借り※2、ぼっちと放課後や昼休みに練習をしている※3ということである。
※1「リョウさんが、ベ、ベース買い取ってくれて」【21:06】
※2「リョウ先輩もギター貸してくれたし」【20:57】
※3「後藤さんには放課後や昼休みにギター教えてもらってるのに」【20:52】
そしてスタジオでの練習中に、草を食べる山田が颯爽と現れる。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
3話21:57
ガイドブックには分類シールが貼られており、図書室か図書館からの貸し出しだと分かる。

この流れを、最短でどのくらいの日数が必要なのかをまとめてみると、
1日目、喜多ちゃん結束バンド加入、多弦ベースを買い取ってもらう。
2日目、ギターを貸してもらう。
3日目、ぼっちと放課後や昼休みに練習する。(その後3話ラストシーンに)
4日目、バンドミーティング(4話冒頭シーン)
という流れになり、最短ならば26日(木)となる。

ちなみに3話ラストシーンと4話冒頭は同じ日であるようにも思えるが、
【3話20:35】のスターリー上空は晴れであるのに対し、
【4話0:00】では雨が降っているため、別の日であると解釈できる。

とはいえ上記日程だと、3日目がややシビアな印象を受けるため、
余裕をもって、
23(月)喜多ちゃん結束バンド加入、多弦ベースを買い取ってもらう。
24(火)ギターを貸してもらう。
25(水)ぼっちと放課後や昼休みに練習する。
26(木)スタジオ練習。山田が草を食べながらスタジオ入りする。
27(金)バンドミーティング

といった具合になるのではないかと僕は考えている。

さて、27日バンドミーティングである。
ここでぼっちはオリジナルソングの歌詞制作を依頼され、
「作詞なんて朝飯前、ちょちょいのちょいですよ~」【4話5:35】と
調子に乗ってしまう。
そして……

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4話5:54

6月4日(土)1行も歌詞が書けずに頭を抱えることになる。
なお厳密に1週間後となると6月3日(金)であるが、ぼっちが制服のスカートを着用していない点と、外が明るいうちから居間で歌詞制作している描写がある点、押入れを探り中学時代の歌詞ノートを読んだり奇行に走ることから、休日である可能性が高い。
(メタ的なことを言うと「一週間後」とクソデカフォントで繰り出すの本当に面白いから、正確さより演出を優先させて「一週間後」としたのだと思う)
そして翌日、

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
4話8:50

6月5日(日)、結束バンドメンバーでアーティスト写真を撮るために下北沢を散策することになる。
このくだりは、4日の午後と考えることも可能であるが、さすがに当日連絡を入れて即集合というのは現実的ではなく、またぼっちの移動時間(自宅から片道2時間)を考えると、5日と考えるのが妥当である。

また、アー写撮影が5日となると、先述の給料日は消去法で25日となる。時系列的にも問題ない。
(ちなみに5月25日は、ぼっちと喜多ちゃんが学校で練習していたと推測できるため、虹夏や山田が給料を受け取るのを隣で見るような事態は回避できたのではないかと思われる)

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
4話20:50

その後、6月8日(水)~10日(金)までのあいだに「ギターと孤独と蒼い惑星」の歌詞を書き上げ、メンバーにお披露目している。
10日というのも一切描写されていないが、目の隈を心配した喜多ちゃんに対して「ここのところ作詞に夢中になってその、寝るの忘れたりして」とあるので、1日2日で書いてきたわけではないことが伺える。
また、1週間以上時間をかけるのはぼっちが精神崩壊してしまう可能性があり、またバンドメンバーの服装が制服であることから、この日が平日であることが分かる。
そのため、6月8日(水)~10日(金)の期間中に書き上げたと予測することが可能となる。

https://illustimage.com/

また「ギターと孤独と蒼い惑星」の曲は給料日(6月25日)に完成している。
ここから、山田はおよそ2~3週間で曲を書き上げたことが分かる。


ぼっちの結束バンド加入はいつか

さて、では最後のピースを埋めよう。
完熟マンゴーライブの日(第1話)と、その翌日の第1回結束バンドミーティング(第2話前半)の日にちである。
再び5月のカレンダーとにらめっこしながら話していきたい。

https://illustimage.com/

この2イベントが連日であるのは、【2話7:43】で「昨日出たライブはブッキングライブって言うんだけど」と虹夏が発言していることから判明する。
また両日ともに制服姿のため、平日であることが分かる。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
2話11:10

そして第1回結束バンドミーティングの帰り際に虹夏が
「バイト来週からね。学校終わったらうち(スターリー)に直行で」
この発言から、ミーティングがぼっちの初バイト(16日)の前週、つまり5月第2週の平日であることが分かる。

では具体的に何曜日であったのか。

これもまた確たる証拠はないのだが、しっかり読み込んでいけばおのずと予想がつく。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
1話2:53

1話の冒頭で、超絶技巧のギターをかき鳴らしたあと、「押入れより愛をこめて」の即興演奏をする。
が、「真夜中にわたしのクソなオリジナル曲でご近所トラブル起こす前に」【5:14】
「人気バンドのカバー動画」をアップロードする。【5:18】
直後、「この前の動画(=【ギター】アシッド「ハルノユキ」【弾いてみた】)」にコメントが付いていることを確認する。【5:29】

ここで注意したいのは、現在進行形でアップロード中の動画と、「ハルノユキ」は、異なる動画であるという点である。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
1話5:31
ちなみに画面では「10件のコメント」とあるが、実際数えてみると返信含めて11件ある。

「この前の動画」とぼっちは言っているが、【1話5:45】からの画面スクロールを見ると、一番新しいコメントが5分前で、一番古いコメントが1時間前と、どれも比較的新しいものであることが分かる。
「この前の動画」がいつ投稿されたのかは明言されていないが、数日なにもコメントがないのに、突如11件もコメントが増えるのは不自然であるため、おそらく数時間前に投稿されたものであろう。

ぼっちは非常に短いスパンで動画を立て続けに投稿していることから、この日は休日の深夜であることが想像できる。
そして、コメント欄を見てバンド女子風の出で立ちで登校することで、クラスメイトから声をかけられるのを待つという計画を思い立つのである。

このあとのスピーディな実践を鑑みるに、新作の動画投稿は日曜深夜で、冷静になる間を置かず月曜がやってきたと思われる。

よって、
8(日)【ギター】アシッド「ハルノユキ」【弾いてみた】と新作動画投稿
9(月)ギターを持って登校、放課後スターリーで完熟マンゴーライブ、ぼっち結束バンドに加入
10(火)第1回結束バンドミーティング。来週からバイトが始まることを言い渡される。

というタイムラインで物語は進行していったと思われる。

よってアニメ版のぼっちが結束バンドに加入したのは、
2022年5月9日月曜日であると導ける。


改めてライムラインをお見せする。

2022年5月
8(日)【ギター】アシッド「ハルノユキ」【弾いてみた】と新作動画投稿
9(月)完熟マンゴーライブ
    ぼっち結束バンドに加入【ここまで1話】
10(火)第1回結束バンドミーティング
15(日)水風呂、風邪ひけギター
16(月)ぼっち初バイト、その後風邪をひく【ここまで2話】
17(火)~22(日)風邪でお休み
23(月)ぼっち二度目のバイト
    喜多ちゃん結束バンドに正式加入
24(火)喜多ちゃん、山田からギターを借りる
25(水)喜多ちゃん、ぼっちと放課後や昼休みに練習する
26(木)スタジオ練習。山田が草を食べながらスタジオ入り【ここまで3話】
27(金)雨。バンドミーティング(ぼっち作詞制作開始)

6月
4(土)ぼっち1行も歌詞が書けず苦しむ
5(日)アー写撮影
8(水)~10(金)ごろ、「ギターと孤独と蒼い惑星」歌詞完成【ここまで4話】
25(土)ぼっちの初給料日
    「ギターと孤独と蒼い惑星」楽曲完成
27(月)放課後学校で喜多ちゃんと練習
28(火)バンドマンとしての成長を見た目で表現→スターリーで練習
29(水)個人練習(喜多ちゃんは学校、ぼっちは自宅)
30(木)虹夏とバイト→スターリーで練習(虹夏は家で家事)

7月
1(金)オーディション前日最終調整
2(土)ライブオーディション【ここまで5話】

8月
4(木)金沢八景路上ライブ【ここまで6話】
5(金)スターリーで練習
9(火)虹夏と喜多ちゃん、ぼっちの家へ
12(金)結束バンドTシャツ完成
14(日)台風直撃。【ここまで7話】結束バンドフルメンバーでの初ライブ【ここまで8話】
15(月)ぼっち自宅でギター練習
16(火)ぼっち自宅でギター練習
17(水)ぼっち自宅でギター練習
18(木)ぼっち自宅でギター練習
19(金)ぼっち自宅でギター練習(おそらくスターリーで練習)
20(土)ぼっち自宅でギター練習(おそらくバイト日)
31(水)江ノ島探訪

9月
1(木)新学期【ここまで9話】、1年2組出し物決定
2(金)結束バンド秀華祭ライブ決定、SICK HACKライブ観賞【ここまで10話】
16(金)秀華祭ステージ申込〆切

10月
1日(土)秀華祭1日目
2日(日)秀華祭2日目【ここまで11話】、結束バンド文化祭ライブ
(後日ぼっちギターを買う)【ここまで12話】

どこまでが正しいのは定かではないが、こうした特定ごっこができるくらいには、『ぼっち・ざ・ろっく!』は細部に至るまでつくりこまれている。

「この部分の日程がおかしい」
「ここの説明がよく分からなかった」
などあれば、ぜひコメントを寄せていただけると幸いだ。
僕自身ぼざろはまだまだ浸り足りていないと感じているので、日々精進である。

さらにこの日程表を活用して、
ぼっちや山田がどのタイミングで、どの曲の作詞や作曲を手掛けたのか、
台風ライブでカットされた3曲目はなんだったのか、
文化祭ライブでできなかったセットリスト3曲目はなんだったのか。
そもそもアルバム『結束バンド』収録曲はぼざろ世界において、いつ頃書かれたものなのか……。

そういった妄想話も書いてみたい所存である。


次回


(2023年1月8日追記)ぼっちの初給料日が7月ではない理由

コメントにて、

5話アバンの虹夏の発言で「来月ライブできるよう〜」という発言からアニメ内で給料を受け取った日が7月であると考えられないでしょうか。

というご指摘をいただいたので、こちらでご返答させていただく。
確かに虹夏は、【5話5:29】で
「来月ライブできるようお姉ちゃんに頼んでくるね」と言っており、
事実ライブは8月14日に行われている。
7月に給料日があってもこの解釈はできるようにも思える。

僕自身、この部分の精読は書いてみようと思ったのだが、星歌という人物解釈を必要とし、膨大になりすぎる懸念があったので削ったところであった。
この機会に、改めて吟味したいと思う。


まず7月が給料日だとすると、「五・十日」の法則とバンドメンバーの服装が私服(休日あるいは夏休み後)であることを考えると、
10(土)
25(月)※夏休みに期間中
30(土)
の3日間が候補になるなる。
この情報とそしてライブが8月14日(日)に行われた事実を考えるとあり得そうであるが、

まず7月30日(土)の場合、ライブオーディションが1週間後の8月6日となり、これはぼっちが八景の路上ライブを8月4日におこなったことと時系列が前後してしまうので、候補から外れる。

また25(月)も、オーディションまでの練習風景を描く【08:41】から【14:25】のあいだに、学校での練習風景が描写されるため、現実的ではない。
(ぼっちは学校まで片道2時間なので、夏休み中は学校で練習するよりスターリーのスタジオで練習するほうが機材も充実しており、適当であると思われる)

以上のことから、ぼっちの初給料日シーンが7月なのだとすると、それは7月10日(土)と絞ることができる。

そのうえで7月ではないと考える理由であるが、いくつか挙げられる。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
5話4:49

まず先述した虹夏の発言
【5話5:29】から、その後の台詞も含めて引用しよう。

虹夏「来月ライブできるようお姉ちゃんに頼んでくるね」
喜多「えっ、まだ言ってなかったんですか?」
虹夏「大丈夫、この前もすぐ出させてくれたもん。ね、お姉ちゃん?」
星歌「あ? 出す気ないけど」
虹夏「……え?」
後藤・喜多「え?」
OP
(星歌、「8月の出演候補」のバンドメンバーを入力する描写)
虹夏「え、なんで? オリジナル曲もできたのに」
星歌「それはこっちに関係ない」
後藤(な、なんだか空気が……やばい)
虹夏「ああ、集客できなかったときのノルマなら払えるよ」
星歌「お金の問題じゃなくて、実力の問題」
虹夏「この前は出してくれたじゃん」
星歌「あれは思い出作りのために特別にな」
虹夏「思い出作りって……」
星歌「普段はデモ音源審査とかしてんの、知ってんだろ」
虹夏「そう、だけど」
星歌「悪いけど、5月のライブみたいなクォリティなら出せないから」
後藤・喜多「あっ……」
虹夏「出せないって……え、じゃああたしたちは」
星歌「一生仲間内で仲良しクラブやっとけ」

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』5話「飛べない魚」
【2:29】~【4:59】(OPを除く)

このシーンでもっとも重要なことは、
伊地知星歌という人間を知ることである。
星歌は虹夏の姉であり、言葉足らずで、かつ「ツンツン、ツンツンツンツンツンツンツンツン、デレ」【2話17:33】であるという点、そしてスターリーというライブハウスの店長という責任ある地位であるという点である。

これを念頭に置いたうえで、一連の会話を精査してみよう。

まず星歌は5月に「結束バンド」をライブに出したという過去がある。
これはすなわち後藤ひとりがバンドに加入するキッカケとなったライブ(5月9日)であるが、
これは「思い出作りのために特別に」出したものであった。
つまるところ「デモ音源審査」とかを抜きにした、言わば「裏口入学」的な側面が強い。

そして「裏口入学」で演奏したライブは、あまりにも低いクォリティであった。
1度だけならまだしも、これが慣例化するのはスターリーという箱自体のクオリティ低下の懸念がある。
……という、店長としての建前がある。

実際には、結束バンドがバンドとして成功しすることを誰よりも願っているのだと思っている。
これは、【5話20:17】以降の店長とPAの会話からもうかがえる。

PA「店長」
星歌「ん?」
PA「本当は最初からあの子たち出す気だったんでしょ」
星歌「んん……」(図星の表情)
PA「だってライブスケジュール、ずっと1枠空けてたじゃないですか。なんであんないじわるを?」
星歌「いじわるとかじゃないから。納得できなかったら出す気はなかったよ。でも、まだ粗削りだけどなんか感じるものはあるし、身内の私が厳しくしてバンドを育ててあげたほうがいいじゃん」
PA「こういうのってシスコンって言うんでしたっけ?」
星歌「それ以上喋ったららクビな」

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』5話「飛べない魚」
【20:17】~【20:53】

この会話で一番重要なのは、結束バンドについて「身内の私が厳しくしてバンドを育ててあげたほうがいい」と星歌が考えている点である。
また、星歌は非常に言葉が少なくて相手に誤解を与えやすい性分であるが、決して嘘をつくことはない。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
5話20:48

その点を踏まえて、再度5話アバンシーンから続く一連の台詞に、星歌の意向を汲み取って書き記したいと思う。

虹夏「来月ライブできるようお姉ちゃんに頼んでくるね」
喜多「えっ、まだ言ってなかったんですか?」
虹夏「大丈夫、この前もすぐ出させてくれたもん。ね、お姉ちゃん?」
星歌「あ? (7月のライブは)出す気ないけど(8月のライブスケジュールは空けてるぞ)
虹夏「……え?」
後藤・喜多「え?」
(OP)
(星歌、「8月の出演候補」のバンドメンバーを入力する描写)
虹夏「え、なんで? オリジナル曲もできたのに」
星歌「それはこっちに関係ない」
後藤(な、なんだか空気が……やばい)
虹夏「ああ、集客できなかったときのノルマなら払えるよ」
星歌「お金の問題じゃなくて、実力の問題」
虹夏「この前は出してくれたじゃん」
星歌「あれは思い出作りのために(事前のデモ音源審査とかせずに)特別にな」
虹夏「思い出作りって……」
星歌「普段はデモ音源審査とかしてんの、知ってんだろ(だからお前らにも特別扱いせず普通のバンドとしてオーディションするから、裏口からじゃなくてちゃんと正面から向かってこい)
虹夏「そう、だけど」
星歌「(お前らの練習風景見て、なんか感じるものはあるのは分かってる。でも)悪いけど、5月のライブみたいなクォリティなら出せないから」
後藤・喜多「あっ……」
虹夏「出せないって……え、じゃああたしたちは」
星歌「一生仲間内で仲良しクラブやっとけ(ってちょっと厳しめに言うけど、身内の私が厳しくしてバンドを育ててあげたほうがいいしな。よし、ちゃんとお話しできたぞ!)

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』5話「飛べない魚」
【2:29】~【4:59】(OPを除く)
太字()内は筆者加筆

……といったような意図が含まれていたと思われる。
ただし、ひとつ疑問点を述べるとすると、
星歌「あ? (7月のライブは)出す気ないけど(8月のライブスケジュールは空けてるぞ)」の部分であろう。

なぜ7月のライブは出す気がなかったのか、である。
ようやくこの章の本題に移るわけであるが、7月のライブスケジュールはすでに埋まっていたと考えるのが自然であろう。

別の理由を挙げるとすれば、それは結束バンドの曲目の少なさであろう。
この給料日の時点で、結束バンドのオリジナル曲は「ギターと孤独と蒼い惑星」のみである。

このデモ音源を聴く場面に、星歌も居合わせている。
曲を聴いた星歌は、「ギターと孤独と蒼い惑星」および結束バンドを最大限引き出せるライブシーンを想定したとすれば、
7月に突貫で出演させるより、練習を重ね、オリジナル曲が充実した8月が最適であると判断可能である。

また、台詞からも7月ではないと思わせる部分がある。
それは引用箇所の冒頭、
虹夏「来月ライブできるようお姉ちゃんに頼んでくるね」
喜多「えっ、まだ言ってなかったんですか?」
虹夏「大丈夫、この前もすぐ出させてくれたもん。ね、お姉ちゃん?」
星歌「あ? 出す気ないけど」

という会話である。

もしこの日が6月25日であるならば、最初の虹夏の台詞は
「来月(7月)ライブできるようお姉ちゃんに頼んでくるね」
となり、それに喜多ちゃんが驚き、「まだ言ってなかったんですか?」となる。
つまり6月末で、とうに7月の出演バンドが決まったあとで、虹夏は裏口から出演を願い出るのである。
バンドとしての成長を望む星歌は、「出す気ないけど」と却下する、という一連のながれが生まれる。
「出す気ないけど」発言も、これは「7月は出す気ないけど8月なら大丈夫だよ」という意味になるので、星歌としては嘘をついているわけでもない。

では7月10日であればどうだろうか。

虹夏の台詞は
「来月(8月)ライブできるようお姉ちゃんに頼んでくるね」となる。
結束バンドの結成が5月末なので、虹夏は1ヶ月以上もライブの参加依頼をしていなかったということになる。
となると、次の喜多ちゃんの台詞「まだ言ってなかったんですか?」は、これまで一切ライブ出演のアクションを起こしてこなかった虹夏に驚いた発言となる。
これが山田であれば特に疑問はないが、ギターを始めたばかりの喜多ちゃんが言うにはかなり強気な発言で、やや不自然であるように思える。
その後の星歌の「出す気ないけど」も、「8月は出す気ない」というそのままの意味になり、これは星歌の発言としてはあまりに強烈な印象を受ける。
(5話後半のPA「だってライブスケジュール、ずっと1枠空けてたじゃないですか」ともズレが出てしまう)

また、楽曲制作という観点で言っても、7月10日だとかなりシビアである。
「ギターと孤独と蒼い惑星」の歌詞は6月上旬にできており、ぼっちの初給料日に曲が完成した。
(台風ライブ楽曲の制作時期に関する話は、次回のnoteに詳しく書く予定である)

仮に7月10日だと、約1ヶ月かかったことになる。
それも【5話2:00】で山田の「ぼっちの書いた歌詞見てたら浮かんできた」という台詞から察せられるように、スムーズに完成まで至ったことが伺える。
スムーズな作曲で1ヶ月となると、8月14日までに2曲は非常に厳しいペースであるし、しかも新曲の練習時間を考慮すると、7月末には完成しておきたいところである。これは非現実的と言わざるを得ない。


と、ぼっちの初給料日が7月ではない理由を

星歌の結束バンドを応援する心情
一連の台詞の整合性
台風ライブで使われる楽曲の制作スパン

の3点を挙げてみた。
ぼっちの初給料日は7月ではなく6月であると僕は考える。
この追記で、すこしでも『ぼっち・ざ・ろっく!』の世界に浸る一助となるならば幸いである。


なお、本シリーズで用いた一次資料は、
「dアニメストア ニコニコ支店」を使わせていただいた。
Abemaやアマゾンプライムなどと比べるとマイナーな媒体であることは否めないが、画面上にコメントが流れる仕様は、自身では気付けない細かい描写や解釈が溢れており、大変参考になった。
2周目以降、さらなる発見をしたい方にオススメである。


次回


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