マガジンのカバー画像

路地裏で揺らぐ -内在性解離の当事者研究-

62
精神的虐待サバイバーであり、内在性解離を持って生きる僕たちを記録するエッセイを集めたマガジン。10人のパーツたちがそのときどきで思ったこと、考えたことをまとめている。
運営しているクリエイター

#精神的虐待

【虐待の後遺症と向き合う】サバイバーの陥るジレンマ

【虐待の後遺症と向き合う】サバイバーの陥るジレンマ

回復の途上。どこかで必ずといって良いほど陥るのではないかと思うジレンマに、よくぶつかる。

果てしない「if」を夢想してしまうこと。

もしも、自分が虐待を受けずに育っていたら?

もしも、あの時あんなことが起こらなかったら?

もしも、違う親に育てられていたら?

もしも、被害が続かなかったら?

もしも、もっと早くに対応できていたら?

もしも、もっと早くに知識を得られていたら……

可能性が

もっとみる
和解を「あきらめ」て先へ進むことにした。

和解を「あきらめ」て先へ進むことにした。

「いつか分かり合える」という幻想心象風景は特別な意味を持っていると思う。

子どもの頃から今に至るまで、長い時間もち続けてきたイメージ。概念。
それは精神構造の一部に組み込まれていて、無意識のうちに考え方のクセや願いの土台になっているものではないだろうか。

僕は「和解」の心象風景を持っている。

さまざまな誤解や苦難やトラブルを乗り越えて、家族や友達は物語の最後に和解することができるのだ。

もっとみる
久々のフラッシュバックと新しい対処の記録

久々のフラッシュバックと新しい対処の記録

直也です。

※タイトルの通り、フラッシュバックにまつわる記述がある。
心の元気な時にご一読いただくことをおすすめする。

先ほどひどいフラッシュバックに襲われた。

きっかけはある意味何気ないことで、この時一緒にいた相手に非はない。
たまたま僕たちの方で、それが地雷だっただけだ。

目の前の食事が「食べモノ」として認識できなくなり、つい1秒前まで存在していたはずの空腹感は消失している。
久々に直

もっとみる
生まれた理由が自分への優しさをくれる

生まれた理由が自分への優しさをくれる

どうも。直也です。

ジェニーナ・フィッシャー著『トラウマによる解離からの回復』に、印象的な記述があった。

パーツ(解離人格)たちはなぜ生まれるのかという話だ。

ジェニーナさんは、主人格を守るためだと書いている。

「自分」を守るため、過去あるいは現在の過酷な状況を生き延びるための手段として、自分を分裂させる。

振る舞いや特性、場合によっては記憶までをも分担する。

自衛のためという、シンプ

もっとみる
「ごはん時」をあえてはずすことで得るコントロール感

「ごはん時」をあえてはずすことで得るコントロール感

「ごはん時」が苦手です。

家族で食べるごはん(特に夕飯)にトラウマがあり、12時、18時など「およそ多くの人類がごはんを食べるだろう時間」に食卓につくことに異様な緊張を感じてしまいます。

気分が落ち込んでいると喉が塞いで、「空腹なのに食欲がない」事態になることもしばしば。

ここ数日もそんな感じなのですが、今日は珍しくそのプレッシャーから一時離れることができました。

緊張を感じずにごはんを食

もっとみる
過去が近くなる日

過去が近くなる日

どうも。「無気力」です。

「過去が近くなる日」疲労や体調などの事情によって、解離がひどくなる時がある。

そういう時は「パニック少年」が表に出てきて帰り方(他のパーツとの代わり方)が分からなくなったり、ひどいフラッシュバックが起こったりして、気持ちが落ち込んでしまいやすくなるのだ。

精神衛生によくないし、好きこのんでその状態にとどまっているわけではない。

抜け出し方が分からなくなるのだ。

もっとみる
「スキ」を伝えやすくなった僕たちの話

「スキ」を伝えやすくなった僕たちの話

主が僕たちパーツの存在に気づいてから、ポジティブに変わったことはいろいろある。

軽く例示しておくなら、
・趣味の方向性がバラけていても自己嫌悪しなくなったこと
・自力で抑うつと虚脱状態から回復するスキルが身につきつつあること
・暮らしの中で得意を分け合えるようになったこと
などだろうか。

他にもいろいろあって、今日はポジティブな変化の中の「人と気楽に連絡が取れるようになったこと」について話して

もっとみる
虐待に「重い」「軽い」はあるのか問題

虐待に「重い」「軽い」はあるのか問題

ども。翔です。

先にタイトルにも取り上げた問題についての俺の見解を述べると。

重いも軽いも「ない」と思ってる。

そのひとが感じているつらさを、ひとつの基準ではかることができないから。

あえて例えるなら、みんな使っている単位が違う感じ。

単位が違うものをひとつの尺度ではかることはできないし、わざわざ基準を設けて判断しようとするのも、本質を見失うことだと思うから。

みんな辛かった。それでい

もっとみる
ども、翔です。【僕とパーツの人生紀行】

ども、翔です。【僕とパーツの人生紀行】

ども、翔です。「しょう」って読みます。

17歳。

パーツたちの中での役回りで言うと、玄関みたいなことをしてます。

つまり、外に出て人と話すことが仕事ってことね。

主さんがはきはき話してて、自信に溢れてそうだったら、その時表に出てるのは大体、俺。

主さんは高校で應援團をやっていたんだけど、その時、学ラン着て学校通ったり、前に立って演説したりしてたのは基本的に俺。演舞は別の、もっと覚えの良い

もっとみる
【パニック少年】ぼくたちは中途半端だ。

【パニック少年】ぼくたちは中途半端だ。

ぼくたちは「解離性同一性障害」にがい当するのだろうか。

ぼくは自分のことを発達障害的な特性をたくさん持っている人だとおもっている。

でも、そう診断されたことはない。

うつ病も、適応障害も、全部そう。

ぼくはこの症状を持っていて、ある程度困っているのに、診断基準に届いていないから、診断名がつくことがない。

これは、とても中途半端でもやもやする。

ぼくたちは自己分析というか、自分の内面を見

もっとみる
泣いたあと、お風呂に入りたくなかったあの時の理由【僕とパーツの人生紀行】

泣いたあと、お風呂に入りたくなかったあの時の理由【僕とパーツの人生紀行】

どうも。直也です。

いろんなところでいろんなことを書いているうちに名乗る必要性が生まれて、定型文めいたあいさつが使えるようになった。

それはそうと、今日はふと思い出したことの話。

不思議な現象子どもはよく泣く。例にもれず、主もよく泣く子どもだった。

今、当時を振り返れば、泣いていたのは「パニック少年」や「たたかうパーツ」の方だったのかもしれないけど。

感情をふりみだしてわあわあ泣いたその

もっとみる
引き金はなくならない【僕とパーツの人生紀行】

引き金はなくならない【僕とパーツの人生紀行】

僕の趣味図書館で、子育ての本を借りてきた。

僕は子育て系の本を読むのが好きだ。

これは「より良い過去の可能性」を探求したいがために生まれた好みなのかもしれない。

「もしも、違う育てられ方をしていたら」

「もしも、より良い対応の仕方があったのなら」

本を通して、(主の、ではなく概念的な)親の目線で子育てを知ることで、やり直せない過去の記憶と折り合いをつけようとしたのが始まりだったのかも。

もっとみる
僕の興味関心は、誰かの無関心【僕とパーツの人生紀行】

僕の興味関心は、誰かの無関心【僕とパーツの人生紀行】

僕たちパーツはひとつの体に同居していながら、性別も性格も興味関心の方向も、まったくもって違っている。

例えば僕は、育児や保育系の本を読むことが好きだ。インテリアに大したこだわりはなく、無難なデザインで、問題なく使えればそれでいい。

一方「パニック少年」は僕と同じ本を、子ども目線や、主が子どもだった頃の記憶と比較しながら読む。ままごとセットを中心に、おもちゃも好きだ。いつか和室の隅におもちゃを飾

もっとみる
「監理者」と僕【僕とパーツの人生紀行】

「監理者」と僕【僕とパーツの人生紀行】

今日は「監理者」というパーツについて話そうと思う。

正直、僕が直接的に関わることは少ないのだが、遠目から観察しているとおもしろい人だ。

「おもしろい」というのは「興味深い」という意味で。

彼は僕たちの中で「規律」を司っているような人だ。「日常を送る自己」の代理として、長く事務的なことを担ってきた。

まるでビジネスマンのように、のりの利いたスマートなシャツと細身のスラックス、ほどよく爪先の尖

もっとみる