青りんご

青りんご

記事一覧

学歴と眉毛

 働きだして、二年目になる。  会社にはいろんな背景を持った人がいて、この職場に至った経路も人の数だけある。前職が服屋さんだったり、高校を卒業して直接入職した人…

青りんご
1か月前
11

バスの新陳代謝

 仕事に行くため、バスに乗った。汗がにじむ暖かい朝だった。ゆらゆらと揺られながら、昨日とも一年前とも似た横スクロールの景色を眺めた。  数箇所のバス停を過ぎたあ…

青りんご
1か月前

くるぶし太郎

 昔、岐阜の山村に「くるぶし太郎」と呼ばれた少年が居ました。そう呼ばれていたのには勿論、くるぶしに特徴があるからでして、黒いアメーバのような痣が全体を覆っている…

青りんご
3か月前
1

どうして書くの

どうして書くかというと、自分が分からなくなるからだ。思考は、帆を張っている。帆は風を受け、同時に船体も進路を変える。でも、風はいつも心地よいものではない。時々適…

青りんご
5か月前

意外な素顔?

テレビで「意外な素顔が明らかに!」という文字を見ると、ただちに興味を無くす。かちゃっとリモコンを拾って、テレビに向けて思い切り電波を飛ばす動作は、まるで西部劇の…

青りんご
6か月前

僕には、むずかしい

先輩は赤信号で車を停めた。 となりの僕は目の前の景色に唖然とする。 不思議な交差点に出会ってしまったのだ。 いつ進めばいいのか、仮に進んだとして、どこに進めばいい…

青りんご
8か月前

恩田陸「夜のピクニック」読書感想文

ろ過された本音 特定の相手、ひいては世界の捉え方が次第にこされていく。 歩行祭は、そのろ過機の役割を果たしていたように思える。 歩行祭が知らしめたのは、時間帯に…

青りんご
9か月前
4

西加奈子『うつくしい人』読書感想文

置いていきたいもの 百合はあの場所、そして土地に置いていった。 姉への憎しみをもつ「私」を。 変化する私を嫌う「私」を。 逃れられない現実への絶望感を。 みすぼらし…

青りんご
9か月前
4

【中締め】noteを書いて気づいた変化

ふり返りをします! noteを12日前から初めて、9記事書きました。 他の方に比べると全然ですが、自分にしては続いた方だなと思っています。 大学生活の終わりが見え始め、…

青りんご
1年前
2

褒められユートピア

褒められたときの反応の仕方でいつも悩む。 嬉しさをどう加工して相手に伝えればいいのか分からず、ボフッと小さく爆発して頭からネジが飛び出しそうになる。 基本「嬉し…

青りんご
1年前
3

頑張っている人が好き声明

「頑張っている人が好き」は嘘だったことを告白したい。 昔から頑張っている人を見ると、心が躍る(と思っていた)。 図書館で模試の振り返りをしている学生やサークルで…

青りんご
1年前
3

なんかへんだ発見器

「なんか変なひと」が好きだ。 明確にどこがどう変なのかは分からないけれど、地に足ついた人たちのなかで、その人だけ浮遊しているみたいなおかしさに意識を持っていかれ…

青りんご
1年前
2

チャーハン自己嫌悪

自己嫌悪は、本人の意図とは関係なくあらぬところで出現する。 一人暮らしをしていると、羽のように軽い自己嫌悪が幾度となく訪れる。 昨日、冷凍チャーハンをうきうきし…

青りんご
1年前
3

小さな失敗同好会

世界がもっと「小さな失敗」で溢れれば良いのにと思う。 仕事でのミスや人間関係でのつまづきは「小さな失敗」に含まれない。 そうではなく、油断していると見逃してしま…

青りんご
1年前
3

【体験記】「赤面恐怖症」を乗り越えて

突然ですが、「赤面恐怖症」という言葉を聞いたことはありますか? よく赤面症と呼ばれていますが、正式には赤面恐怖症と呼ばれるそうです。 かくいう僕も、「赤面恐怖症…

青りんご
1年前
5

幸せになりたい行進曲

僕は幸せになるのが怖い。 というより、自分がいま幸せであることを認めたくない。 過去の僕には居場所がなく、コンプレックスにもがいていた。しかし今は相談できる友人…

青りんご
1年前
3
学歴と眉毛

学歴と眉毛

 働きだして、二年目になる。
 会社にはいろんな背景を持った人がいて、この職場に至った経路も人の数だけある。前職が服屋さんだったり、高校を卒業して直接入職した人もいる。私の職場では、プライベートな内容や過去の出来事が話題にのぼる機会がたまにあって、それ自体、あまり嫌なことではない。
 しかし学歴の話になると、途端に口をつぐんでしまう。
 よく、学歴を褒められる。褒められるというか、面白がられる。私

もっとみる
バスの新陳代謝

バスの新陳代謝

 仕事に行くため、バスに乗った。汗がにじむ暖かい朝だった。ゆらゆらと揺られながら、昨日とも一年前とも似た横スクロールの景色を眺めた。
 数箇所のバス停を過ぎたあたりで車内に目を向けると、乗客の顔ぶれがずいぶん変わったことに気がついた。年度初めだからかもしれない。
 先月までの車内を思い出そうとしてみる。すると、案外思い出せない。毎日、同じバス停で同じバスを待っていたはずの同志の顔もおぼろげだ。
 

もっとみる
くるぶし太郎

くるぶし太郎

 昔、岐阜の山村に「くるぶし太郎」と呼ばれた少年が居ました。そう呼ばれていたのには勿論、くるぶしに特徴があるからでして、黒いアメーバのような痣が全体を覆っているのでした。くるぶし太郎の両親は、痣を見る度に悲しさに心を奪われ、「もっときれいに産んでやれなかったものか」と気が滅入っていました。しかし、くるぶし太郎は一欠片のもの悲しさも見せずに、毎日明るく、村で一番多く笑う子供でした。
 そんなくるぶし

もっとみる
どうして書くの

どうして書くの

どうして書くかというと、自分が分からなくなるからだ。思考は、帆を張っている。帆は風を受け、同時に船体も進路を変える。でも、風はいつも心地よいものではない。時々適当だし、誰かの意図で強風が吹きつけられることもある。実は風なんてなかった、というときもある。この揺れやすい状況を、僕は良く思っていない。友達に誘われたからというだけで、変わった本屋さんを訪れたときを思い出す。退屈だった。

帆は下ろしてはな

もっとみる
意外な素顔?

意外な素顔?

テレビで「意外な素顔が明らかに!」という文字を見ると、ただちに興味を無くす。かちゃっとリモコンを拾って、テレビに向けて思い切り電波を飛ばす動作は、まるで西部劇のガンマンだ。

「意外」とは何か。
例えば、真面目そうに見える芸能人が家でだらだらとスマホをいじっている姿を「意外」だと決めたとする。
そうすると、「真面目なイメージ」が「意」であり、「だらだら」が「外」である。

しかし僕を含めて皆、当芸

もっとみる
僕には、むずかしい

僕には、むずかしい

先輩は赤信号で車を停めた。
となりの僕は目の前の景色に唖然とする。
不思議な交差点に出会ってしまったのだ。
いつ進めばいいのか、仮に進んだとして、どこに進めばいいのかも分からない。
いつもハキハキとした態度で、かき氷機のように次々課題を粉砕している先輩。
しかし今回ばかりは動きをピタリと止め、「これ行っていいと思う?」と純然たる後輩である僕に聞いてくる始末だ。

かねて、新しい意味で使われるように

もっとみる
恩田陸「夜のピクニック」読書感想文

恩田陸「夜のピクニック」読書感想文

ろ過された本音

特定の相手、ひいては世界の捉え方が次第にこされていく。
歩行祭は、そのろ過機の役割を果たしていたように思える。

歩行祭が知らしめたのは、時間帯によって移りゆく周囲の景色であり、友人の聡さであり、身体に加わる負荷がつくる頭の余白である。
各々が単独で、時折協力しながら、融や甲田のなかに渦巻く本音を絞り出していった。

本音を認めるというのは、とても難しい。
特に、実は自分が幸せと

もっとみる
西加奈子『うつくしい人』読書感想文

西加奈子『うつくしい人』読書感想文

置いていきたいもの

百合はあの場所、そして土地に置いていった。
姉への憎しみをもつ「私」を。
変化する私を嫌う「私」を。
逃れられない現実への絶望感を。
みすぼらしさへの嫌悪感を。

社会のなかで自らを無理くり変形させると、ダメージはとても大きい。僕も例にもれず、勝手に自身に役割を付与して苦しんでいるし、透明な周囲の期待に応えようと自分を消費してしまう。しかし、時間的・場所的に点を生きているので

もっとみる
【中締め】noteを書いて気づいた変化

【中締め】noteを書いて気づいた変化

ふり返りをします!
noteを12日前から初めて、9記事書きました。
他の方に比べると全然ですが、自分にしては続いた方だなと思っています。

大学生活の終わりが見え始め、いま考えていることを残しておこうという軽い気持ちでnoteを書き始めました。
書いた記事を読み返して気づきがあったので、記しておこうと思います。

いつのまにかポジティブになっていた

もともと僕はネガティブで、それでもネガティブ

もっとみる
褒められユートピア

褒められユートピア

褒められたときの反応の仕方でいつも悩む。
嬉しさをどう加工して相手に伝えればいいのか分からず、ボフッと小さく爆発して頭からネジが飛び出しそうになる。

基本「嬉しい」「ありがとう」の二言しか持っていない。
普段はこれで事足りるのだが、場合によっては全く力不足だと感じるときもある。

それは、自分の想像を超える褒められ方をしたときである。
実は見てほしかったけどひた隠しにしてた事や自覚していない事を

もっとみる
頑張っている人が好き声明

頑張っている人が好き声明

「頑張っている人が好き」は嘘だったことを告白したい。

昔から頑張っている人を見ると、心が躍る(と思っていた)。
図書館で模試の振り返りをしている学生やサークルで「うまくできない」と悩んで悪戦苦闘するメンバーを見て、好きだなと感じるときが多かった。

けれど、そう感じるのは本当に彼らが頑張っていたからだろうか?
ではオリンピックで金メダルを目指して努力するアスリートや、もともとA判定を取っていて合

もっとみる
なんかへんだ発見器

なんかへんだ発見器

「なんか変なひと」が好きだ。
明確にどこがどう変なのかは分からないけれど、地に足ついた人たちのなかで、その人だけ浮遊しているみたいなおかしさに意識を持っていかれる。

この前もそういう人を見かけた。
ひとりで学食を食べていると、食器返却口に向かう人が視界の隅に映った。
ふと見てみると、その人は普通に歩いているのにどことなく違和感があって、不思議な雰囲気をまとっていた。

気づけば、ほかの人と何が違

もっとみる
チャーハン自己嫌悪

チャーハン自己嫌悪

自己嫌悪は、本人の意図とは関係なくあらぬところで出現する。
一人暮らしをしていると、羽のように軽い自己嫌悪が幾度となく訪れる。

昨日、冷凍チャーハンをうきうきしながら皿に盛っていた。
平らな皿にチャーハンの山ができたが、そのまま加熱するとムラが出るので、軽く皿を揺らしてチャーハン平野をつくろうとした。

結果、チャーハン平野の20%は皿の外へ勇敢に飛び出した。
黒い台にまばらに散った米粒は星のよ

もっとみる
小さな失敗同好会

小さな失敗同好会

世界がもっと「小さな失敗」で溢れれば良いのにと思う。

仕事でのミスや人間関係でのつまづきは「小さな失敗」に含まれない。
そうではなく、油断していると見逃してしまうような、日常生活に転がるささいな失敗だ。

店員さんの「いらっしゃいませ」の声が裏返る
友人がノールックで充電器をコンセントに刺そうとするが全く刺さらない
ついていた肘がテーブルから落下する

気づいた瞬間、時間がコンマ数秒止まったかの

もっとみる
【体験記】「赤面恐怖症」を乗り越えて

【体験記】「赤面恐怖症」を乗り越えて

突然ですが、「赤面恐怖症」という言葉を聞いたことはありますか?
よく赤面症と呼ばれていますが、正式には赤面恐怖症と呼ばれるそうです。

かくいう僕も、「赤面恐怖症」の人間のひとりです。
今では2年に1度ぐらいのペースになりましたが、高校生のときはこの症状が原因で学校を休もうか頻繁に迷っていた時期があります。

このnoteでは僕の経験を記します。
様々な方がいると思うので、「赤面恐怖症」のひとを気

もっとみる
幸せになりたい行進曲

幸せになりたい行進曲

僕は幸せになるのが怖い。
というより、自分がいま幸せであることを認めたくない。

過去の僕には居場所がなく、コンプレックスにもがいていた。しかし今は相談できる友人が居て、趣味や打ち込むものもでき、居場所が複数ある。そして数年にわたる壮絶な戦いの結果、ついにコンプレックスを札の貼られた炊飯器に閉じ込めることに成功してしまった。

そのとき、戦う相手がいないのがこれほど不安なのかと驚愕した。戦いたい敵

もっとみる