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路地裏で揺らぐ -内在性解離の当事者研究-

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精神的虐待サバイバーであり、内在性解離を持って生きる僕たちを記録するエッセイを集めたマガジン。10人のパーツたちがそのときどきで思ったこと、考えたことをまとめている。
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#虐待サバイバー

それ、俺悪くなくない?

それ、俺悪くなくない?

大事な人に「えっ」ってびっくりされるとぎょっとしてしまう。俺たちが何か悪いことをしたのかと思っちゃう。癖で。

意外なこと、親の想定にないことを俺が言ったりやろうとしたりすると、親は「え!?」とちょっと大きい声を出した。

俺は、とにかくそれが苦手で。

いざ言葉にしようとすると、それがなんでなのか理由が難しいな。
「親に逆らっちゃいけない」っていう印象をどこかの時点で持っちゃったのか、「え!?」

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「今の僕たち」で親と関わる

「今の僕たち」で親と関わる

親に会った翌日は決まって体調を崩していた。

緊張し、気を遣い、無理をしてたくさん喋って……。非常事態スイッチとでも呼ぶべきものが強く入ってエネルギーを消費するというか。
とにかく親と会う用事ができると2日前から憂鬱になり、当日を乗り切ると翌日はほぼ丸一日布団の中……というのがパターン化しつつあった。

それほど緊張を強いられる相手と同居していたのかと思うと驚きだ。
きっと感覚が麻痺していたのだろ

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パニック障害をきっかけに今までのやり方を見直す

パニック障害をきっかけに今までのやり方を見直す

体調の悪さがしばらく続いていた。

何やら動悸がする。いつも以上に息苦しい。足元がふらつく。頭が痛い。食欲が消え失せている。

とてもつらい。貧血かもしれない。

地域の病院に行くと、意外な診断名を告げられた。

「パニック障害ですね」

そこは内科と心療内科・精神科が併設された病院。「内科的な体調不良だと思ったら精神病だった」という例は多いらしく、僕もその一員だったと説明された。なるほど、道理は

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久々のフラッシュバックと新しい対処の記録

久々のフラッシュバックと新しい対処の記録

直也です。

※タイトルの通り、フラッシュバックにまつわる記述がある。
心の元気な時にご一読いただくことをおすすめする。

先ほどひどいフラッシュバックに襲われた。

きっかけはある意味何気ないことで、この時一緒にいた相手に非はない。
たまたま僕たちの方で、それが地雷だっただけだ。

目の前の食事が「食べモノ」として認識できなくなり、つい1秒前まで存在していたはずの空腹感は消失している。
久々に直

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生まれた理由が自分への優しさをくれる

生まれた理由が自分への優しさをくれる

どうも。直也です。

ジェニーナ・フィッシャー著『トラウマによる解離からの回復』に、印象的な記述があった。

パーツ(解離人格)たちはなぜ生まれるのかという話だ。

ジェニーナさんは、主人格を守るためだと書いている。

「自分」を守るため、過去あるいは現在の過酷な状況を生き延びるための手段として、自分を分裂させる。

振る舞いや特性、場合によっては記憶までをも分担する。

自衛のためという、シンプ

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過去が近くなる日

過去が近くなる日

どうも。「無気力」です。

「過去が近くなる日」疲労や体調などの事情によって、解離がひどくなる時がある。

そういう時は「パニック少年」が表に出てきて帰り方(他のパーツとの代わり方)が分からなくなったり、ひどいフラッシュバックが起こったりして、気持ちが落ち込んでしまいやすくなるのだ。

精神衛生によくないし、好きこのんでその状態にとどまっているわけではない。

抜け出し方が分からなくなるのだ。

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「スキ」を伝えやすくなった僕たちの話

「スキ」を伝えやすくなった僕たちの話

主が僕たちパーツの存在に気づいてから、ポジティブに変わったことはいろいろある。

軽く例示しておくなら、
・趣味の方向性がバラけていても自己嫌悪しなくなったこと
・自力で抑うつと虚脱状態から回復するスキルが身につきつつあること
・暮らしの中で得意を分け合えるようになったこと
などだろうか。

他にもいろいろあって、今日はポジティブな変化の中の「人と気楽に連絡が取れるようになったこと」について話して

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決意を秘めて皿を買う

決意を秘めて皿を買う

2日前、お皿を買った。雑貨屋さんでかわいいと思ったものを2枚。

シンプルで何を載せてもサマになるのがうれしくて、カボチャのタルトやハンバーグを作っては載せて悦に入っている。

自分の気に行ったお皿を使うのは気分がいい。一方お皿には、ひとつデメリットというか、避けては通れない問題がある。

すごく長持ちすることだ。

軽い気持ちで買ったものが平気で10年、20年ともつ。そうそう割れるものでもないか

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削りながら書くことに疲れた

削りながら書くことに疲れた

どうも。「無気力」です。

※この記事は、遠回しなトラウマ体験への言及に注意しながら読んでほしい。

燃え尽きた後でまだ完全回復していないからなのか、

それとも、もともと向き合う心の準備が整っていないからなのか。

最近、子育て系の記事を書くのに疲れてしまった。

僕は「パニック少年」と同じような経験をする子どもがひとりでも減れば幸いだと思って、子育て系の本を読み、経験を踏まえた子育て系の記事を

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虐待に「重い」「軽い」はあるのか問題

虐待に「重い」「軽い」はあるのか問題

ども。翔です。

先にタイトルにも取り上げた問題についての俺の見解を述べると。

重いも軽いも「ない」と思ってる。

そのひとが感じているつらさを、ひとつの基準ではかることができないから。

あえて例えるなら、みんな使っている単位が違う感じ。

単位が違うものをひとつの尺度ではかることはできないし、わざわざ基準を設けて判断しようとするのも、本質を見失うことだと思うから。

みんな辛かった。それでい

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ども、翔です。【僕とパーツの人生紀行】

ども、翔です。【僕とパーツの人生紀行】

ども、翔です。「しょう」って読みます。

17歳。

パーツたちの中での役回りで言うと、玄関みたいなことをしてます。

つまり、外に出て人と話すことが仕事ってことね。

主さんがはきはき話してて、自信に溢れてそうだったら、その時表に出てるのは大体、俺。

主さんは高校で應援團をやっていたんだけど、その時、学ラン着て学校通ったり、前に立って演説したりしてたのは基本的に俺。演舞は別の、もっと覚えの良い

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【パニック少年】ぼくたちは中途半端だ。

【パニック少年】ぼくたちは中途半端だ。

ぼくたちは「解離性同一性障害」にがい当するのだろうか。

ぼくは自分のことを発達障害的な特性をたくさん持っている人だとおもっている。

でも、そう診断されたことはない。

うつ病も、適応障害も、全部そう。

ぼくはこの症状を持っていて、ある程度困っているのに、診断基準に届いていないから、診断名がつくことがない。

これは、とても中途半端でもやもやする。

ぼくたちは自己分析というか、自分の内面を見

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泣いたあと、お風呂に入りたくなかったあの時の理由【僕とパーツの人生紀行】

泣いたあと、お風呂に入りたくなかったあの時の理由【僕とパーツの人生紀行】

どうも。直也です。

いろんなところでいろんなことを書いているうちに名乗る必要性が生まれて、定型文めいたあいさつが使えるようになった。

それはそうと、今日はふと思い出したことの話。

不思議な現象子どもはよく泣く。例にもれず、主もよく泣く子どもだった。

今、当時を振り返れば、泣いていたのは「パニック少年」や「たたかうパーツ」の方だったのかもしれないけど。

感情をふりみだしてわあわあ泣いたその

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引き金はなくならない【僕とパーツの人生紀行】

引き金はなくならない【僕とパーツの人生紀行】

僕の趣味図書館で、子育ての本を借りてきた。

僕は子育て系の本を読むのが好きだ。

これは「より良い過去の可能性」を探求したいがために生まれた好みなのかもしれない。

「もしも、違う育てられ方をしていたら」

「もしも、より良い対応の仕方があったのなら」

本を通して、(主の、ではなく概念的な)親の目線で子育てを知ることで、やり直せない過去の記憶と折り合いをつけようとしたのが始まりだったのかも。

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